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My running version3.2の適用



2020年春、東京都千代田区は東神田にあるトレイルランニング・ランニング専門店であるRunboys!Rungirls!のチーム「ランボーズ」の門を叩き、コーチである村田諒選手のトレーニング理論を経験した。彼の考えは本当にロジカルで、自分の走力が着実に向上していくことを実感する1年を過ごした。

その中で、漠然と「もっと強く、速く走りたい」と思うようになり、意気込んでハードなトレーニングを詰め込んだ結果、昨年末から2ヶ月の故障(後脛骨筋腱炎)へ。

故障中、リハビリやトレーニング方法についてSNS、ブログを読み漁る中で、ランボーのアスリートブログ、オショーさんの「刺激はループする!」に出会った。

全てはここから始まったと思う。オショーさんから“勝手に”貰い受けた刺激が自分を駆動している。


自分だって上を目指したっていい。
自分にだってやれるはずだ。

矢崎智也さんから放たれた刺激は、オショーさんを経由し、間違いなく自分へループしている。
目標を「2024年に国内ビッグレースで自分史上最高の走りをかます」と設定して、それに向けたベースアップのためのトレーニングを中心に、1年を過ごしている。

日頃から、有名選手のSNSやStravaを拝見し、強くて速い選手のトレーニングにアンテナを張って過ごしているが、その中で発見したことを、何度か自分自身のランニングに組み込む作業を行っている。

私事だけど、普段は住民系サービスのシステム担当をしていて、使用するパッケージに更新版ソフトがリリースされれば、検証して適用作業を行う。

最近、このアップデートの流れはランニングと同じだなぁと感じるようになった。つまり、

①強い選手達のトレーニングから共通部分を抽出する。
②共通部分が自分の環境で運用できるか検証する。
③動確後、アップデート版として自分に適用する。

こんな流れ。これを繰り返してトレーニングを最適化し、継続して積んでいくことが、強く速くなるための近道のような気がしている。

今年に入って、自分のランニングに対して行ったアップデートについて、自身の備忘録として記録する。

◯適用したVersionについて

①Version1.0(2020年1-12月)
昨年までの自分。パッケージである。ランボーズのサブスリーチームに入り、5000mのタイム向上を目標に高強度のポイント練に取り組み、結果として1年間で5000mのタイムが18'24→16'28と大幅更新した。年末のフルマラソンではDNFと課題は残るものの、基本的な走力が大幅に向上した。

②Version2.0(2020年12月末-2021年1月)
2021年UTMFに向け適用させたバージョンだったが、自身の能力を過大評価していたことが原因で、負荷テストを行わずに適用させてしまい、適用直後にエラー(故障)が発出。故障からの回復工程で気付き学んだ「強度のグラデーション」は、今でも定期的に振り返りながら取り組んでいる。


③Version3.0(2021年3月-6月)
これはメジャーアップデートだった。エラー(故障)を避けつつ、長期的に強く速くなるためのベースアップのために、リディアードのランニング・バイブル(アーサー・リディアード著)を読み込み、彼の理論を取り入れ、強度を落とした有酸素運動を中心としたトレーニングに移行した。
レースペースでのインターバルは行わずに3ヶ月を過ごし、効果測定として臨んだ6月の5000TTでは、16'28→16'18と予想外のPB更新。努力度の低いトレーニングと有酸素運動のメリットについては、以前詳しく記録したので、もし良ければそちらへ。このバージョンは今でも現役稼働中である。

④Version3.1(2021年6月-)
このnoteで触れるのはこのバージョン以降。
6月に入り、週に1度「坂練」を始めた。
これは、JR田中さん(田中裕康選手)が週に1度行なっている「Gekizaka」に対するオマージュであり、田中選手と、その周りの練習仲間である強い選手達へのリスペクトから生まれたメニューでもある。

[坂練の詳細]
家の周りにある坂、階段をつないで作ったループコースを2周走る。だいたい90分で15km500m+Dになる。
各レグ1-2本で回すが、全レグ2本で回すと650m+Dくらいになる。
ログの獲得標高に快感を見出すための練習ではなく、あくまで走力向上のためのキツいメニュー。坂は8割くらいの力で走り、坂をつなぐジョグもテンポ良く速いペースで。立ち止まることはなく、全体的に快調走といったイメージ。そして終盤にはヒルスプリント。「滝坂」という200mで30m+Dほどの "Gekizaka"があり、毎週TTを行なっている。

