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いまさら聞けない美容師のインボイスの話し

ネットで「インボイス 美容師」で検索して出てくる記事を調べると美容師さんたちが書いた記事が出てくるのですが、コピペとアフィリエイトが多くてなかなか伝えきれていない印象をうけます。解釈が間違っていたり情報不足もあるのでネットを見れば見るほど混乱してきますよね。

さて、今回のインボイス制度のいちばんのキモは、

2割特例(にわりとくれい)の措置です。

インボイスは、非課税の「個人」と課税事業者の「会社」と税金を徴収をする「国」の3人のお話しですが、とどのつまり「国」による「個人」への税金の徴収です。

報酬を受け取っている非課税の「個人」は、その報酬に対して今まで消費税という概念はありませんでした。

消費税はお買い物した時に払うもの。といういち消費者としての概念しかなかったのです。

「会社」はお客さんからカットなどの代金をいただくときに消費税も一緒にもらっています。このもらった消費税は国に納めます。消費税は本体価格すなわち売上の10%ですね。

会社は、材料の仕入れや業務委託代や家賃などの経費の支払い時に消費税も一緒に払っています。このときに支払った消費税は先のお客さんからもらった国に納める消費税と相殺されます。

会社は月の売上が税込550万円だと、その内もらった消費税は50万円。材料の仕入れや業務委託代や家賃などの経費が税込330万円だと、払った消費税は30万円。もらったものと払ったものが相殺され20万円だけ消費税を国に収めます。

会社が個人のあなたに支払った業務委託費としての報酬にも消費税が含まれていて、例えばあなたの業務委託費が50万円だったとしましょう。
この50万円は、支払った会社側の解釈としては「本体価格454,545円+消費税10%の45,455円」に分解されています。

個人のあなたは消費税を知らずに受け取っていたことになります。
知らずに?
あなたは月払いなり日払いなり業務委託費を受け取る際、請求書か領収書を会社に発行しているはずです。
それは下記の4つのどれかに当てはまります。(業務委託費の報酬金額が50万円だとします。)

1、業務委託費50万円(税込) 合計50万円
2、業務委託費50万円(とくに税込とも税別とも書いてない) 合計50万円
3、業務委託費50万円(非課税) 合計50万円
4、業務委託費50万円+消費税10% 合計55万円

1か2の人が多いはずです。
3の人はまれです。このパターンで支払ってる会社はなかなかワイルドです。あなたは会社に「課税事業者になったんで、消費税払ってください。」って言えば会社はすんなり払ってくれるだろうし、あなたは少し儲かります。
4の人はうすうすインボイスの覚悟はできているでしょう。(やっぱりこの5万円は国に納めるものだったのか?!)

1と2の人に焦点をおいて話しをすると、「え?自分の価格って本体価格454,545円だったんだ。50万円じゃなかったんだ。会社からインボイスやってって言われたけど、インボイスすると消費税の45,455円って国に納めなきゃいけないの?年間545,460円も収入が減るってこと?しぬ!」

あなたはインボイスで年間54万5千円強失うと困りますよね?なのであなたはこういう選択に迫られます。

⚪︎インボイスしない。すなわち課税事業者にならない。(報酬50万円って約束したからきっと会社はいままでどおり50万円払ってくれるよね。って心のどこかで思っている。)
⚪︎個人事業開設届出して、インボイスして、青色申告して、65万円の所得控除して、いろいろ経費計上して、失う分をどこかで帳尻合わせなきゃ。ぎゃー。

会社はあなたが課税事業者にならないと、今まであなたに払っていた消費税4万5千円強が相殺されないので、会社は実質4万5千円強増税になります。
なので、会社側の心理としてはあなたが課税事業者にならないのであれば4万5千円強の消費税分を引いた額の45万4千円強に報酬を減額させて欲しいと思うようになります。

通常会社は非課税事業者に消費税は払う必要はないので、今まであなたに払っていた消費税は払わないという選択をします。

インボイスしなきゃ会社は報酬を減らしてくるのか。インボイスしたらしたで税金国に持っていかれるのか。そんなジレンマに揺さぶられます。

⚪︎もっと条件のいい職場を探すか、、、
⚪︎消費税分報酬をあげてくれと今の職場に懇願するか、、、(実際そんなことなかなかできないですよね。)

