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ポートフォリオ管理 - 資産運用サービス ラップとシステム ③

はじめに

 ラップに関する2回目の投稿(前回)では残高管理について記載しました。今回はポートフォリオ管理について記載したいと思います。

ポートフォリオって何?

 Wikipedia では、下記のような説明となっています。

The term “portfolio” refers to any combination of financial assets such as stocks, bonds and cash.

 日本語に訳すと、「株式、債券、現金などの金融資産の組み合わせ」となります。

ラップにおけるポートフォリオ

 株式投資をされている方だと、一般的にはどの株式を購入しようかな?(下世話な言い方をするとどの株式が儲かりそうか?)と考えると思います。一方、ラップでは、長期的な資産形成を目的とするのが一般的であり、また、リスク分散の観点から、異なるタイプ複数の金融資産(商品)をどれぐらいずつ保有するべきか(モデルポートフォリオなどと呼びます)と考えます。そして、そのモデルポートフォリオの構成が投資運用業者としての腕の見せ所となります。

資産クラスと銘柄

 ラップでは、資産クラス銘柄という2種類の粒度でポートフォリオの構成を考えるのが一般的です。資産クラスというのは、同種(性質)の金融商品のグループと言えます。例えば、資産クラス「米国IT現物株式」では、AppleやFacebookなどの銘柄がこの資産クラスの構成要素となります。銘柄は、個別の金融商品を指します。例えば、SIOS株式会社の現物株式(証券コード3744)。

資産クラスと銘柄の関係

 資産クラスと銘柄の関係はいくつかのパターンがあります。代表的な3つを紹介します。

1対n 資産クラスと銘柄の関係

 特定の資産クラスに、一つもしくは複数の金融商品が含まれ、各金融商品は一つの資産クラスにしか属さない1対nの関係が、ラップでは最も一般的です。長らく、現在においてもこの関係が主流です。特定の資産クラスに属す金融商品(群)すべての、構成比(その評価額がポートフォリオ全体の時価評価額合計に占める割合)を合計するとその資産クラスのポートフォリオ全体に対する構成比となります。

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n対n 資産クラスと銘柄の関係

 特定の資産クラスに、一つもしくは複数の金融商品が含まれるのは1対nと同じですが、特定の金融商品が複数の資産クラスに含まれることがあるのが違いです。下記の図でいうと、金融商品Cが資産クラスAと資産クラスBに属しています。

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 絵で見る限りは、それほど差はないように見えますが、管理するシステムの視点だと複雑度が増します。1対nでは、ある金融商品は単一の資産クラスに属しているため、資産クラスの評価額合計を算出する場合、それに属す銘柄の評価額を合計すれば済みます。
 一方で、n対nにおいては、ある銘柄の評価額の内、その資産クラスにアロケーションされて(割り当てられて)いる比率を掛けて合計していかなければなりません。システム的には、ある銘柄の何%がどの資産クラスに属すかという情報を管理しなければならず、上記のように比率に基づいて配分するロジックは増えます。
 ラップの世界ではそれほど一般的ではありません。ただ、現物株式を組み入れているケースでは、n対nを採用しているケースも存在します。例えば、「日経225」「国内情報通信・IT」といった二つの資産クラスがあるとします、NTTやソフトバンクグループは両方に組み入れられる可能性があります。私が知る限り、単一のシステムでこのようなポートフォリオ管理ができるものは国内に存在せず、複数のシステムを組み合わせないと管理ができません。

1対1 資産クラスと銘柄の関係

 投資信託とキャッシュ性資産のみで構成されるファンドラップが主流となり、最近では、1対1という関係を持つ構成も出てきています。
 例えば、「国内株式」「国内債券」「米国株式」「米国債券」「新興国株式」「新興国債券」といった資産クラスで構成されるポートフォリオがあるとします。この場合、国内株式においてどの銘柄を選定しどの比率で保有するかは投資信託の役割としてしまえば、「ファンドラップ国内株式投信」といった投資信託一つで運用することができます。この方式を全資産クラスに適用すると、1対1のポートフォリオとなります。
 システム屋にとっては、すごく楽な方式です。当然、システム開発コストを抑制することができ、より安い手数料でファンドラップのお客様にサービスを提供することできます。

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最後に

 モデルポートフォリオと実際のポートフォリオの乖離検知などについてもカバーしようかと思いましたが、随分と長くなってしまいました。次の記事に記載しようと思います。

関連ノート

資産運用サービス ラップとシステム①
残高管理 - 資産運用サービス ラップとシステム ②
 ポートフォリオ管理 - 資産運用サービス ラップとシステム ③(本記事)
乖離検知 - 資産運用サービス ラップとシステム ④
リバランス - 資産運用サービス ラップとシステム ⑤
報酬(概要) - 資産運用サービス ラップとシステム ⑥
残高報酬- 資産運用サービス ラップとシステム ⑦
成功報酬- 資産運用サービス ラップとシステム ⑧

適宜関連ノートは追加していきます。

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