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ファンタジー短編小説 「閻魔大王と天界のユニコーン」


昔々、地獄の底でひとつの家族が暮らしていました。その家族の父親は、地獄の閻魔大王。名は獄練。母親はかつて美しい悪魔だったが、今はもうこの世には存在しません。そして、その一人息子が、可憐な少年、冥煌です。

獄練は冥煌に対して、とても厳格でした。地獄の閻魔大王の息子である彼にも、地獄の掟は容赦なく適用されるのです。その一つが、「嘘をつけば舌を抜かれる」という掟でした。

しかし、彼は同時に愛情深い父でもありました。日が暮れ、地獄の業務が一段落した時、彼はいつも息子と遊びました。そして、その遊びの一つが指抜きでした。

ある日、獄練と冥煌が楽しそうに指抜きをしていると、冥煌が突然話し出しました。「父さん、僕、今日、真っ白な天界のユニコーンを見たんだ」と、獄練はほとんど驚くことはない大王ですが、その話には目を見開くしかありませんでした。

その理由は、彼が十分に知っていたからです。天界のユニコーンは、地獄で見ることのできない、天界にしか存在しない伝説の生物だったからです。

「冥煌、それは本当かい? お前がそれを言ったならば、舌を抜かれる運命にある」と獄練は息子に警告しました。

しかし、冥煌は真剣な表情で頷き、「うん、本当だよ、父さん。冥尽苑で見たんだ。赤い地獄花が咲き誇る中心にユニコーンがいた」と言い切りました。

この時、獄練は頭を抱えました。彼は、息子が舌を抜かれるのを見ることなど、何よりも嫌いだったからです。しかし、地獄の掟は彼自身が管理し、遵守するものであり、嘘を許すことはできませんでした。その一方で、冥煌の言葉に嘘は感じられませんでした。

そのため、彼はある決断をしました。冥煌が見たと言う「天界のユニコーン」が本当に存在するのであれば、その証拠を見つけ、嘘が真実であることを証明することにしました。

獄練は、自身の信じ難い決断に苦悩しながらも、仕事を終えるとすぐに冥尽苑へと向かいました。冥尽苑は地獄花が一面に咲き誇り美しいが、その美しさには厳しい地獄の現実が隠されていました。しかし、獄練にとってそれは、息子の無実を証明するための戦場でしかありません。

冥尽苑に到着すると、彼は地獄花が生い茂るその場所を丹念に探し始めました。しかし、どれだけ探しても、天界のユニコーンの姿は見えませんでした。だが、彼は諦めませんでした。何日も何夜も、彼は息子の嘘が本当であることを証明するために、捜し続けました。

そしてある日、獄練が諦めそうになった時、目の前に現れたのは、冥煌が見たと言った「天界のユニコーン」でした。その姿は、真っ白な体に輝く角、純粋さを象徴するような美しさを持っていました。その瞬間、獄練は涙を流しました。息子の冥煌が言った言葉は嘘ではなく、本当だったのです。

その後、獄練は冥煌に「天界のユニコーン」の存在を伝え、彼が嘘をついていないことを皆に証明しました。そして、それ以来、冥煌は真実だけを話すようになりました。

そして獄練は、自分の息子への愛情と、自分が守るべき地獄の掟との間で揺れ動く心情を抑え、冥煌を愛する父として、また地獄の閻魔大王として、日々を送ることとなりました。




時間を割いてくれて、ありがとうございました。

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