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短編小説 「描けよ、夜更けの、少年」

「おい少年、夜更けになにしてるの?少年は寝る時間じゃないの?」公園のベンチで座る僕に女の人が言ってきた。

「散歩をして、疲れたから休んでます。」

「ヘぇ〜そう、夜更けに散歩なんて洒落てるじゃない。」女の人は酒の匂いがする。

 僕は人に絡まれるのは嫌だから公園を去ろうとした。

「ちょい待ち〜どこ行くの?帰るのかい?」

「はい帰ります。少年は寝る時間なので。」僕は少し皮肉を込めて言った。

「ははは、一本取られたねぇ〜ちょっとお喋りしようよ少年。わたしに付き合ってよ。」女の人は僕の肩に腕を回し僕を引き留めた。

「それで少年どうして夜更けに散歩なんかしてるの教えてよ。」

「明日は学校は休みだから夜を散歩したかっただけです。もういいですか。」

「待ちなよ少年、わたしといるのがそんなに嫌か?わたしは少年の事を知りたいだけなのに。」女の人は笑みを浮かべながら言った。

「僕には漫画の才能がないなって、そんな思って散歩してたんです。」

「少年は漫画を描いているのか、どんな漫画描いてるの?教えてよ。」そう言われて僕はスマホに保存してある漫画の一部を見せた。

「へぇ〜絵上手いじゃん、話はよくある少年漫画の話だね。」

「どうしたら、よくなると思いますか?」漫画に興味を持ってもらえて嬉しくて思わずアドバイスを求めてしまった。

「う〜んなんだろう、絵と話があってないのかな。絵はデッサンみたいで漫画のキャラクターっていうよりか本物感が強いから話とあってないのかな。リアルな絵が好きなの?」

「うん、その方が絵を描きやすいから。キャラクターみたいのはあんまり得意じゃない。」キャラクターを描くのは僕にはできない、想像して描くのが得意ではないから。

「本物の方が描きやすいんだ。ゼロから描くのは僕にはできない。」

「でも、絵は上手いじゃんそれじゃダメなの?」女の人が慰めるように言った。

「漫画を描きたいんだ、誰かに面白いとか言われると嬉しいから。」

「そっか、それじゃあ頑張らないとね。」

「頑張れないよ。才能ないから。」僕には漫画を描く才能はない、諦めるしかない。

「少年、君に仕事を頼みたい、わたしを描いてよ。いいだろう少年。」女の人は僕の肩を押さえ、跨りながら言った。

「どいてくれませんか、あの僕もう帰りますんで。」女の人に跨がれたのは初めてですごく恥ずかしかった。

「なんだ少年、せっかくの仕事の依頼を断るのか?少年漫画の才能はないかもしれないが、エロ漫画の才能はあるかもしれないだろう?」

「すみません、帰ります。」僕は無理やり女の人から離れて、走って家に帰った。

 熱い、体が熱い、冬なのに真夏のような熱さだ。汗が噴き出てくる。

 僕は家に帰りすぐにベットに入って寝ることにした。

 だけど、寝れない。女の人の姿が頭から離れない。

 僕はペンを取り絵を描いていた、頭に焼きついたあの姿を鮮明に描いていた。


 次の日の夜。


 僕はまた夜更けに同じ公園、同じベンチに座っていた。あの夜に描いた絵を持って。


「少年、夜更けになにしてるの?」僕が期待して待っていた酒の匂いがする人が来た。

「散歩して、疲れたんで休んでます。」

「へぇ〜そう、奇遇だね、わたしも疲れて休もうとしてたんだ。隣、座っていい?」

「うん。」僕は顔を少し赤くして返事をした。

「なにを持ってるの?」

「絵を持ってる、描いた絵を。」

「へぇ〜見せてよ。どんな絵を描いたの?」

「はい。別に、ただ見たものを描いただけだから変な意味はないです。」僕は予防線を張って絵をわたした。

「やっぱり、漫画の才能あるじゃないか。すごく嬉しよ。ありがとう。」女の人が笑顔で言った。

「仕事を依頼したい、わたしの家に来て、わたしを描いて欲しい。変な意味はない。ただわたしを描いて欲しい。」

「うん。」僕は行くと返事してしまった。でも少し期待した事でもある。

「じゃあ、行こうか。」公園から五分ほど歩いて女の人のマンションに着いた。

「入って。」僕は初めて他人の女の人の部屋に入った。

「そこに横になって。」女の人に言われるがままにした。

 女の人は横になった僕に跨って服を脱ぎ上半身裸になった。

「さぁ、わたしを描いて。足りなければ下も脱ぐよ。」

 僕は女の人を描いた、長くサラサラな髪を描き、すべすべの肌を描き、くびれた腰を描いた。

 女の人を描いた、ただひたすら描いた、手が止まるまで描き続けた。


 終わり。

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