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予感

足早に過ぎる時の流れは、

気がつけば10月も終わりに近づいていた。


私はというと、しばらくは関東への出張や、

相変わらず京都での結婚式の仕事が続き、

忙しい毎日を送っていた。


暑い夏の日差しは日に日に和らぎ、

夕方になると涼しい秋風が頬を撫でる。

季節が夏から秋へ、そして冬に向かっている実感が湧いて

夏が大好きな私は、ふと寂しい気持ちになった。



そんな夏の終わり、秋のはじめのことだった。


いつものように仕事の依頼で、

夕方から明石の方の現場へ向かうことになった私は、

ふとあることを思い出して、

いつも利用している宿泊予約サイトを開いた。


その日の夕方と翌日の朝に同じ現場で仕事があり、

帰れない距離でもないので、

いつもなら一度帰宅して

翌日またその現場へ向かっていたのだけれど、


なぜかその日は、前から気になっていた

宿泊施設が仕事先の近くにあったことを思い出した。


「今日は泊まりで行っちゃおうかなー!」


そう思うとなんだか心がワクワクしてきて、

すぐにサイトから宿泊の予約をして、

いつもの仕事の持ち物と、泊まりの用意をすることにした。


普段は電車で行くことの多い仕事先だったけれど、

その日はとっても気持ちのいい天気で、


125ccの小型バイクの免許をもっていた私は

「今日はバイクで行こう!」

と、いつもより早く家を出て、

のんびりとバイクで仕事先に向かうことにした。


その仕事先のホールは海の近くで、

よく仕事終わりは海沿いの公園でお弁当を食べていたのだけれど、

その海辺の道を、今日の天気の中バイクで走ることを想像したら

とっても気持ちがいいだろうなぁと思ったからだ。


家からすぐの国道に出て、

道なりにずっと走ればその宿泊施設にたどり着くことができる。


スマホのナビによると、ここから1時間半近くかかるようだ。


それでも気持ちの良い天気と、気温の中では全く苦にはならず、

景色を楽しみながらバイクを走らせると、

まるで旅行に行く時のようなワクワクした気持ちになった。


よく知っている道だけれど、

ヘルメットの下で歌を歌いながら

初めての目的地を目指していたあの時、


わけもなく、でも、

なんだかとてもいいことが起こりそうな予感がしていた。


そして、その予感が当たっていたことがわかるのは

もう少し後になってからのこと。

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