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「と、ご夫婦」のお店

先日、熊本旅に行ってきた。
去年も行った熊本。阿蘇の広大な自然、熊本の優しい空気に魅了されてしまって、まだまだほんの一部しか知らないけど、すでに熊本ファンの気分。

お昼ごはんがひと段落し、さて食後の珈琲でも飲みたいなと思っていたところ。
noteでもたまに書いているんだけど、何を隠そう私は大の珈琲好きなのです。旅に行くと、必ず現地でどこか喫茶店に寄りたい。

私ね、ほんっっっとにクジ運はないんだけど(倍率低いクジすら当たらん)、旅運は素晴らしくあるみたいで。
いつもグーグルマップでふわ~っと周辺のお店をみて、直感で「なんかよさそう」と思ったところにふらっと寄ることが多い。すると結構な確率でいいお店を引き当てる。

今回もそんな感じで直感的に決めたお店。阿蘇にある、「珈琲と紅茶 瑞季」。
今日はそのお店のお話。

さっそく車で向かうと、さっきまで市街地にいたのにちょっとした森に入っていく。
え、着くよね、これ?と不安を抱えつつ、こういうスリルに半分はワクワクしている。

しばらく進むと、なんだか別荘みたいな建物がたくさんある通りに出た。
奥へと進んでいくと、そのうちのひとつに「珈琲と紅茶 瑞季」の看板を見つけた。
たまにある、おうちでお店やってますみたいな感じの外観だ。

扉を開けると、奥さんらしき人が笑顔で出迎えてくれる。奥のキッチンにはご主人らしき人。
「ご予約は?あら、ない。でもねラッキーよ、ちょうど窓際の席がたった今開いたんです~!いつもならご予約ないとほとんどお断わりするのよ、よかったわあ!だってこの前も30組くらいお断わりしたの、本当に申し訳なくってねえ。」

しょっぱなから奥さんのマシンガントークをいただいた。
ちょっと圧倒されながらも、めっちゃ人気店だったということと、とりあえず入れてもらえるという事実をなんとか理解して席に座らせてもらう。

奥さんがメニューを持ってきてくれる。さて開いてじっくり選ぼうかと思った矢先、
「珈琲ってね、いろんな種類のものがあるんですけど、うちはその中でもスペシャリティコーヒーっていうものだけを取り扱っているんです。この三角形の頂点に近いところね。…
そしてね、私実は紅茶に関する資格を持ってまして、もうねオススメだけを取り扱ってるんですよ。これはね、とっても香りがいいのにさっぱりしていてね、…」

書ききれない。もう文章にできないほどの情報量を一気にもたらしてくれる奥さん。
好きなものを語ってくれる人の姿って、本当に輝いていて好き。こっちまで幸せな気分になる。

「ちょっと香り嗅いでみます?ぜひ体験して決めてもらいたいの。」

いいんですか。ではぜひ。
えええ、なにこれ…!イチゴみたいな甘い香り。
こっちはまた全然違う。でも全部上品だな。

「スイーツもこだわってましてね、全てベーキングパウダーは使わずに焼いているんです。あの奥の暖炉でね。…」

うん、さっきから思ってた。とっても素敵な暖炉だなあって。

「ゆっくり決めてくださいね。悩んだら相談ものりますから。」

これだけ聞いてしまうと、もう全部魅力的で、逆にまったく絞れないんですけどどうしたらいいですか。
よく言うけどさ、旅のときだけ胃とお金の許容量が5倍くらいになればいいのにね。

存分に悩んで、いつもなら珈琲にするんだけど、奥さんが紅茶に詳しいならと今回は紅茶をチョイスする。香りを嗅がせてもらったとき、いちばん印象的だったものにした。

ワクワクしながら数分待っていると、紅茶とスイーツがきた(結局決めきれず、ちょっと贅沢をしてスイーツは盛り合わせを頼んだ。お腹はお昼ご飯で満腹)。
ここからまた奥さんのマシンガン説明トークがはじける。目の前に揃っている喫茶たち、私は「待て」をされているわんこの気分だ。くうううん…

要約すると、瑞季ではスコーンが一番人気らしい。本場イギリスでは定番のクロテッドクリームを使うお店は、日本ではあまりないんだって。たしかに存在は知っているけど食べたことはない。
紅茶はたっぷり3杯分あるから、紅茶のために用意されたミルクや阿蘇のきび砂糖を使って味を変えて楽しんでね、って。

聞いたとおり、まずは半分に割ったスコーンにクロテッドクリームと薔薇のジャムをのせて一口食べてみる。

…えええ!!なにこれ…うますぎいいいいい!!!

それはそれはもう衝撃が走りましてね。
スコーンの食感、風味、クロテッドクリームとジャムとの相性、…。
というか、もうそんな理屈だけではなくて、こだわって上質につくられているのが、目で、舌で、手で、わかる。

これは紅茶や他のスイーツでも同じで、本当に大切に大切につくられて出してもらっているのが伝わる。あたたかい。

喫茶を堪能する時間を与えてもらいつつ、奥さんがまた話しに来てくれる。

「クロテッドクリーム、おかわりいります?遠慮しなくていいのよ、ちょっと待ってね~。」

こんな美味しいもの、おかわりしちゃっていいんですか。のせるスコーンほとんど残ってへんけども。

「美味しい?それならよかったわあ。…ごめんなさいね、喋りすぎよねえ。私昔は神戸でアナウンサーしてたのよ~。」

解決。だからか、こんなにお話し好きなんは。

思わずふふっと笑ってしまった。

「夫婦で阿蘇に来たときに、もう阿蘇の魅力にハマりこんでしまってね。阿蘇ってお水がきれいでしょう。珈琲や紅茶を最高に美味しく淹れられるのよ。…
あ、ちなみにね、このあたりのお宅、みんな移住者なんですよ。全国各地、いろんなところから来てるわ。…」

うっわあ、移住したい~~!!

それからもたくさんお話しをしてくれた。
人が好きなんだろうな。本当に楽しそうに話し続けてくれる。
そして奥のキッチンではご主人が微笑みながら見守っている。普段からこんな仲のご夫婦なんだろうな。

次々にお客さんがやってきたけど、やっぱりみなさん予約した人たちだった。しかもほとんどの人がリピーター客のようで、「お久しぶりです~!」という奥さんの声が何度も響いていた。

そりゃあ、ここ知っちゃうとリピートせずにはいられないよなあ。
こんなに満たされる喫茶店はそうそうない。


ここは「珈琲と紅茶 瑞季」。
でも私は「珈琲と紅茶とご夫婦 瑞季」と心の中で名付けたい。



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