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【ミステリ・ホラー感想】斬首の森/澤村伊智

割引あり

レビュー第一弾これ!初手から血みどろ!首首首!
というわけで記念すべきレビュー投稿第1弾として、お気に入り作家である澤村伊智の新作を選びました。
タイトルから傑作「予言の島」系統かと思ったら全然違いました_(◜◡◝ )_

(あらすじ)異常な"研修"による洗脳を行うカルト商法企業「T」。ライター・小田和真はその"研修"から逃亡してきたという女性・水野鮎実から連絡を受けインタビューを行うが、その内容は予想外のものだった。ある事件をきっかけに合宿所から逃亡した水野達だったが、一人また一人と死を遂げ、頭部だけが発見されていったというのだ。そこは「斬首の森」と呼ばれる一帯だった…

ネタバレなし感想

澤村伊智のノンシリーズ長編。今回はタイトルからイメージされる通り、スラッシャーホラーを意識した作品となっています。
森で彷徨う訳ありの一行、森に蠢く謎のバケモノ(?)、そしてもちろん次々と血祭りにあげられ残される生首……とB級ホラー的な見どころ満載で、ホラー好きの方は勿論、首切りたっぷりということで初期新本格ミステリが好きな方も(???)楽しめる作品になっています。

しかし、そこはホラーとミステリを巧みに融合させる澤村伊智のこと。単にバケモノが出て首チョンパされてウギャー死ぬ、という話にはなりません。

まず、本作はインタビュー風景とその内容に沿った一人称記述、という構成を採っており、人によっては大いにこの点にかなりの予断を持って読むことになるのではないかと思います。いわばミステリとホラーのどちらに振れるかというか。
しかし、そう思いながら読んでいると、後半には首切りという枠を飛び越えたかなりぶっ飛んだ展開になっていきます。パニックホラー的に、インパクトのあるビジュアルを見せつけつつ腕力で振り切ってくるという感じでここはかなり楽しく読みました。

終盤にはますます異様で奇怪な展開となっていくのですが、そんな森の中のてんやわんやの一方で、カルト商法企業内でのお話も並行して展開し、少しずつ話の裏が見えていきます。
そしてその2つの視点がクライマックスに達したところで、ドンと着地するのがこれまたインパクト抜群の驚愕の真相
この結末には本作の構成を活用したある種のミステリ的仕掛けがこっそりと配置されており、ミステリが好きな人ほどその意味づけを考えて楽しめるのではないかと思います。ただし、終盤はかなり生理的に気持ち悪い描写も連発するためここは人を選ぶところかも(澤村作品ではいつものことですが)。

アレとかコレとかを思わせるカルト商法企業の「研修」の様子もややあっさりながら印象的なイヤさを見せる一方で、これが単なる背景にとどまらず、しかし特に社会派めいた方向に突っ切るでもなく、前記のようなミステリ的仕掛けにしっかりと結びついていきます。ここも澤村伊智らしさといえそうです。

総じて、澤村氏らしいミステリ的な仕掛けとグロテスクなホラー趣味が結びついており、今回もミステリ好きの読み手の琴線にも触れるのは間違いない作品です。

最後に、巻末の参考文献一覧は先に見ないようにしてください。特にミステリファンは要注意です。


!以下はネタバレ感想になります!
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