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【企業分析】広告王国の真実、Google財務分析レポート

株価 176.620(06/11 16:00)


①損益計算書分析


引用:マネックス証券「銘柄スカウター」

1. 売上高

  • 長期的成長: 売上高は2007年の約165億ドルから2023年の約3074億ドルに増加。年平均成長率は約20%。

  • ピークと減速: 2021年には前年比41.2%の急成長が見られるが、2022年と2023年には一桁台の成長率に落ち着いている。

  • 分析: 広告事業が依然として収益の中心ですが、成長率の鈍化は市場成熟や競争激化の影響を反映している可能性があります。

2. 営業利益

  • 安定した増加: 営業利益は2007年の約50.8億ドルから2023年の約842.9億ドルに増加。2007年から2010年の間、急激な成長(43.2%から24.9%)が見られ、2021年の90.9%増加が際立っています。

  • 減少と回復: 2022年には前年比4.9%減少したが、2023年には12.6%の成長に回復。

  • 分析: 2022年の減少は一時的なもので、2023年には回復しています。市場環境の変動や広告支出の変動が影響している可能性があります。

3. 税引前利益

  • 変動幅の大きい成長: 2007年から2023年にかけて、税引前利益は顕著に増加。特に2021年の88.7%の成長が目立ちますが、2022年に21.4%減少した後、2023年には20.2%の回復。

  • 分析: 税引前利益の変動は、収益源の多様化や一時的な費用の変動に左右されていると考えられます。

4. 当期利益

  • 長期的増加: 当期利益も、2007年の42億ドルから2023年の738億ドルに成長。特に2021年には前年比88.8%の急増があります。

  • 減少から回復: 2022年には前年比21.1%減少したが、2023年には23.0%回復。

  • 分析: 当期利益の変動は、営業利益の変動と連動しており、企業の戦略的投資や費用管理の影響を受けているようです。

5. EPS(1株当たり利益)

  • 顕著な成長: 2007年の0.33ドルから2023年の5.80ドルに増加。特に2021年の5.61ドルの高水準が際立っています。

  • 分析: EPSの増加は収益性の向上を反映しており、株主への価値提供が続いていることを示しています。

総合評価

  1. 収益構造の強固さ: Googleの収益構造は広告ビジネスに大きく依存していますが、売上高と利益の両方で顕著な成長を遂げています。

  2. 2021年の飛躍とその後の変動: 2021年の業績は飛躍的な成長を見せたが、2022年には一時的な減速が見られました。2023年には再び安定成長を取り戻している。

  3. 市場環境の影響: 成長率の変動は市場環境や競争、広告支出の変動に影響されていることが示唆されます。

Googleの財務状況は健全であり、長期的な成長も期待できますが、短期的な市場変動に対する柔軟な対応が必要です。2023年の回復傾向が続くかどうかは、将来の戦略と市場の動向次第です。


引用:マネックス証券「銘柄スカウター」

1. 営業利益と利益率

  • 営業利益の推移: 営業利益は2007年の50.8億ドルから2023年の842.9億ドルまで増加。

  • 利益率の変動:

    • 2007年:30.6%

    • 2010年:35.4%

    • 2016年:26.3%

    • 2021年:30.6%

    • 2023年:27.4%

  • 分析: 営業利益率は30%前後で安定しており、特に2010年から2016年まではやや低下傾向が見られましたが、その後は概ね安定。営業費用の管理が良好であることを示しています。

2. 税引前利益と利益率

  • 税引前利益の推移: 2007年の56.7億ドルから2023年の857.2億ドルへと増加。

  • 利益率の変動:

    • 2007年:34.2%

    • 2010年:36.8%

    • 2016年:26.8%

    • 2021年:35.2%

    • 2023年:27.9%

  • 分析: 税引前利益率は営業利益率に似た推移を示し、2017年に一時的に低下(24.5%)しましたが、その後は回復しています。税金や利息の支払いが利益に与える影響を適切に管理しているようです。

3. 当期利益と利益率

  • 当期利益の推移: 当期利益は2007年の42.0億ドルから2023年の737.9億ドルへと成長。

  • 利益率の変動:

