やりがい -不登校支援のボランティアでのある日-
残暑の日差しで目がチカチカする午後13時。
所々田んぼが見える田舎道。
「雨が上がってよかったぁ。」と思いながら、サドルに傷が入ったママチャリを走らせる。
普段木曜日に中学校に行かないのだが、不登校の女の子が学校に来るから相手をしてほしいとのことだった。
学校に到着し、指定された教室へ。
しかし、約束の時間になっても生徒は来ない。
「まだ来てないですね、すみません。」学校の先生はオロオロ。
「今日も来ないかもなぁ。」
そう思った時に「○○ちゃん来ました!」との声。
玄関口まで迎えに行くと、送りの車の中でパニック状態。
「○○ちゃん行こう」「塗り絵を一緒にしよう!」学校の先生と私、親御さん一丸となって声をかける。
しばらくその状態が続いた後、やっと学校の中に入る気になって動き出す。
「何をする?」と声を掛けると「塗り絵をしたい!」とのこと。
リュックサックから塗り絵帳と色鉛筆をサッと取りだした。
時が止まったような静寂な時間。
この世に2人だけしかいないような誰も入ることができない世界。
その空間で1つの色鮮やかな作品を作り出す。
「おぉー、完成したね」
どうやら異世界から戻ってきたようだ。
私たちはほとんどを異世界の中で過ごしたが、最後は少しだけ勉強をした。
生徒は大好きな塗り絵をしたことで勉強をする気になったようだった。
時間はあっという間に過ぎ、気づけばお迎えの時間。
先生と2人でその子を見送った。
そして、最後に先生はこう言った。
「去年、全然来なくて家庭訪問という状態だったんだけど今年は少しずつ来れるようになってね。以前「お姉さんと勉強したい」と家で話してたみたいだから、お母さんも期待してるみたいでね。樋口さんいつもありがとうございます。」
どこかで優しい風が吹いたような気がした。
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