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短歌集 冬を迎える

少しずつ心の声が消えていきぼくの体を壊し始める

街角でふと振り返るあの頃のあなたによく似た夜に思えて

ありふれた出会いなのかもしれないがそれでも奇跡なのだと思う

君といる 一人の夜に戻ったらさらに愛しく思うんだろう

心から願うあなたの心音を聞けるのが僕でありますように

学校に行きたくないと泣いていたあの子も大人になれたのだろう

花となるあなたいずれは透明な花瓶の中で冬を迎える

何度でも僕はあなたを否定するあなたが僕にそうする限り

人間になってからでは遅いからこの夏君に会いに戻るね

そういえばあなたのことが好きだった頃もあったの昔のことよ

握るため開いた指の隙間から救われたかった愛が溢れる

怖いから瞼を閉じただけだったまさか終わると思わなかった

地球儀を回して止めるこの場所にあなたのママが眠っているの?

愛してた人の仕草で改札を抜ける住みたい街を探して

じんわりと溶けてこぼれていきそうな光の雫君は拭った

自らの指で自分を絞め殺す意味もわからず安心だった

喉元に突きつけられたナイフから伝わってくる君の憎しみ

泣いているあなたのことを抱きしめる私のことが見えないあなた

つながらぬ過去と未来の真ん中であなたを探す僕の役目だ

何のため私は生きているのだろう愛することはできないだろう

苦しさはどうにもならない寂しさもどうにもならない痛みも声も

大好きな季節大切な友達恨みたかったあの子の気持ち

そうだよねそうだよねって確かめる命の価値がどれほどなのか

これからの話をしよう新しい地図を作ろう僕らの足で 

音のない世界を生きているような心地あなたのいない部屋って

金色の瞳古びたアルバムに閉じ込められた僕の恋人

飴色の玉ねぎ作っておいてってそこをあなたがするんじゃないの?

夏祭り翌日誰かに捨てられた金魚が川を自由に泳ぐ

すれ違うどこかで何か間違ってしまったことが

そのままで君は自分を大切にできる人だと信じてるんだ

行き先に体がひとつ落ちていて魂たちが心配してる

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