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短編小説 「仮免男」

俺は今、古来から伝わる乗り物レインボーマッシーナを操縦している。

きっかけは、共にディアボロを倒すために戦うマウスサラマンダーこと人類名で火口君に言われた一言だ、
「愛田、お前そろそろ免許取ったら」

この言葉に衝撃を受けた、古来から伝わるレインボーマッシーナを操縦しろとそう言ったのだ。

自己紹介をしよう。

俺の名前はラブマシーン二号だ人類名で愛田 二郎だ。

ディアボロを倒すためにこの世に生を受けた、神だ。

ちなみにディアボロは卒論だ。

創造神にディアボロを倒しに行けと言われ、大学に通う四年生だ。

このレインボーマッシーナを操縦できるようになれば俺はどこへでもいける。

「さぁ!レインボーマッシーナ七号、今だ!左に曲がるのだ!」俺はそう念じた、レインボーマッシーナを操縦するのは神とはいえ神経はすり減る。

「ビックリしたなぁ、愛田さん急に大声出さないでくださいよ。」この男の名はサブマウンテンこと人類名で福山さんだ、レインボーマッシーナを完璧に操るすごいお方だ。

「なんですか、レインボーマッシーナって?もしかして教習車のこと言ってるの?レインボーは虹のこと?マッシーナって自動車こと言ってるの?うち虹村自動車教習所だから。」サブマウンテンこと福山さんは以後福山さんと言おう。

福山さんはレインボーマッシーナの操縦方法を口頭だけで教える、これはまさに神業、最初は驚いた、ただ横に座って口頭だけで説明して、そだけで操縦しろと言うのだ。

俺は福山さんの膝の上に乗って一緒に手綱を掴みながら操縦するものだと思っていたからだ。なのにいざ始まれば口頭のみ、福山さんの言葉を頼りに操縦するしかない。

だが操縦するまでが長いのだ。

儀式があるのだ。

まずレインボーマッシーナの周りを確認して、ピクシーなどがいないかを確認する。
レインボーマッシーナはとても大きくて重量のある乗り物だからピクシーが周りにいたら巻き込まれるかもしれない、当然の行動だ。

次に操縦席に乗り込み、錠をかける。次に操縦席を自分の操縦しやすい位置に合わせる。

まだある、ルームミラーを合わせる。次に命綱をつける。これがないと悲惨な目にあう。

次が一番興奮する瞬間だ、レインボーマッシーナに命を吹き込む。この瞬間がなによりも気持ちいい。
まだ儀式は続く、サイドミラー合わせる。またミラーか。

そして最後にルームミラー、左サイドミラー、左目視、右サイドミラー、右目視。これでようやく発進できる。
なんとも長い儀式だ。

最初はうまく操縦できなかった、だが福山さんは優しく、なにが悪かったかを教えてくれるのだ。
レインボーマッシーナを完璧に操縦できる上に教え方も上手だこの人はある種の神だ。

「愛田さん今の左折、ハンドルを切るのが早かったよ、縁石に乗り上げてるよ。それから、いちいち声出さなくても大丈夫だから。」優しく教えてくれるなんと素晴らしい事だ。

「はい!わかりました。」神である俺が神のご加護を受けたかのように返事をする。

縁石に乗り上げてしまった、バックしなければならない。だが、ここでも儀式がある、乗り上げた際はバックするのだが周りを確認してからバックをしなければならい。

よし!確認した。

「愛田さんすごいですね、他の教習生は大抵は確認せずにバックしちゃうのに、落ち着いて運転してる証拠です。」
なんと福山さんに褒められた、意外だ。縁石に乗り上げてしまったのに。
だけど他の人類は当たり前の儀式をやらないなんて愚か者か。

「はい。じゃあ〜今日はここまで。愛田さん今日はお疲れ様。気をつけて降りてね。」降りる時にも儀式があるのだ、周りを確認して、ゆっくりドアを開ける。
よし!大丈夫だ。

「福山さんお疲れ様でした。明日もよろしくお願いします。」いくら俺が神だからといって、無礼な態度は取らない。しっかり挨拶はする。

あと二回乗れば、仮免許の試験を受けられる。

仮免許を取得できれば、路上教習を習えるのだ。

そして路上教習が終われば免許取得の卒業試験が待っている。
これに合格できれば、本試験を受験できるのだ。
本試験は学科のみでレインボーマッシーナは乗らなくていいのだ。

長い道のりだ。さらに、これに並行してディアボロも倒さなくてはいけないのだ。人類の大学というのはなんとも恐ろしものだ。

続く。

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