ここで「国」の登場です。

国は個人に、「まあまあ、そうなると思ってたよ。とりあえずさ、個人は会社の要望どおりに課税事業者になって、当面2%(にぱー)だけ納めてよ。とりあえず受け取った消費税10%じゃなくて向こう3年間は2%(にぱー)でいいから。だったら、いける?あなたの報酬税込50万だったら内消費税4万5千円強の2割(にわり)だから9千円強。だったらいけるっしょ?」

というのが2割特例(にわりとくれい)の措置です。

2割特例の措置は、消費税10%のうち2割すなわち報酬金額の2%を納めてくださいねというものです。
税込50万円の報酬なら本体価格45万4千円強の2%は9千円強なので、年に10万9千円強納税します。というか失います。困りますよね。大きいですよね。

国はついでにこうも言いたい、「ほんで青色申告しちゃってよ、いろいろお得だから。まあ白色申告でもいいけどインボイスあるから領収書とかちゃんと保管しとかないといけないから、結局やることは青も白もそんなに変わんないよ。」

青色申告か白色申告かはどちらかを強制するものではなく個人の判断に委ねるものですが、インボイスのせいできちんと申告しないといけなくなったんです。インボイスは裏を取る仕組みでもあるんです。ちなみにこのインボイスも強制ではないです。

だが国は個人のあなたから税金をとりたい、とりたい、とりたい。ここ数年でフリーランスという業務委託が増えて、会社は税金払ったけど国は徴収できていないという齟齬にしびれを切らしたのと、個人の細かい申告漏れの部分もいっさいがっさい徴収したいんです。

もうどうもこうも逃げられそうにないですね。

今回の事態ボクが個人だったらどうするかな。とりあえず会社の社長に今回のインボイスについて会社はどう考えているか一度打診しますね。
向こう見ずな反応だったり、はっきり考えを言わないような社長ならもっと条件のいい職場を探し始めます。
なぜなら、昨今の物価高やエネルギー価格の高騰などのインフレを鑑みても、個人の収入が減ることへの不安要素は何の為にもならない。
会社は個人よりも経費の削減やサービスの改善と価格の見直しといった、支出を抑えたり収入を確保する手段の幅は広いはず。
ちなみに会社であるボクは、業務委託契約である美容師の方には3%ほど報酬金額が増えるようにします。
もう2ヶ月後に始まろうとしているインボイス制度なのに未だに真相を理解できていない人が多いですよね。心の準備もお金の準備もできていないんです。
国は待ったなしです。3年間の2割特例が終わったら次は簡易課税制度になって消費税の50%持っていかれます。近い将来個人への取り立てはさらに厳しくなるのは明らかです。

ここから先は余談ですが、会社はインフレだからこそできることもあるのではないでしょうか?これを機にいままで惰性でやってきたいろいろなことを見直し、新たな価値を生み出すサービスを提供できるかもしれない。
個人のあなたも、美容師としてのあなたの価値を見つめ直すいい時期かもしれません。

令和9年分の申告から簡易課税になって、あなたの報酬の消費税の5割すなわち報酬額の5%を納税することになるのですが、これを補填するのに全て会社側に委ねることはできないでしょう。その時はきっと今みたいな売り手市場ではなくなっているでしょうし。かといって社員に戻りたいといっても普通雇用も手取りを確保するの難しいだろうから、、、

今のうちに実力をつけるしか無いですね。

実力をつけるとしたら。今のボクだったらどうするかな。実力のある現役オーナーサロンに直談判して「仕事が見たいので3ヶ月ただ働きさせてください。」って言ってみる。ヤス月給で長く働いてくれるならいいよって言われるかもしれないけど。そうなったら人生最大のバカンスとして謳歌するしかないですね。

自分をブラッシュアップするならリアルに仕事を見るのが一番だと思います。姿勢とスピードと刃先の感覚。この3つが何よりも重要だと思います。身体感覚は実際に近くで見て盗むのが一番手っ取り早い。

追伸:
インボイスのこともっと簡単に説明できると思っていたけど、ずいぶん長くなってしまいました。税金って大変ですね。💦💦
あと、きちんと業務委託契約書を交わすこと。業務委託契約書は法律上必要です。

消費税の2割特例と簡易課税は国税庁のホームページが一番わかりやすいです。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kaisei/202304/01.htm

最後までお付き合いくださり、ありがとうございました!
多くの人にシャアしていただければ幸いです。


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