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日比野コレコ「ビューティフルからビューティフルへ」の独断的な感想

日比野コレコ「ビューティフルからビューティフルへ」を今年の4月に読了したが、ここに独断と偏見にまみれた書評めいた感想を書こうと思う。


単刀直入に言うと、「何が言いたいのかよくわからないな」というのが第一の感想であった。これには様々な語弊があると思うので次で詳しく述べる

まず、本作の最も特徴的な要素と言ってもいい、ラップめいていて音韻や取り合わせが今までにないものになっている、という要素についてだが、これ自体はとても新規性を感じさせるものでいいと思う。

作者の日々野氏のインタビュー記事を拝見したところダウンタウンやそういった類のお笑い芸人、話芸、ネット掲示板的文化をとりあわせて新境地を開拓しようとしているようで、その姿勢は大いに評価できる。

しかし、中身は衝撃的と言えるほどの取り合わせでもないし文学と言うか文藝によくある比喩やあるあるネタに過ぎないという印象を与える。


私の私見だがそもそも話芸の基礎と言うかフック、客をいかにして笑わせるかいかがにして笑いを生み出すかはたしかに比喩やあるあるネタにある。

例えば、漫才でもタカアンドトシや霜降り明星の突っ込みはわかりやすくフォーマットとしても面白い(たとえそれが焼き増しや繰り返しされた内容でも)。あとはミルクボーイはあるあるネタだ。この本は、逆に、というかそういった笑いの形式から離れてほしい部分が全体を通してあった。

確かに最初読んでいるうちは驚きを感じさせられそれなりに(分析勘定をこの時は抜きにして)面白く読めた。しかし、同じことがひたすら200ページの中で繰り返される、というのはどうも退屈な気持ちだ。

それならば、趣向を文体でなく中身の特異性にスイッチしたり、他の笑いの取り方をまねたやり方でもよかったのではないか?


今年のM1はウエストランドが優勝した。彼らはこの御次世叫ばれるコンプライアンスに真っ向から対抗した(本人たちにその気があるのかはわからないが、彼らの所属する事務所タイタンが配信する番組から彼らの時代に対するスタンスの一端が分かると思う)漫才を披露し、優勝した。賛否両論あったが。



脱線してしまったが、言いたいことは、日比野コレコ氏のスタンスとして様々なカルチャーを消化して新しい文藝を創造するということがあるのかもしれないが、もっとよくその分野を分析して取り入れればいいのではないかと言うことを思った。

これでは、ダウンタウンやSNS文化やそれの源流ともいえるネット文化をただコピー・アンド・ペーストして、意味の薄いテクストとして食い散らかしている状態にほかならない。

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