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ラハイナへ、愛をこめて

はじめに。
このたびのラハイナの大火で亡くなられた方々のご冥福をお祈りし、被害に遭われた方々へお見舞いを申し上げます。
心から。


noteでは物語を書いてきましたが、今回は物語ではなく、できることなら物語であってほしかったラハイナの大火について、私のラハイナへの思いを書かせていただきます。

日本からの直行便がないマウイ島へはほとんどの方がホノルルからインターアイランド便の飛行機でマウイ島へ入られてきたと思います。
マウイ島上空に来て一番に目に入るのが白い風車だったのではないでしょうか。
尾根に並ぶ幾本もの風車は風力発電のためのもので、その光景を思い出し、今更ながらマウイ島は強い風の吹く島だったのだと再認識しています。

ハレアカラのツアーはとても人気で、私もそこで見るサンセットと星空が大好きで何度もツアーに参加したことがあります。
ハレアカラへ向かう途中、昔、サトウキビ畑や工場があったあたりは今も広大な野原で、この土地、何かに利用できそうだなと思っていたのです。
ホテル、ショッピングセンター、遊興施設とか。
でも現地の人に話を聞くと、風が強過ぎて産業を持って来れない、と言われたことがありました。
開発を阻んでいたのは風とは。
この時もマウイ島は強風に晒されている土地だと記憶に焼き付けたはずでした。

マウイ島をドライブしていて、ツーリストの私でも何度も山火事の生々しい焼け跡を目にしたことがありました。
でも焦げた山肌を間近に見てもどこか他人事で、そんなことは荒地で起こるものだと思い込んでいて、市街地で、しかもラハイナのような観光地には無縁のことだと決め込んでいました。

でも、火は古都を飲み込んだ。
強風と乾燥が続いた町に着いた火は止まることを知らず燃え盛った。

最初にその報道を見た時、映画なのかと思ったあの感覚は9.11の衝撃にも似ていました。

色々な情報を集めてみると、ラハイナの大火は突然発火して急激に広がり、炎は町を舐め尽くし、海まで到達してもう焼くものがなくなって消えた、という印象を受けました。
あまりの急襲に人々はなすすべもない。
着の身着のまま、命からがら逃げる。
逃げ場を失ったひとは海に飛び込む。
逃げ遅れたひともいる。
コロナ禍を経てようやく元の賑わいを取り戻しつつあった、美しくのどかな町は一瞬にして地獄絵図となったのです。

焦土となったラハイナの映像が思い起こさせたのは78年前のヒロシマ、ナガサキの景色でした。
それほどまでに変わり果てたラハイナ。

かつてハワイ王国の首都であったラハイナは捕鯨船の寄港地として栄えた町でした。
今のラハイナは海沿いのフロントストリートにはおしゃれなレストランやお店が立ち並び人気の観光地となった一方で、王国時代からの建物が残りハワイの歴史を伝える場所でいわば二刀流の町。
町のシンボルツリーである大きな大きなバニアンは王国時代に植えられ、古のラハイナと現代のラハイナを結ぶ象徴的存在となっていました。

その何もかもが燃えてしまったのです。

19世紀に感染病を封じ込めたとしてコロナ禍に注目された医師・ボールドウィンの住居や日本人に人気のパイオニアインの建物は跡形もありません。
ラハイナハーバーの向かいのラハイナオールドコートは屋根が焼け落ち外壁だけが残っていて、ここにたくさん展示されていた王国時代の貴重な資料は灰となりました。
カメハメハ三世の胸像があり、その名のついた小学校も瓦礫となりました。
その少し山手にあるワイオラ教会は炎に包まれている写真がこの大火の凄まじさを伝えるものとしてSNSに投稿されていました。
ワイオラ教会の建物のすぐそばにあるハワイ王国の王家の霊廟はどうなっているのでしょう。
カメハメハ大王の妻・ケオプオラニ妃やカウアイ島の賢王・カウムアリイの墓所です。
ここに眠る王族方はどんなに熱い思いをなさったのでしょう。
胸が痛みます。

この大火はラハイナの運命だったのか。
天災とはいえ、あまりにいたましい。

マウイ島にはカメハメハ大王によってハワイ諸島が統一されハワイ王国が建国される前からマウイの王家がありました。
どなたかがおっしゃっていましたが、危険な場所に首都は置かないはずです。
長く王家が治めてきた島なのでラハイナについてのデータがあったと思うのです。
ラハイナには過去にこのような天災はまったくなかったのか、または文字を持たなかったハワイアンは口承で歴史を伝えてきたので埋もれてしまったのか。

ラハイナ。
「残酷な太陽」という意味を持つハワイ語の地名。
響きも明るいこの地名からは雨の町のイメージは沸かず、晴天率の高い場所であることをうかがわせます。
観光地や人が住んでいる場所以外では樹木も少なく、山肌が剥き出しの場所も目立ちます。
風の島、マウイ。
太陽の照りつける町、ラハイナ。
様々な条件が折悪しく重なった2023年8月9日。

コロナは1000日かけても美しい町を奪うことはなかったけれど、たった1日でラハイナを消滅させた大火。

今回の「失われたラハイナ」も歴史のひとつとなり、記憶の中のラハイナの景色と似た町が再現されるのか、全く新しいラハイナとなるのか、いずれにしても長い年月が必要となるでしょう。

ラハイナのために、私たちに何ができるのか。
それぞれの方法でラハイナを支援して、復興を待つ。

街並みは変わってもその空と海はそのまま。
愛してやまぬ、マウイ島。
思い出いっぱいのラハイナ。
今回の大火を教訓として、災害に強い町に生まれ変われ、ラハイナ!
立ち上がれ、ラハイナ!!
きっと。


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