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先住民比率No.1、メキシコの田舎・オアハカ州のビジネス事情

メキシコの地方、南部に位置するオアハカ州でJICA海外協力隊として産業開発支援を行っている井戸です!
本日はメキシコの地方のビジネス事情についてお話しできたらと思います。

オアハカ州はメキシコでもっとも先住民族の比率が高いといわれる州で、人口の約4割がサポテカ、ミステカといった先住民族で、彼らが受け継ぐ文化や伝統がオアハカ州の最大の魅力です。
毎年7月にはオアハカ州全土から先住民族が集まり、伝統的な舞踏を披露し合うゲラゲッツァ祭があり、彼らの独特な伝統文化を見ようと国内外から多くの人が集まります。

オアハカ州内の先住民族が集結するゲラゲッツァ祭

伝統的なオアハカのビジネス

そんな、オアハカ州のビジネスはというと、昔から続くトウモロコシの栽培、メスカルの生産や織物・刺繍などの民芸品制作に携わる人が多くを占めています。

オアハカ州の民芸品たち

そして、その多くが個人事業主であり、中小企業の割合がかなり低いのも特徴です。
また、外資企業の誘致もほとんどなく、2019年の外国直接投資額は57.4百万ドル※1とメキシコ内で2番目に少なくなっています。
その結果、オアハカ州は小規模で低効率な生産や安定した雇用が少なさといった課題を抱えており、低所得者(平均月収約5.6万円)の比率がメキシコ内で3番目に多いというのが現状です。

低所得層の州別世帯構成比(2020年)※2

稼ぎが少ない=貧しいなのか?

オアハカ州は低所得者の比率が多いとお話ししましたが、実際に生活が苦しいのか?と言うと、そうでもなさそう。

先日、とある先住民族の村に行った時の話ですが、織物の生産を家業にする家庭に訪問した際、織物は月に1枚売れるかどうか、つまり収入は月1~5万円あるかどうか。
他の収入はあるのか聞いたところ、ないとのこと。
「じゃあ、どうやって生きてるの?」と思いますよね。
私も気になって聞いてみたところ、
「畑があって、そこでいくつかの自分達が食べるものを栽培している。あとは、コミュニティでの物々交換かな。織物や多くできた作物を他のものと交換するんだよ。」
と。正直、驚きました。
彼らは、自給自足、コミュニティ内のお金を返さない取引で生活していたのです。

つまり、稼ぎの量でいったら貧しいのかもしれないけど、彼らはお金がそんなになくても生きていける暮らしをしていたのです。
そのため、”もっと稼ごう”といった考えはあまりなく。
敷物を1つでも多く売ろうではなく、伝統として残る祭りの準備に時間を使うことを優先するし、安定的な収入のためにと政府が後押している外資系企業の誘致も自然や文化を破壊することに繋がると反対のデモ運動が起きているそうで、人とのつながりや自然・文化の維持を何よりも大切にしているんだなと思います。

お金と人とのつながり、自然、文化について考える

ただ、本当に稼がなくてもいいのかと言うと、近頃はそうでもなく。
村にもお金を使って買わなくてはいけない大事なもの“水”があります。
水は今まで自然から手に入れられたものもですが、最近はオアハカ州でも水不足・干ばつが深刻で買わなくてはいけない状況にあります。
しかし、この水が全土で不足しているため価格が高騰し、収入が少ない村の人たちが水を手に入れられないという状況に陥っています。

・必要なものは自分たちで自給自足、コミュニティのつながりの中で交換する
・お金を稼ぐことに捉われず、文化や風習を大切にする

これは、とても素敵なことだと思いますが、生きるのに必需であるものが不足すると機能しなくなってしまう。
お金がないことは、やはり生きる上での脆弱性になってしまうのです。

じゃあ、やっぱりお金が大事だからガンガン稼げるようにしよう!が正解なのか。というと、本当かなと思う自分がいます。
というのも、稼ぐことを重視してきた日本では、
・ワークライフバランスを維持できない過度な労働環境
・人とのつながりの希薄化
・文化継承の担い手不足
など現在多くの問題が発生していますよね。
お金を稼ぐのは際限ないから、時間も資源も全てをかけて稼ぐことに集中してしまった結果が今の日本なのだと思っています。

私は日本人としてこの学びがあるからこそ、オアハカ州の産業開発支援では、あくまで人とのつながりや自然・文化を守りながら生活を維持するためのお金を"程よく稼ぐ”という部分を手助けしていくのが使命なのかなと考えています。

何が理想の形なのか今はまだ分かりませんが、
2年間の活動の中で、オアハカ州の人たちとより良い形を作っていけたらと思います!

参考
※1 国際協力銀行・メキシコの投資環境
https://www.jbic.go.jp/ja/information/investment/image/inv_mexico24.pdf
※2 JETRO「パンデミックで中間層627万人減 国民6割超が低所得層に(メキシコ)」
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2021/34629c88c344e784.html



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