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もう一つのメトロノーム活用法

はじめに
小学生の息子はピアノを習っており、私はいつも練習に付き添っています。課題をきちんとやっているかを見守るという名目がありますが、実は小さい頃にピアノを習ったことがない私自身が、自分も密かに学びながら経験不足を補いたいと思っているからでもあります。

息子の練習を見ていて常々思うことがあります。それはメトロノームの重要性についてです。

メトロノームの役割
楽器を習うと、先生からメトロノームを使用することを勧められることがあると思います。そして、それは楽曲のリズムを正しく理解することが主な理由だと思います。それは重要なことですが、ここでお話しするのはそのこととは少し違います。

たとえば、ピアノのあるフレーズを練習する際、たった数小節の中にも、フレーズ、声部、アクセント、強弱、リズム、モチーフなど、さまざまな注意事項があり、それは膨大な情報量です。

この膨大な情報を理解して表現することは誰にとっても難しいことです。よって、対策として問題点を分かりやすく分散化し、ひとつずつ丁寧に理解させることや、長期計画で忍耐強く見守るしかない場合もあると思います。

楽器の練習には日常的に繰り返しの練習が不可欠であり、私は、メトロノームがこの繰り返しの練習を効率的かつ質の高いものにするための重要なツールだと考えています。

皆さんの中に以下のような悩みを持っている方はいませんか?

  • しばらくすると忘れてします。

  • 教えられたようにできない。

  • できるようになったと思ったが、先生の前では間違えてします。

このような場合、以下の練習方法を参考にしてください。

練習方法のステップ

  1. ゆっくりと正確に弾く
    最初は非常にゆっくりでよいので、正しい音とリズムで弾けるようにします。この時点ではメトロノームは使用しません(例:♩=40くらい)。

  2. メトロノームを使って同じテンポで練習する
    ①ができるようになったら、メトロノームを使って同じテンポで練習します。メトロノームを使うことで一定の負荷(心のプレッシャー)がかかるので、まずは①と同じテンポで弾けるようになることが重要です(例:♩=40)。

  3. 表現に注意しながら練習する
    ②ができるようになったら、フレーズ、強弱、声部など楽譜に記載されている表現に注意しながら練習します(例:♩=40)。

  4. テンポを徐々に上げる
    ③ができるようになったら、テンポを2ずつ上げていきます(例:♩=40〜140)。

  5. 速くスラスラ弾けるようになる
    速くスラスラ弾けるようになったら、5回連続で間違えずに弾けることを目安にします。ここまでくると楽譜を見なくても弾けるようになっていると思います。しかし、実はここからが肝心です

  6. テンポを落とす
    テンポを落とします。①までとは言いませんが、(例:♩=70〜100)上述したフレーズ、強弱、声部などの表現がすべて把握できる速度に落とします。      (※スラスラ弾けていたものが、速度を落とすと急に弾けなくなったりミスが増えることがあります。それは、感覚的に身体が覚えてしまい楽譜を見なくても弾ける、つまり感覚や漠然とした記憶を頼りに弾いている状態であり、一つ一つの音や楽譜に記載されている記号などの細部を見逃してしまうからです。)

  7. 再びテンポを上げる
    再びテンポを上げていき、できるようになったら④から⑦を繰り返します。

このようなルーティーンを繰り返すことで、感覚的に覚えたおぼろげな記憶を論理的で確かなものに補強し、少しずつ精度を上げていくのです。

高橋悠治さんの例
ここで一つ面白い映像をご紹介します。日本を代表するピアニスト、高橋悠治さんが超難解な現代作曲家ヤニス・クセナキスのピアノ曲をどのように練習するかを話しています。

そうねえ、これを練習するっていうのはねえ。ともかく、出来る限りゆっくりやって、それから速くやっていく、というそれだけのことなんだけど(笑)」(3分35秒付近)

と話しています。話している途中で笑っているのですが、おそらく、自分で話しながら、極々当たり前なことを言っていることに気づいて笑っているのではないかと思います。これはメトロノームの話とは直接関係ありませんが、一線で活躍している人であっても、物事を理解するためにゆっくりやっていることが分かります。

メトロノームのもう一つの利点
メトロノームを使用するもう一つの重要なポイントは、自分の今のレベルを数値化することができるということです。

”昨日はテンポ50で精一杯だったけど、今日は余裕を持って弾ける。”
今はテンポ80だけど、来週は100までできるようにしよう。”

など、自分のレベルを数値化することによって、明確な目標を設定し、計画的に練習することができますよね。

まとめ
やりたかったことを始めても、すぐに飽きてしまったり、自分にはできないと早々に諦めてしまうのはもったいないことです。なぜなら、そういうやりたい気持ちというのは、そんなに日常的に起こることではないからです。諦めてやめてしまう前に、
”やり方が不味かった?”
”目標設定を誤った?”
”自分にはできないと感情的に間違った判断をしていないか?”

など、一度振り返ってみると良いと思います。

そして、ぜひ練習にメトロノームの使用法を取り入れてみてください。止まってしまったあなたの夢や目標がまた再び息を吹き返し前に歩き始めるかもしれません。


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