【グッドプラン・フロム・イメージスペース】Episode.5「今から数年後・・・」第10章 : 後編 Part.9 (No.0119)
後編 Part.8のつづき
しかし、こうして時代が変わり過去の研究が進むとその理由も判明しました。
世の万物は階層構造をしており、僅かなものを多くが支える事が基本になっています。
この構造自体は現在の新しい時代でも確かに変わりませんが、問題はその多くが支える存在が悪そのものであったことでした。
始めから悪を支える人達などいないはずですから、恐らくは歴史の何処かで入れ替わったり、少しずつ乗っ取られたりしてきたのでしょう。
支えるものが真面目であるほどに、この構造は強固で確実になります。
しかし真面目であっても賢いとは限りません。自分たちの支えているものが、支える価値の有るものかどうかを判断する知性や話し合うべき仲間との横の連携に極めて乏しかったと考えられます。
過去の政府を構成していた支配者たちは、自分たちの血縁者とそれに従う資産家以外は全てをこの縦社会を支えるための土台に使ってきました。
とても長い時間、人々は自分たちをただただ苦しめるだけの悪の存在を命がけで支え続けてしまってきたのです。
悲しいことに、それに気づくことも気づく方法も誰一人知らなかったのです。
そのような教育はとっくに支配者によって禁止され封じられてきました。
ですから人々はみんなして、この無知や搾取から起きる貧しさや、抱え続けなければならない病気、怪我、障害などに、ただひたすら苦しめられる事が人生であると、まるで生まれてきた事自体が不幸と苦しみであるかのように受け取り覚悟して生きていたのです。
当たり前ですが、本当はそんなことはないのです。
誰だって命を受けて世に生まれた以上は幸福に生きる事が出来るはずなのです。
もしそうなれないのなら、必ず何処かにそのチャンスを奪う何かがあるはずなのです。
大抵は誰かが奪っているものなのです。
しかし、その命の大前提すら、支配者たちは教えることを許さず封印してきたのです。
生命の、人生の偉大なる大前提を生まれて間もない幼子のときから奪われるのです。
あまりの不自然さに誰か気づきそうなものですが、誰も気づきませんでした。
何故なら、その幼子の親も、そのまた親も、そのまた親も、みんなしてそのように育てられたからです。
人間はただ貧しく苦しんで搾り取られて生きることが人生なのだと、みんなから言われ続ければ誰だってそのようにしか考えられなくなります。
実際にそういう子供の周りはその考えに染まりきった大人しかいないのです。
こうして悪を支える無知な人々が、世の不幸の元を命がけで守ってきたのでした。
新しい教師たちは二度とこんな愚かな社会を作らないために、全ての子供達に広い視野と自分で考える力を付けてあげようと決めたのです。
特に考える力をつける事を最重要視しました。
新しい教師たちは具体的な情報を教えたり記憶させることにはあまり関心を示しませんでした。過去の時代の学生たちは当時の学校がやっていた暗記教育や詰め込み教育により、頭に情報が詰まっていましたが、それを自分で活用する事は誰も出来ませんでしたし、そもそもそのひとつひとつの情報の意味もまるで分かっていなかったのです。
お腹が破裂するほど食べ物を飲み込まされたようなものでした。
どれひとつとして消化出来ていなかったのです。
ですから自分の栄養として吸収できず、成長しなかったのです。
それよりも考える力、つまりしっかりと噛んで消化して吸収する力をつけさせれば、そのあと入ってくるどんな情報だって自分のものに出来るのです。新しい教師たちは、子供達をこのように育ててあげるべきだと考えました。
それに人間というのは必要なことは自然に覚えるものです。
家から駅までの道なども使っているうちに必ず覚えます。そんなに無理してやらせている時点で必要性に疑問が有るのです。
新しい教師たちは何よりも大切にしたことは僅か3つだけでした。
読むこと、書くこと、計算すること。
この3つだけをそれはそれは懇切丁寧に徹底的に教えて続けてあげました。
殆どこれだけを全ての子供達が出来るように教えてあげました。
これは昔で言う「読み書きソロバン」というやつでした。
新しい教師たちはこの3つがあらゆる知性にとっての基礎になると確信していました。
この基礎が出来ていれば、その後自分で何かを見つけたり調べたり鍛えたり出来ますから、この力だけば徹底的に鍛えてあげました。
そしてこの3つの力には、底がありませんから筋肉トレーニングのように、健康維持のように永久に続ける必要性も教えてあげました。
読む力をつけるために、必ずしも本が必要ではありませんでした。
つづく
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