近くにお住まいのランナーさんと、ランニング談義に花を咲かせながら、朝4:30からゼェハァしている。最近は日の出前でほとんど真っ暗。1人では到底やりきれるメニューではなく、仲間がいることにとても感謝している。

坂練を始めた当初、バージョン適用の狙いはぼんやりとしていて、「強い選手がみんなやっていて、自分は週末に山に行くことができないので、坂練はやるべきだ」くらいにしか捉えていなかった。しかし、2.3ヶ月ほど継続していくと、明確に以下のような違いを感じるようになってきた。

①傾斜に対する余裕度の向上
②スプリント力の向上
③脚の筋力の向上

①は、久しぶりに奥武蔵グリーンラインでの峠走に行った時や、トレイルに入った時に感じたことである。プッシュして走っているわけではないのに、以前と比較して弱い出力で登りを走り続けられるようになっていた。実際に、ストラバのセグメントで見ると、プッシュしたわけではないのに、ほとんどの区間でPBを更新していた。

(奥武蔵グリーンライン。朝の木漏れ日が気持ち良い。)

②、③は同じかもしれないが、まず滝坂TTでのPBを更新し続けていることだ。約200mの坂道スプリントだが、当初より3秒縮めている。特に、後半傾斜がキツくなるパートでの減速幅が少なくなっていると感じる。
それに、脚が全体的に太くなった。久しぶりにスキニーを履いたら腿がパンパンになっていることで気が付いた。妻にも「脚太くなったね」と言われるくらいだから間違いないだろう。

坂練の効果を最も感じたのは以下の2回の練習。
1つ目は、9月頭にチーム練で行った"高尾トライデント"。(少し短縮版)

林道、ロード中心の走れる3本のコースを往復するものだが、どの傾斜でも余裕度が高く、良いペースで走り続けることができた。一緒に走ったメンバーは村田コーチをはじめ、ロングレースで常に上位に入る方であり、そういうレベルの選手達と並んでも余裕度高く走り続けられるようになっていることに驚いた。(もちろん、坂練だけでなくトレーニング全体が走力を向上させているとは思う)
また、この日にコーチから「走り方が変わった」と言われた。意識していたわけではないが、腿からよく動いてるように見えたとのことで、これはおそらく坂練の効果で、股関節の可動域が広がったためだと考えている。

(小下沢林道。川沿いで涼しく夏も走りやすい。)

2つ目は、多くの大会で入賞している同い年のエース選手と2人で奥多摩のトレイルに入った時。瀬音の湯を起点に30km2200m+Dのパンチあるコース。

トレイルでのトレーニングは皆無だったが、大岳山の900mUPの急登でも置いていかれることなく動き続けることができた。ロードでの坂練を継続することが、基本の走力向上はもちろん、トレイルに活きるのは間違いないと思うので、坂練はこれからも重要なルーティンとして継続していく。

(久しぶりのトレイルは最高に気持ち良かった。)

⑤Version3.2(2021.9月-)
最新のアップデートは「ジョグのペースアップ」
適用を決めたのは、周りの強いランナーの普段のジョグを調べてみると、平均で約4'30/kmと、やはりみんな速かったからである。速く走ってるのではなく、余裕のあるペースが速いのだろうということは明白だ。
だが、これを知って単純に「自分も同じように速く走ろう」とするのは短絡的で賢くない。「ジョグを速く走ること」の明確なメリットが欲しい、と思っていたところ、RunnersPulseのCOLUMNにて、最近巷で話題の"健ちゃん練"の部長である松永健士さんのインタビュー記事に出会った。松永さんは記事で以下のように話されており、これが1番の決め手になった。(とても参考になるのでぜひリンクより全文を読んでみてください。)

前はキロ6分ぐらいのペースでジョグをしていたのです、吉田祐也選手と会って話をした時、ジョグについて聞いたんです。すると、ジョグは、レースペースの45秒から1分落としのペースで行う。理由は、ペースが遅ければ接地時間が長くなって逆に調子を落としてしまうからということでした。リカバリージョグもペースを落とさず、距離で調整していると教えてくれました。それから僕もペースの速いジョグに切り替えました。効果はありますね。健ちゃん練の朝とか速いペースのジョグをいれておくと夜のポイントがスムーズにできますし、ベースが上がってケガもしなくなりました。

