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英国のフットボール(サッカー)文化

イギリス留学中、フットボール(サッカー)の試合を見に行きました。(イギリスでは "soccer" でなく"football"の呼称が一般的です。 )観戦したのはアーセナルFCの本拠地、エミレーツ・スタジアムです!対戦カードはアーセナル対ハル・シティ。もともと野球派なのでサッカーにはあまり興味がなかったのですが、留学生仲間がチケットを安く譲ってくれたので(たしか27ポンドくらい)、イギリスのフットボール文化を体験しに行きました。その時に感じたことの記録です。

フットボールは男性・労働者階級の娯楽

スタジアムに来ていた9割が「オッサン」でした!

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日本で野球中継を見てると応援席には女性や子供が多いですが、こちらのフットボールの観客は圧倒的に中高年男性。休憩中のトイレも、男性トイレは長蛇の列で、女性トイレはガラガラ。スタジアムで応援するためのチケットが高いので、年齢層はやや高めでした。

イギリスでは「フットボールは労働者階級が見るもの」というステレオタイプがあるようです。上流階級はテニスとか、クリケットとか、ポロとか、(ラグビーもかな)。

そして私の後ろにいった男性2人組は、前回の記事に書いたイギリスの若者スラング「innit(〜じゃね?)」を使っていましたよ。

試合が終わったあと、興奮したオッサン達は会場内のテレビのところへ走って集まります。もちろん、他のチームの試合結果を確認するため!そして、マンチェスター・ユナイテッドが試合に負けたのを確認して(その時アーセナルとマンユーでトップ争いをしていました)、「マンユーが負けた!マンユーが負けた〜っ!!"ManU lost! ManU loooost!"」と歓喜の雄叫びを皆で上げていました。ビール腹のオッサン達がジャンプして子供のように喜んでいる様はなかなか見れないです。


フーリガン的な人はそんなにいない

ヨーロッパのサッカー報道を見てると、熱狂的なフーリガンがいたりでサッカー観戦って怖いイメージがあったけれど、実際にはそんなことなかったです。(これは荒れるような試合じゃなかったからかもしれません。)

面白かったのが、観客同士がお互いに煽るところ。敵チームのファンに対して、「へたくそチームめが!」「お前らなんかロンドンのチームじゃない!」(アーセナルもハルシティも両者とも本拠地がロンドンだから)というように野次の応酬が試合中ずっとあります。

これは雰囲気的に、本気で頭に血が上ってというよりも、「気の利いた返答」をして楽しむ、という感じでした。大声で野次を叫ぶから、当然、周りにいる人は聞いています。そこで、ユーモアや皮肉の効いた返答をすると「おーーー!(拍手)」という感じで盛り上がります

まあ、中にはちょっとオカしい人もいましたけどね。
相手チームの方を向いてずっと罵声を叫んでるオッサンとか。せっかく高いチケット買ってわざわざスタジアムに来てるんだから、試合見ればいいのに…!


警備員めっちゃ多い!

通路の警備員の数が並みじゃないです。
これが試合を安全に楽しめる最大の理由でしょう。
ガタイのいい警備員が通路に1mおきくらいに待機しています。

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オレンジ色の人が警備員。女性もいます。

そしてあまりにも野次のひどい人なんかに注意をして、黙らせます。


応援歌(チャンツ)が面白い!!

応援歌(チャンツ)。これが一番楽しめたところです。野球みたいにトランペットなどの「鳴りもの」がある訳ではないので、人間の声のみです。

これは私が撮った動画。こういう感じなんです。ちょうど前半で1点が入った後の盛り上がってるところです。

面白いのが、このチャンツには種類が山ほどあるところ!調べてみたらこういうサイトがありました。

各チームのチャンツを録音したものが公開されているんです。チャンツ文化って奥が深いんですね。なんというか、すごい…!の一言です。

アーセナル側の応援歌で私が覚えてるのは以下の通り(クリックすると、上記のサイトの該当ページに飛び、音声が聞けます)。

Arsenal! Arsenal! (アーセナル!、アーセナル!)

Red Army! Red Army!(レッド・アーミー「赤い軍隊」の意。アーセナルが「兵器工場」という意味なので、それに関連づけて)

Arsenal till I die!  (「死ぬまでアーセナル!」他のチャンツに比べてメロディがあるのでよく覚えています。)

Oooh to be a gooner(「アーセナル・ファンになろう!」goonerがアーセナル・ファンのこと。これもたくさん歌われていたけど、聞いている時は歌詞がまったく聞き取れず気になっていました。たとえ歌詞が聞き取れてても、意味は分からなかったでしょう。)

We are top of the league! (「俺たちがリーグ・トップだ!」観戦当時、アーセナルがリーグ1位だったので。)

日本の野球の試合みたいに応援団がいるわけでなく、誰かが歌い始めたら、周りの人が唱和する、という感じです。これは試合中だけでなく、スタジアムに行く地下鉄の中でも誰かが歌い始めたら他の人も歌う、という感じ。このスタジアムに向かうファンの興奮した雰囲気は本当に独特です。

面白かったのは、観客は試合中はずっと立って応援しているけれど、定期的に警備員が「座って〜!!」と声をかけます。そんな注意、ほとんど誰も聞いていないのですが、完全に無視すると追い出されると思うのか、10回に1回くらいは、大人しく座ります。

すると、

Stand up for the Arsenal! (「アーセナルのために立ち上がれ」)
Stand up if you hate <相手チームの名前>! (「○○が嫌いなら立ち上がれ」)

という歌を歌い始めます。

そうすると皆、また一斉に立ち上がります。警備員は「やれやれ」と苦笑。

一緒にいったイギリス人の友達が覚えてたのが、

Big Fucking German (「すげー巨大なドイツ人」)

We pay your benefits! We pay your benefits!(自分の応援しているチームに向かって「俺たちがお前ら(プレーヤー)の給料を払ってるんだぞ!」)

You're not 'city', you're not city, you're not city anymore! (「お前ら『シティ』じゃない。」これは対戦相手が「ハル・シティ」というチームだから。ロンドンには複数のチームがあるけど、ファンは自分のチームが本当の「ロンドン代表」的な意識をそれぞれ持っています。そして「シティ」という言葉は、世界でも有数のロンドン金融街「シティ」という意味もあるので、「ハル・シティ」というチームに対して、「シティ」という名前を使うな、という感じなのかな。)

ちなみに、そのイギリス人の友達の話では、"Big Fucking German" は文化的な意味をもっているとのこと。

頭文字BFGはいろんなポップカルチャーに登場するそうです。Big Friendly Giant とか、Big Fucking Gun とか、イギリス人はこの"BFG"という表現に馴染みがあるんだとか。ディズニーのこちらの映画もBFGですね。

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アーセナルには当時、とても背の高いドイツ人プレーヤーがいたので、彼のことを指してBig Fucking Germanと言っていたそうです。fuckingはもちろんこの場合、侮蔑的な意味じゃなくて、veryとかreallyという強意語。日本語で言うと「ヤバイ」ってかんじでしょうか。
ちょっとした言葉にも文化的背景があるんですね。

あと、この時は聞かなかったけど、ファンの応援歌のウェブサイトを見ていて面白かったもの。

イングランド北部のチームのファンに対して、
Get a job! Get a job! (仕事探せ!仕事探せ!)

イングランド北部は「仕事がない」「失業者が多い」というイメージがあるので、そのことを皮肉ってるんです。
もはや、全くサッカー関係ない! 笑


#応援したいスポーツ

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