映画『神様メール』
2015年/製作国:フランス、ベルギー/上映時間:115分
原題 Le tout nouveau testament 英題 THE BRAND NEW TESTAMENT
監督 ジャコ・ヴァン・ドルマル
予告編(日本語)
予告編(海外版)
STORY
神様は実在する。
だがその神様はベルギーのブリュッセルに住んでいて、中年男性の姿をしており、女神である妻や娘のエアに対しては、いつも高圧的な態度にて接しているような存在であった……
さらにはパソコンを使用して世界を支配し、暇つぶしに「不幸の法則」を作って人間たちを日々虐めて、楽しんでいる。
3LDKのアパートから一歩も出してもらえずに、酷い父親(神様)と10年間暮らしてきたエアはある日、父親(神様)のパソコンから人々へ、その余命を知らせるメールを送信する。
エアは人々に「運命に縛られずに自由に生きてほしい」と考え、メールを送信したのだ。
しかしエアの願いとは裏腹に、人間界は大混乱に陥ってしまう。
見かねたエアは、兄のJC(イエス・キリスト)のアドバイスを受け、下界(人間界)へと舞い降りてゆく。
そして、余命を知っても何をして良いかわからない人々と交流し、小さな奇跡を起こしてゆく。
レビュー
原題は『新・新約聖書』。
作品が始まって少しすると、神様の娘エア(主人公)がとある理由にて怒り、神様のPCを使用して人間たちへ余命を知らせるメールを送信してしまいます(その後「新・新約聖書」を作るために6人の使徒を探しに下界へと家出)。
そのようなわけで、スマホや携帯電話を所持している人々は神様メールを受信することとなり、多くの人が自分の明確な死期を知ることとなってしまい、世の中が「総メメントモリ状態」に陥ります。
はたして自分の死期を知ってしまった人間たちはどうなってしまうのか⁉というお話。
※物語は使徒6人とエアの交流が中心
ファンタジー×ブラックジョーク×ラブコメという感じで、とりわけ神や聖書に対するブラックなツッコミが満載。
また神様を、一人の酷い人間(人間の酷い部分の象徴)として描くことにより、キリスト教や他の一神教、並びに人間の暗部をも滅多斬りにしてゆきます。
その描写は知的且つ的を射ているため思わず笑ってしまいますし、メタファーの表現も豊かで面白過ぎます。
しかしながらよくあるコメディ作品とは一線を画しており、死の香りが通奏低音のように心地良く流れる、会話中心の、シットリと落ち着いた趣を醸しているのが白眉です。
しかも展開が明るいので、観ていて全く暗い気持ちにはならないというオマケ付き。
エアの出合う6人の使徒達はそれぞれに個性的で、自らの死期を知り変化してゆく彼らの日常生活は、とても興味深いものとなっています。
ちなみに使徒達の場面にはそれぞれ「テーマ曲」が付与されているのですけれども(ネタバレとなってしまうため詳しくは記しませんけれども)、鑑賞者の裏をかくような楽しい選曲がなされており「この人はどんな曲なのだろう」とワクワクさせてくれます。
一つひとつの場面が丁寧で美しく、素敵でした。
鑑賞後調べてみたところ、本作の監督は『トト・ザ・ヒーロー』や『八日目』を撮ったジャコ・ヴァン・ドルマル監督であると知り、とても納得。
兎にも角にも内容の濃い、語りだすと止まらなくなってしまう類の素晴らしい作品で、ラストも爽やかに、ほんのり優しさを奏でて、観る者の心を充たします。