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短編小説 「行くぞ少年」

 僕は海へ行きたい青く輝く海を見たい。

「お母さん明日、海に行こうよ。」僕はお母さんに海を連れてってもらおうとお願いした。

「ごめんお母さん土日は仕事が入っちゃったから行けないのお父さんに連れてってもらって。」お母さんには断られた。

「お父さん明日、海に行こうよ。」お父さんにお願いした。

「ごめんお父さんも仕事があるから無理なんだ。」お父さんにも断られた。

 海が見たい綺麗な海がどうしても見たい。僕は海が好きだ青く輝きどこへでも広がってる海が好きだ。浜風に乗って漂ってくる潮の香りも好きだ波の音も心地良い。どうしても海に行きたい。

「じゃあさ、一人で行ってきてもいい?」僕は一人でもいいから海へ行きたいそれぐらい行きたいんだ。

「ダメよ子供一人で行くなんて」お母さんに止められる。

「もう中三だし、神奈川や千葉くらいだったら電車で二時間くらいで着くし、いいでしょ?」僕は埼玉の熊谷に住んでる、海を見に行くには電車か車でないと行けない。一人でもいいから僕はどうしても行きたい。

「ダメ。来週じゃダメなの?来週ならお母さん休みだから。」

「今すぐってくらい見たいんだ。来週まで待てないよ。」僕は来週まで待てない。見たいと思ったら今すぐにでも見たいから。

「じゃあ、奏波ちゃんに頼んでみようか。」お父さんが提案した。奏波ちゃん、いとこのお姉さんだ。

「連れてってくれるかもしれないけど、連絡取れるの?」奏波ちゃんはなかなか電話にも出ないしLINEも返信が遅い。LINEしても返信が来るのは大体一週間後になるのがザラだ。

「一応、電話はとLINEはしとくから、ダメだったら来週にして。」お父さんが言った。

「わかった。」僕はそう言ったが嘘だ。たとえ奏波ちゃんにも断られたら、一人で行くつもりだ。

「電話は出ない。返信も来ないから、無理かもしれないな。」お父さんが言った。

「黙って一人で行くのはダメだからね。」お母さんには僕の目論見はバレてた。

「行かないよ。」僕はそう答えたが一人で行くつもりだ。

 二時間経ったが奏波ちゃんから電話もLINEも来ない。みんな仕事が忙しいのだろう。明日は僕一人でも行くつもりだから今日はもう寝ようとベットに入った。


「起きろ少年。海に行くぞ。」この言葉で僕は起きた。時計を見たら深夜の三時半だ。僕はまだ寝ぼけていて状況が理解できていない。

「ほら起きるんだ。海、行くんでしょ」声の方向を見たら奏波ちゃんが立っていた。

「連れてってくれるの?」僕は言った。

「そうだよ。海へ行くぞ。」奏波ちゃんが大きい声で言った。

 僕はようやく理解できた。奏波ちゃんが来てくれたんだ、連れてってくれるんだと。嬉しかった。

「奏波ありがとう。でも早すぎないまだ三時半だよ。」僕は言った。

「だって、朝の海も綺麗だからそれ見たいじゃん」奏波ちゃんははしゃぎながら言った。

「そうだね。朝の海も見たい。準備するから待ってて。」ベットから出て洗面台に向かった。

 僕は今までにない速さで歯を磨き顔を洗った。海に行けると思うとものすごく気分が高くなった。

「準備できたよ。」僕は五分で身だしなみを整えた。リビングでくつろぐ奏波ちゃんに言った。リビングにはお母さんもいた。

「よかったね。奏波ちゃんが来てくれて。海楽しんできて。」お母さんが言った。

「うん。楽しんでくるよ。お母さんありがとう。」僕は言った。

「じゃあ行くぞ。」奏波ちゃんが言った。


 奏波ちゃんの車に乗り込み海へ出発する。

「最初は葉山の海でいい?そこならちょうど朝日が上がる前に着くと思うから。」奏波ちゃんが聞いてきた。

「いいよ。そこに行こう。」楽しみだすごく楽しみだ。

「最初はって言ってたけど他にも行くの?」僕は聞いた。

「その後に千葉の海も見に行こうよ。フェリーに乗って千葉まで行ってそこから勝浦の方に行って帰ってこよう。」奏波ちゃんが言った。嬉しいすごく嬉しいフェリーに乗って海上も楽しめる最高の休んだ。

