【経理】結果が合っていれば、仕訳は自由。
こんにちは、きくちきよみと申します。
税理士です。
今日は「社内管理の観点から、取引のどのタイミングで、どんな仕訳を切るか考えよう」ということについて書きます。
仕訳は自由。
お客様から仕訳の質問をよく受けますが、ひと通りご説明した後、最後に「月次試算表が合っていれば、途中経過の仕訳は何でも構いません」「この科目は、費用科目であれば何でも構いません」「結果が同じであれば、仕訳はいくつに分けても構いません」などと補足してお伝えすることが多いです。
簿記の勉強の中で仕訳を学習すると「唯一無二の仕訳があり、それ以外の仕訳を切ってはいけないような心持ち」になるのかもしれませんが、そんなことはありません。仕訳は試算表や決算書を作るための基礎なので、結果が合っていれば、どんな仕訳でも構いません。帳簿上の勘定科目も、新しい科目を作っても構いません。
逆に「これが唯一無二の仕訳だ」と思い込んでしまうと、見にくい試算表になったり、そもそも正しくない試算表になったり、必要なときに適切な情報を集計できなくなったりします。
中小企業では特に柔軟に対応・改善しやすいので、工夫できる仕訳がないか、考えてみると良いと思います。
具体例:工夫できる仕訳・勘定科目設定。
ここでは、学習簿記では習わない、しかし、実務上よく使われる仕訳例や勘定科目の設定例を挙げてみます。
ここで挙げた勘定科目は通常の会計ソフトでは標準設定されていないものが多いので、新しく科目設定をすることになります。(ERPソフトでは標準設定されていることが多いです。)
①売掛債権の発生・請求書の発行
売掛債権の発生タイミングと請求書の発行タイミングが同一であれば良いですが、そうでないことも多いでしょう。
下記のような仕訳を切ると、請求書を発行済かどうか、ということが帳簿上で管理できます。
②仕入債務の発生・請求書の受領
上記①と同様ですが、仕入債務の発生タイミングと請求書の受領タイミングは同一ではないことも多いです。
下記のような仕訳を切ると、請求書を受領済かどうか、ということが帳簿上で管理できます。
③売掛金の消込作業(その1)
売掛金の消込作業ですが、会計ソフト上で消込作業をするときには、次のような仕訳を切ることがあります。
この仕訳を切ることにより、消込勘定に未入金残高が残ることになりますので、入金予定日までに回収されなかった売掛金(=消込勘定)と、まだ入金予定日が到来していない売掛金(=売掛金)を区別できることになります。
なお、3か月以上の入金遅延が多い企業では、売掛金を会計ソフト上で管理するのではなく、消込管理ツールなどで管理することをおすすめします。
④売掛金の消込作業(その2)
売掛金の回収サイトが1種類であれば良いのですが、入金予定日が請求後1か月以内のものもあれば、請求後2か月以内のものもある、という企業もあるかもしれません。
その場合は、勘定科目自体を分けてしまえば、管理上はわかりやすくなります。
⑤固定資産の取得
中小企業の場合、単価10万円以上の固定資産であっても、単価30万円未満であれば、少額減価償却資産の特例により全額費用とすることもできます。
ただし、そもそも費用化するかどうか、費用化するとしてもどの特例を使うのかどうかなど、経理の一存ではその場で判断できないことも多いでしょう。
そのような場合は、下記のような仕訳を切ることがあります。
⑥固定資産の売却
固定資産の売却時ですが、学習簿記では下記のような仕訳を切ります。
ただし、消費税の申告義務がある企業では、この仕訳を切ることはありません。実際には、消費税申告のため、下記のような仕訳を切ります。
⑦無形固定資産の償却累計額、減損損失累計額
無形固定資産の減価償却は「直接法」が原則なので、有形固定資産は「間接法」で仕訳していても、無形固定資産は「直接法」で仕訳している企業もあるかもしれません。
ただし、これでは減価償却累計額が一目でわかりませんので、帳簿上は「間接法」で仕訳することが一般的です。(決算書上は「直接法」で表示します。)
なお、これは減損損失を計上した場合も同様です。帳簿上は固定資産簿価から直接切り捨てることはなく、「減損損失累計額」を利用します。
仕訳にこだわり、「使える帳簿」に。
上記の具体例は実務でよく利用される一般例ですが、このほかにも、各企業では実態にあった方法で、いろいろな工夫をされています。
決まった仕訳だけでは管理しにくいと感じる場合は、是非、仕訳の切り方を工夫してみてはいかがでしょうか。
最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。
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