    • 2007年:25.3%

    • 2010年:29.0%

    • 2016年:21.6%

    • 2021年:29.5%

    • 2023年:24.0%

  • 分析: 当期利益率は、営業利益率や税引前利益率と連動しています。2021年にはピークの29.5%に達しましたが、2023年には24.0%にやや低下しています。

4. ROE(株主資本利益率)

  • 推移:

    • 2007年:21.2%

    • 2010年:20.7%

    • 2016年:15.0%

    • 2021年:32.1%

    • 2023年:27.4%

  • 分析: ROEは2017年の8.7%まで低下しましたが、2021年には32.1%に急増。これは、企業の収益性の改善と資本効率の向上を示しています。

5. ROA(総資産利益率)

  • 推移:

    • 2007年:19.2%

    • 2010年:17.3%

    • 2016年:12.4%

    • 2021年:22.4%

    • 2023年:19.2%

  • 分析: ROAは長期的には14%前後で推移していますが、2021年には22.4%に上昇。総資産の効率的な利用を示す一方、2023年には若干低下し、長期的に高い水準を維持しています。

総合評価

  1. 利益率の堅調な推移: 営業利益率、税引前利益率、当期利益率は全体として安定しており、特に2021年の大幅な利益率の向上が際立っています。この年はデジタル広告市場の急成長や効率化が影響したと考えられます。

  2. ROEとROAの改善: ROEとROAは2017年に低迷しましたが、その後は改善しています。特に2021年のROEの急増は、収益性の向上と株主資本の効率的な運用を示しています。

  3. 長期的な成長と収益性の安定: 全体的に見て、Googleは長期にわたって収益性を維持しつつ、資本効率を改善してきたことがわかります。2023年の利益率やROE、ROAの改善も、持続可能な成長戦略の成果と言えるでしょう。

課題と展望

  • 市場の成熟: 今後、デジタル広告市場の成熟に伴い、収益の多様化や新たな成長領域の開拓が求められるでしょう。

  • 競争環境: 技術革新や競合他社の動向に対する迅速な対応が、今後の利益率や資本効率の維持に重要です。


引用:マネックス証券「銘柄スカウター」

1. 減価償却(含むのれん償却)

  • 推移:

    • 2014年: 49.79億ドル(7.5%)

    • 2015年: 50.63億ドル(6.8%)

    • 2016年: 61.44億ドル(6.8%)

    • 2020年: 136.97億ドル(7.5%)

    • 2023年: 119.46億ドル(3.9%)

  • 分析: 減価償却費は絶対額として増加傾向にありますが、対売上高比率は2014年から2016年にかけて安定して約7%前後でした。2021年以降の比率の低下は、売上高の増加に対して減価償却の増加ペースが遅れた結果であり、効率的な資産運用がなされている可能性があります。

2. 設備投資

  • 推移:

    • 2014年: 109.59億ドル(16.6%)

    • 2015年: 99.15億ドル(13.2%)

    • 2016年: 102.12億ドル(11.3%)

    • 2018年: 251.39億ドル(18.4%)

    • 2023年: 322.51億ドル(10.5%)

  • 分析: 設備投資額は特に2018年に大幅に増加しており、対売上高比率もこの年には18.4%に達しています。これは、データセンターやインフラの拡充など、事業基盤強化に向けた投資の一環と考えられます。その後の比率低下は、投資の成果が出始めたためと推測されます。

3. 研究開発費(R&D)

  • 推移:

    • 2014年: 98.32億ドル(14.9%)

    • 2015年: 122.82億ドル(16.4%)

    • 2016年: 139.48億ドル(15.5%)

    • 2018年: 214.19億ドル(15.7%)

    • 2023年: 454.27億ドル(14.8%)

  • 分析: 研究開発費も絶対額で増加し続けており、対売上高比率も安定して15%前後を維持。持続的なイノベーションと新技術開発に継続的に投資していることがうかがえます。

総合評価

  1. 減価償却の効率化: 減価償却費の対売上高比率が2021年以降低下傾向にあるのは、既存資産の効率的な運用を反映しています。2023年の3.9%という低い比率は、Googleが新規資産よりも既存資産のリソースを効果的に活用していることを示唆します。

  2. 設備投資の戦略的増加とその後の安定化: 設備投資は2018年に大きく増加し、その後は対売上高比率が低下しています。これは、初期の高投資フェーズから、インフラ整備が整った後の効率的な運用フェーズに移行していることを示しています。

