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【子ども】自分の意見を言える子に育てるために③シュタイナーに学んだこと

普段何気なくやっていることを意識化してまとめる、ということをしてきた(今までの記事はこちら→)。今回は、シュタイナーの考え方とも照らし合わせてみたい。

そもそもの立ち位置

ここ数年でやっと気づいたのが、子どもの意見を引き出そうと思ったら、そもそもの「大人」としての立ち位置がとても重要だということ。言葉を選ばずに言ってしまえば、「上から目線ではダメ」ということ。

小学校教員をしていた頃、私は逆に「上から目線」でいることを頑張っていたと思う。子どもの上に立って、リーダーシップを発揮しなくっちゃ。シュタイナーも権威が大事って言ってるし!って。

それに、実際に、学級崩壊するクラスをいくつも見ていて、自分もそうなるかもしれないと恐れていたし、突拍子もない意見が出てくると45分以内に終われなくなるのはわかっている。だから、誘導もする、正解も示す、褒めたり叱ったりして、クラスをコントロールする。

案の定、「正解」じゃない子は積極的にはしゃべらなくなるし、考えるのをやめるし、成績アップを狙う子だけがどんどん頑張る。「正しい子」が認められるので、外見としては落ち着いたクラスってことにはなるんだけど。

今振り返ってみると、おもしろみに欠けるなあと思う。もっとユーモアや笑いが溢れていても良かったのに。ずっと黙っていたあの子、絶対おもしろいのに。

先生の立ち位置ひとつで、子どもの素の意見が出るかどうかは変わってくる。上から目線で「ほら、正解を出してみろ」では、自信がないとチャレンジなんかできないけれど、同じ立ち位置で「どんな考えが浮かんだか、教えて欲しいな」だったら言えるんじゃないかな。

だいたい、シュタイナーの言う「権威」は「権力を振りかざせ」ってことでは断じてない。威厳とも違う。これも、最近ようやく意味をつかめた。子どもが心の底から「この人の言う通りにしたいなあ」と感じる人であること。それは、立ち居振る舞いだったり声の出し方だったり、目の奥の光だったり生き方そのものだったりする。


代わりに言う

なかなか自分の気持ちや意見を言えない子の場合、私が代わりに言うこともある。その子のことを観察しておいて、おそらくこう思っているのだろうと予想して、「~かな?」とか「~って思ってる?」とか。

例えば、「本当は、友達を傷つけるつもりなんか、なかったんでしょ?」とか。感情的になっていて自分では言語化できない、自分で言うと言い訳っぽくて言えない、そんなときには代弁者が言葉にしてくれると安心。

もちろん、子どもの方から「違うわ!」って返ってくることもある。でも、本当に「違う」のか「その通り」なのかは、普段の様子を見ていたらなんとなくわかる。子どもが言い返してきた言葉に反応して私が言い返すと、別の問題が浮上するだけなので(子ども同士のトラブルを解決したかったはずなのに、子どもと先生の言い合いが勃発する・・・あるある)、「(違うわって言わせて)ごめん」で無駄な言い合いはさっさと終わらせて、「私にはそう思えたから。勝手なこと言ってごめんね」って。


自我を貸してあげる

シュタイナーに倣うなら、中学生は、感情や感覚がまだ不完全で、自己コントロールが効かなくなることがある。感情に身体や生命力までが振り回されて、起き上がれない、食べられない、眠れないなんてことも往々にしてある。命を絶つ、誰かに牙をむくという、極端な選択をすることもあり得る。

そんな、自分では手に負えなくなってしまった激情を自己コントロールするには、大人の自我を貸してあげること。言語化して理解を助けたり、温かく包み込んで回復させたり、背中で道しるべを示したり、いろんな方法があるだろう。すぐ隣にいる大人だけでなく、憧れの人の自我に引き寄せられ、それが自己コンクールの力になることもあるだろう。

シュタイナーの著作では「大人の自我を使う」という表現が使われていて、それを、今の私は「大人の自我を貸してあげる」というイメージをもって理解している。「こうしなさい」と自我を押し付けてしまうのではなく、寄り添って一緒に成長しようとすること。そして、本人の力を引き出せたらそっと離れること。


成長とともに変わるもの

3回にわたって、私が普段何気なくしていることを記事にまとめてきた。こうやって言葉にした瞬間から、もう、これまでやってきたことは過去のものになっていく。子どもと真剣に向き合って、話し合って、また成長させてもらったら、ここに書いてきた諸々を「えーっ!それは間違いでしょ・・・」って思う日が来るのかもしれない。理解の仕方も、概念も、言葉の使い方も、私の内面が成長すると共に成長し、変化していくもの。数年後、その変化をまた楽しめたらいいなと思う。

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えりか先生。神戸シュタイナーハウスでは、子どもクラスを担当。
小学校教員を経て、現在は放課後等デイサービスで障害児支援にあたりつつ、神戸・京都において日曜クラスの先生としても活躍中。
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