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夜の始まり

時間は、不思議だ。 日々同じ速さで流れているのに、 何をして過ごすか どんな気持ちで過ごすか、 どんな場所で過ごすか そうした空間や心の違いによって、 時間の感じ方は全く違うものになる。 この場所での時間は外の空間よりも ゆっくりと流れているような、 そんな居心地の良さを感じさせる空間だった。 「あ、いけない!仕事のために来たのに忘れるところだった!」 しばらくぼーっと目の前の海を眺めていると、 あっという間に仕事先へ向かう時間になっていた。 部屋の

    • 海辺のゲストハウス

      「はー!到着ー!」 予約していた宿泊施設に到着したのは、 仕事の始まる1時間ほど前だった。 建物の下の駐車スペースにバイクを停めると、 目の前には、海が広がっていた。 ヘルメットを脱ぐと、 そっと潮の香りがして、波音が心地よく耳に響く。 ふと左手に目をやると、 上へと続く階段が伸びていて 「Front」という手書きの文字と矢印が書かれた カラフルで可愛らしい看板が立てかけられている。 看板に沿って階段を登るとさらに視界が広がり、 瀬戸内海の海と少し先に

      • 予感

        足早に過ぎる時の流れは、 気がつけば10月も終わりに近づいていた。 私はというと、しばらくは関東への出張や、 相変わらず京都での結婚式の仕事が続き、 忙しい毎日を送っていた。 暑い夏の日差しは日に日に和らぎ、 夕方になると涼しい秋風が頬を撫でる。 季節が夏から秋へ、そして冬に向かっている実感が湧いて 夏が大好きな私は、ふと寂しい気持ちになった。 そんな夏の終わり、秋のはじめのことだった。 いつものように仕事の依頼で、 夕方から明石の方の現場へ向かうことに

        • 生い立ち

           私の名前は奥野 詩織 (※) 年齢は26歳で、今年の11月の誕生日で27歳になる。 50代半ばの両親は共働きで、3つ年上の兄が一人。 両親の仲は悪くはないはずだが、 父は長く単身赴任で関東に住んでおり、顔を合わせるのは年に数回。 母とは少し前に大きなケンカをして以来、 今や連絡を取ることも顔を合わせることも無くなっていた。 元々、「子供を早く自立させる」という思いの強かった両親には これまで何をやるにも反対されたこともなく、 自分が「やりたい」と思ったこと

        夜の始まり

          プロローグ

          「詩織さん、 今日のパーティーも最高でしたね! いつもありがとうございます、 お疲れ様でした!」 いつものように会場のスタッフと笑顔で挨拶を交わし、 今日の仕事先であったホールを後にする。 会場を出ると、 綺麗なハイヒールをぺたんこのパンプスに履き替え、 ジャケットを脱いで、結い上げた髪を下ろす。 「うーん…今日はこれかな!」 しばらく歩いた先のコンビニで缶ビールを選び、 レジでつまみの唐揚げ棒を一つ。 「温かいものと冷たいもの、袋をお分けしますか?」

          プロローグ

          Story of my life

           「写真撮りましょうか?」 私が彼と出会ったのは、季節が夏から秋へと移り変わる頃。  出会った当初は全然ピンとこなくて、 その先なんて全く想像していなかったあなたとの出会い。 普段強がって、照れ臭くて、 なかなか言葉で伝えることはないけれど、 私は間違いなく 「あなたと出会えてよかった。」 これは、ある男女の出会いから、 今現在に至るまでの本当のお話。 そして、タイトルの通り「Story of my life」(私の人生の話) 初めてこうした形態で文章を

          Story of my life