【引用:RunnersPulse COLUMN「第11回 松永健士(市民ランナー) 健ちゃん練メソッド。-サブエガ達成-」)】

吉田選手と言えば、青学で箱根4区を走り総合優勝したメンバー。GMO所属で、2020年福岡国際マラソンを2時間7分5秒で優勝した、言わずと知れたトップランナーだ。私も吉田選手のnoteを読んでいるけれど、これがとても面白い。

Version3.2適用前のジョグは5'00-5'30/kmくらいを考えていたが、自分のマラソンレースペース(目標)から計算すると4'40-4'55/kmとなる。正直速いし続けられるか不安もあったが、前述の記事から適用を決めた。

適用してからは、平均して4'30-4'40/kmとなるように日々のジョグを行なっている。不思議なことに最初はペースを意識して頑張って走っていたはずの4'30/kmの速度が、続けていくうちに心地良くなり、余裕度が高まって、少し力を入れて走ればすぐサブスリーペース(4'15/km)になる。ジョグもEペースも底上げされている感覚がある。言語化するのがまだ難しいけれど「調子が良い」。
また、運動時間が同じ場合、ペースが上がるので走行距離が伸びて有酸素運動全体のボリュームが上がっている(400km/月)。ここは慎重に、故障に注意しなければならない点だが、これも強く速く走るための脚作りにつなげていくための要素の一つになるのかもしれない。

◯Version3.1と3.2の効果検証

効果検証として設定したのはヤビツ峠走5000m
まずはヤビツについて。

※ヤビツ峠走…神奈川県秦野市の国道246と県道70号線のぶつかる名古木交差点のセブンイレブン横からヤビツ峠までの11.5km 670m+Dの坂道を走る。


記録:52'33PB(前回56'21)

StravaでTOP10に入ることができた。(すぐに上田瑠偉選手がダントツ1位の記録で走り早々にランク圏外に…)
これは我ながら高く評価できると思う。ただ、目標はsub52分だったので、目標未達で個人的には悔しい結果。入りが速すぎて後半何度か歩いてしまったので、これがレースなら大失敗。でも、レースと同じくらいに、準備して、気持ちを構えて臨んだからこその失敗でもあり、良い経験になったとポジティブに捉えている。

(次こそはsub52を達成したい)

次に5000m。
10/23に舎人公園陸上競技場で行われた5000m記録会に参加。持ちタイム16'18の自分としてはかなり背伸びして15'50を目標にエントリー。初めて最終組に入った。
(トラックレースは目標タイムごとに組分けが行われる。最終組はその日の最速グループ。)

記録:15'51PB

23人中16位と残念な順位だが、PBを大幅更新し、目標としていたbreaking16を達成、会心の出来だった。

グループで圧倒的下位のためにアウトレーンからのスタート。集団内でペーサーを見つけることができず、集団内を前後しながらウロウロし、序盤はタイムオーバー。自力でいく覚悟を決めてからは腕時計とにらめっこしながら刻み続けた。やっとのことで見つけたペーサーは3000mで離脱、そこからは後続の風除けに使われる厳しい展開だったが、崩れることなく安定した展開で終えることができた。





ヤビツは前回実施が去年7月なので比較が難しい部分もあるが、傾斜への余裕度を思えば坂練の効果が感じられる。5000mに関しては、前回実施の6月からの変更点はVersion3.1と3.2の適用であり、この2つが大きく作用していると言っていい。
もちろん3.0は継続している。3.0のメリットは故障のリスクが少ないことだろう。6月から3ヶ月間、故障せずに良いボリュームのトレーニングを積み続けられたことが、2つの効果検証に表れていると考えていいはずだ。

◯今後

次の目標は年末のフルマラソン(beyond)。
昨年は人生初のDNFをした悔しいレース。ここで勝ちたくてこの1年やってきたと言っても過言ではない。
スピード期からマラソン期へと移行するが、去年は脚に違和感を残したまま移行し、休むタイミングを取れぬままレース当日を迎えてしまった。今年は、万全の状態でトレーニングするために、思い切って長めのレストを入れて疲労や節々の痛みを取ることにまずは専念しようと思う。身体が回復してから、マラソン期に移行したい。
マラソントレーニングはベースアップのために最も有効だと考えていて、その後に控えるUTMF2022に向けても間違いなくプラスになるはず。
無理はせず、故障に気をつけながら、引き続き淡々と積み上げていきたい。

stay tuned.

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