  3. 研究開発への積極的な投資: 研究開発費は一貫して増加し、対売上高比率も高い水準を維持しています。Googleは革新を推進し、競争優位を維持するためにR&Dに多額の投資を続けていることがわかります。

課題と展望

  • 資本効率の改善: 減価償却費や設備投資の対売上高比率の低下は、資本効率の改善を示しており、これが継続されることで、企業の長期的な成長に寄与する可能性があります。

  • 研究開発の強化: 高いR&D費の比率を維持することは、未来の成長ドライバーである新技術や新サービスの開発に貢献します。引き続きこの分野での投資を継続することで、長期的な競争力を保つことが期待されます。


結論

Googleの財務データは、同社が資産を効率的に運用しながら、戦略的な設備投資と研究開発に積極的に取り組んでいることを示しています。これにより、企業の長期的な成長と持続可能な競争力が確保されていることが評価できます。


②貸借対照表分析


引用:マネックス証券「銘柄スカウター」

1. 資産構成

流動資産

  • 現金及び現金同等物:

    • 推移: 2014年の160.85億ドルから2023年の171.53億ドルへと増加。ピークは2021年の188.14億ドル。

    • 分析: 現金は安定的に高い水準を維持。強固なキャッシュポジションは、運転資金や投資活動を支えるために重要です。

  • 売掛債権:

    • 推移: 2014年の165.85億ドルから2023年の240.48億ドルに増加。

    • 分析: 売上高の増加に伴い売掛債権も増加しており、売上の一部はまだ未収であることを示しますが、健全な範囲内です。

  • 市場性のある有価証券:

    • 推移: 2014年の115.56億ドルから2023年の479.64億ドルに増加。

    • 分析: 現金同等物に次ぐ高い水準を示し、Googleの流動性の高さを裏付けています。

  • その他流動資産:

    • 推移: 2014年の649.6百万ドルから2023年の126.5億ドルに増加。

    • 分析: 流動資産の構成要素として、特に2021年以降の増加が顕著です。これは事業拡大や新たな収益源の確保に伴う資産増加を示します。

非流動資産

  • 有形固定資産(純額):

    • 推移: 2014年の504.48億ドルから2023年の2308.62億ドルに大幅増加。

    • 分析: データセンターやインフラへの投資を反映。設備投資と連動しており、インフラ整備に重点を置いています。

  • のれん:

    • 推移: 2014年の238.83億ドルから2023年の294.98億ドルに増加。

    • 分析: のれんは買収に伴う価値であり、Googleの積極的な買収戦略の一環です。

  • その他非流動資産:

    • 推移: 2014年の155.99億ドルから2023年の532.28億ドルに増加。

    • 分析: 長期的な投資やリース資産などを含み、企業の資産の多様化を示しています。

2. 負債構成

流動負債

  • 買入債務:

    • 推移: 2014年の46.59億ドルから2023年の102.41億ドルに増加。

    • 分析: 取引先への未払い金であり、売上高増加に伴う支出の増加が反映されています。

  • その他流動負債:

    • 推移: 2014年の168.05億ドルから2023年の818.14億ドルに増加。

    • 分析: 流動負債の増加は、短期的な資金調達や支払いの増加を示していますが、流動資産で十分にカバーされています。

非流動負債

  • 非流動負債:

    • 推移: 2014年の98.28億ドルから2023年の371.99億ドルに増加。

    • 分析: 長期の債務や引当金を含み、将来の投資や戦略的事業活動のための資金調達が行われていることを示します。

3. 純資産構成

  • 株主資本:

    • 推移: 2014年の1045億ドルから2023年の2833.79億ドルに増加。

    • 分析: 純資産の増加は、収益の積み上げや資本増強の結果。持続的な成長戦略により企業価値が高まっていることを示しています。

  • 非支配持ち分:

    • データなし。

    • 分析: Googleの持分法適用関連会社などが影響している場合もありますが、ここでは該当なしです。

総合評価

  1. 強固な流動性: 現金及び現金同等物、市場性のある有価証券を含む流動資産が高水準を維持しており、短期的な資金繰りには全く問題がありません。

  2. 積極的な設備投資と資産拡充: 非流動資産の大幅な増加は、データセンターやインフラ、技術設備への積極的な投資を反映しており、長期的な成長の基盤を築いています。