「ありがとう来てくれて。」奏波ちゃんにお礼を言った。

「嬉しいか少年。スマホみたらおじさんからLINEが来てて君が海へ行きたいと書いてあったからわたしも行きたいって思ってさ。」奏波ちゃんが言った。

「嬉しい、すごく嬉しいよ。」僕は言った。

「海はいいよね〜綺麗だし広いし。そうだ少年、わたしと一緒に海のある街で暮らすか。」奏波ちゃんが提案してきた。

「住みたい。海のある街の高校に通いたい。」僕は高校は海のあるとこに行きたいと思ってた。

「何言ってんの少年。住むなら今すぐにだよ。中学卒業まで待てるの?」驚いた。奏波ちゃんは今すぐに住もうと言ってきた。

「さすがに今、転校するなんてできないしお母さんが許してくれないよ。」僕は言った。

「それもそうだね。じゃあ高校の件は全力で説得しろよ少年。わたしも海のそばに住みたいからさ。」奏波ちゃんは本当に僕と海の近くで住むつもりだ。


 二時間半ほど経ってようやく海に着いた。朝日は少し登り始めてる。

「すごいよ奏波ちゃん見てよ綺麗だよ。」僕は興奮しながら言った。

「本当だすごく綺麗だね。来た甲斐あるね。」奏波ちゃんは言った。

 朝日が海に反射してなんとも言えない綺麗な景色が見える。潮の香りもする。僕はここに来たかった。この綺麗な海を見たかった。

 僕達は二時間ほど海岸にいた。砂浜で遊んだり、足だけ海に入れて葉山の海を思う存分楽しんだ。


「よし。じゃあそろそろフェリーの時間だから行こう。」奏波ちゃんが言った。

 次はフェリーで千葉に向かう。海の上を楽しめる最高だ。僕達はフェリー乗り場の久里浜港まで海沿いを車で走りながら向かった。車からの景色も最高だった。

 港まで三十分ほどで着いた。フェリーに乗って千葉へ。フェリーは四十分ほどで千葉の金谷港に着く。四十分間、海の上を楽しめる。テンションがさらに上がる。

「少年。フェリーに乗るぞ。」奏波ちゃんが言った。

「見てよ奏波ちゃん千葉が見えるよ。」フェリーが出発してすぐに目的地の千葉が見えた。

「本当だ結構近くなんだね。」奏波ちゃんが言った。

 四十分の航路はあっという間にわたし終わった。次は千葉の海を楽しむ。フェリーを降りて車で勝浦の海まで向かう。勝浦までは山の中を通って行ったから海は見えなかった。

「起きろ少年。着いたぞ。」奏波ちゃんが寝ている僕を起こした。僕は途中で寝てしまった。

「すごい綺麗だ。」葉山の海とはまた違って勝浦の海も綺麗だった。

「ここも綺麗な海だね。やっぱり海のある街に住みたいね。そう思うだろ少年。」奏波ちゃんが聞いてきた。

「うん。海のある街がいい。毎日見ても飽きないよ。」僕は言った。

「絶対海のある街の高校にするよ。お母さんもお父さんも説得するよ。そしたら一緒に住んでくれるよね。」僕は奏波ちゃんに言った。

「絶対海のある街に住もう。絶対説得しろよ少年。約束だよ。」

「絶対に説得する。約束するよ。」



 終わり。

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