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愚か者の火

愚か者の火


大地はその閃光を記憶していた...

何も語らずにその光景をフラッシュバックのように見せてくる...

鼓動を狂わせるその衝撃とともに、眩暈の中に砕けた惨劇が言葉を切り裂いてゆく...灰に埋もれた意識のなかで、汚れた血は乾いた瓦礫となって積み上がってゆくような気配を漂わせている。

意識の萌芽を焼き払うかのような爆風のなかで、光でもなく闇でもなく、うす暗い砂塵とともに堆積してゆく記憶の残骸が、身体に突き刺さってゆく幻影をちらつかせてくる...私たちはこの大地の上で何をしてきたのか...

いのちを育む土ひとつ創れずに、サピエンスと呼ぶ愚か者...偽りの火に未来は微笑むことはない...

この石は私にそう語った...屍を貪りながら…私たちは誇れる歴史など語れはしない...

プロメテウスが与えた火はひとつだけだったのだろうか...

フラッシュバックの惨劇に身をかがめ、閃光を背に受け僅かに開けた目に映った私の影...愚かさを焼き尽くす智慧の火は、私たちのなかには無いのだろうか...それを探さなければならないのかもしれない...

記憶の暗い砂塵に咽ながら言葉はまだ声にならず、砂塵は言葉からいのちの水を奪い取ってゆく...言葉を発するには、まだ悲しみの涙を注がなければならないのだろうか...滅ぼさなければならないのは自身の愚かさなのかもしれない...大地の記憶が語らずも見せたものは、閃光が映し出す私たちの愚かさだった...

身体に突き刺さった記憶の残骸は、軛となって私を大地に繋ぎとめてゆく...この軛を解けるのは祈りの力しかないのかもしれない...








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