  3. 負債の増加: 流動負債、非流動負債ともに増加していますが、流動資産と純資産が十分に補完しており、財務の安定性が維持されています。

  4. 資本の強化: 株主資本の増加は、収益力と内部留保の強化を示しており、企業の自己資本比率の向上に寄与しています。


結論

Googleの財務データから、企業が強固な資産基盤を持ち、積極的な投資活動を行いながらも財務の健全性を維持していることが確認できます。これにより、長期的な成長の見通しが良好であり、投資家や株主に対しても安定した価値提供が期待されます。

③キャッシュフロー計算書分析


引用:マネックス証券「銘柄スカウター」

1. 営業キャッシュフロー(営業CF)

  • 推移:

    • 2007年: 57.75億ドル

    • 2013年: 186.59億ドル

    • 2019年: 545.20億ドル

    • 2023年: 1017.46億ドル

  • 分析: 営業CFは一貫して増加しており、特に2016年からの急成長が目立ちます。これは、収益性の向上と運転資本の効率的な管理に起因しており、Googleの主要事業がキャッシュジェネレーターとして優れた性能を発揮していることを示しています。

2. 投資キャッシュフロー(投資CF)

  • 推移:

    • 2007年: -36.82億ドル

    • 2013年: -136.79億ドル

    • 2019年: -294.91億ドル

    • 2023年: -270.63億ドル

  • 分析: 投資CFは一貫してマイナスで、主にデータセンターの建設、技術インフラへの投資、および企業買収などに使われています。2011年の-190.41億ドルをピークに、その後は変動していますが、安定した投資活動が行われています。

3. 財務キャッシュフロー(財務CF)

  • 推移:

    • 2007年: 4.03億ドル

    • 2013年: -8.57億ドル

    • 2019年: -232.09億ドル

    • 2023年: -720.93億ドル

  • 分析: 財務CFは主に株主還元(自社株買い)、借入金の返済などに使われ、マイナスが続いています。特に2021年以降の大幅なマイナスは積極的な株主還元策を示しています。

4. 現金・現金等価物

  • 推移:

    • 2007年: 60.82億ドル

    • 2013年: 188.98億ドル

    • 2019年: 184.98億ドル

    • 2023年: 240.48億ドル

  • 分析: 現金及び現金等価物は増加傾向にあり、企業の流動性が高い状態を維持しています。特に近年の現金保有額の増加は、投資機会や短期的な資金ニーズへの対応力を強化しています。

5. フリーキャッシュフロー(FCF)

  • 推移:

    • 2007年: 33.73億ドル

    • 2013年: 113.01億ドル

    • 2019年: 309.72億ドル

    • 2023年: 694.95億ドル

  • 分析: FCFは営業CFから投資CFを差し引いた値であり、Googleが投資活動を行った後にどれだけの資金を残しているかを示します。これも一貫して増加しており、特に2019年以降の急成長が目立ちます。これは、収益性の向上と投資の効率化により、事業からの現金生成力が高まっていることを示しています。

総合評価

  1. 強力な営業キャッシュフロー: 営業CFが一貫して増加している点は、Googleのコアビジネスの収益力が強いことを示しています。特に2016年以降の急増は、広告収入の増加とコスト管理の効果を反映しています。

  2. 積極的な投資活動: 投資CFが大きなマイナスであることは、Googleが積極的に事業拡大や技術インフラの整備に投資していることを示します。この戦略により、将来の成長が期待されます。

  3. 株主還元の増加: 財務CFが大きなマイナスを示すのは、特に2021年以降の自社株買いや配当などを通じた株主還元を強化しているためです。

  4. 安定したフリーキャッシュフロー: FCFが増加傾向にあり、企業の自由に使える現金が多いことは、将来的な投資機会や株主還元の原資として有利です。


結論

Googleは、強力なキャッシュフロー生成能力を持ち、積極的な投資戦略と株主還元の両立を実現しています。これにより、企業の成長基盤が強化され、今後の収益性と持続可能な競争優位性の維持に寄与することが期待されます。

【総合価値評価】


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