【強い経理】経理スタッフの退職リスクに備える。
こんにちは、きくちきよみと申します。
税理士です。
税理士として業務のご依頼を頂く中で、よくあるご依頼のひとつに「経理スタッフが急に退職してしまったため、今後の対応の相談をしたい」というものがあります。
今日は「経理スタッフの退職リスクに備え、普段からやっておいた方が良いと思うこと」について書きます。
↓↓↓ 本マガジンにおける「強い経理」の定義
経理スタッフの急な退職によって起きてしまうこと。
各社の状況によって異なりますが、経理スタッフの急な退職による影響は少なくありません。
・支払業務が遅延し、支払先から問い合わせが来てしまった。
・税務署、社会保険事務所などから「○○の提出がありません」と問合せが来て初めて、その書類を定期的に提出していたことを知った。
・取引先によって請求書の発行手続きが異なっていることを知らず、「いつもと違う」と取引先から注意を受けてしまった。
・銀行から試算表の提出を求められたが、月次決算が終わっていないので提出できない。
・月次試算表が作成されなくなってしまい、現在の足元の数値がわからない。
・売掛金の回収遅延があるようなので取引先に問い合わせたが、「この件は○○さん(退職者)にお伝えし、了承頂いています」と言われた。
・帳簿を見直したところ、明らかに現物と不一致の部分がある。何か不正が起きていたのだろうか?
経理業務が崩壊し、通常の営業もままならなくなることすらあります。また、取引先・支払先との関係が一時的に悪化することもあります。(関係が改善すれば良いですが、修復しないこともあります。)
まずは、「急な退職」を避けること。
経理スタッフの退職後に対応をしようとしても、修復するのは簡単ではありません。「急な退職」の前に、まず、経理スタッフの「急な退職」を避けられるようにしておく、というのは非常に重要です。
もちろん、他社への転職を止めることは難しいですが、普段から「各経理スタッフがどのようなことを考えているか」「健康状態に問題がないか」「何か悩んでいることはないか」など、可能な範囲で把握しておくことが必要でしょう。
業務上の相談であれば通常の社内スタッフが対応できるかもしれませんが、個人的相談となると、対応が難しくなります。中小企業ではなかなか導入が進みませんが、産業カウンセラーやなど「会社内の保健室」の役割を担う方の重要性はより高まっています。これは必要なコストですので「うちの会社は小さいから不要だ」と考えず、導入検討をおすすめします。
各担当者の業務を "見える化" しておく。
経理スタッフの急な退職に備えるには、各担当者の業務をマニュアル化し、誰にでもわかるようにしておくことは必須です。
<2人以上の経理部>
常日頃からマニュアルを更新していると思いますが、意外にその内容を第三者の目で確認していないケースが多いです。そのため、実際にその内容を確認すると「○○さんが毎月初旬にやっている~の作業の件、書いてないよね?」ということがしばしば起こります。
経理マネージャーが毎月見直すのは難しいかもしれませんが、定期的に(四半期ごとなど)見直しをし、項目不足の確認などが必要だと思います。
<ひとり経理>
マニュアル化されていないケースが多く、トラブルにつながりやすくなります。ひとり経理さんは、ご自身が業務を実施するだけであれば不要なので、「わざわざマニュアルを作るまでもない」ということなのだと思います。ただし、急病や急な私用でどうしても仕事を休まなくてはならなくなったとき、何もないと残された側が困ってしまいます。
最低限「作業時期、作業内容」等を記したものを作成しておくことは必要でしょう。
経理の外注化の検討もアリ、ですが。
ご相談を受ける内容として特に多いのが「経理を社内でまかなおうとすると退職時に困ってしまうので、外注化したい」というご相談です。
①経理外注化のメリット
外注化というのも一つの選択肢ですし、外注化してしまえば退職時のリスクは非常に低くなります。
②経理外注化のデメリット
経理外注化のデメリットは、「月次決算が締まるのが遅くなる(ことが多い)」「すべての経理業務を外注化できるわけではない(ことが多い)」ということです。
外注業者に経理資料を渡すには、ある程度資料を整理し、適切な指示を出して依頼しなくてはなりません。結果的に月次決算が締まるのは遅くなります。そのデメリットをデメリットと感じない会社であれば、外注化することを考えても良いかもしれません。
急な経理スタッフの退職によって経理作業が崩壊しないような仕組みづくりを。
経理業務は、「何も起きずに進んでいる」のが会社にとっては当然のことです。ところが、急な経理スタッフの退職によりすべてが崩壊してしまうことは少なくありません。
「経理スタッフが急に退職しても、何もなかったかのように経理業務が進む」ような状況はなかなか難しいかもしれませんが、最低限、経理業務が崩壊しないよう、通常業務を見直してみてはいかがでしょうか。
最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。
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