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“うちで踊ろう”を聴いたら胸が締め付けられるようになった。

コロナ流行の自粛期間中、星野源さんの“うちで踊ろう”が話題になってから早3ヶ月。

夫の転勤を機に仕事を辞めて引っ越しもして、ひと月くらいはゆっくり新しい土地に慣れようと思っていたところ、緊急事態宣言での外出自粛。子ども達も幼稚園が自粛になり、新しい土地で子育てを手伝ってくれる人もおらず、働くこと自体難しくなった。

私は我が子達とはじめて、いっしょに同じ時を同じ空間で過ごした。はじめて。

3歳と5歳。上の子は1歳半から、下の子は生後2ヶ月から、保育園に通っていたので、もう保育園に育ててもらったも同然だ。
産んで初めての、毎日がおやすみ。またご飯の時間?と台所を一日に何回も往復することや、笑えるくらい散らかる部屋。自分のことには3分も集中できない。仕事もできないし、子ども同士の喧嘩も絶えないし、イライラする。

それでも目に見える幸せは一日のいたるところに散りばめられていた。

2020.4.11 世の中は今、コロナで大変なことになっている。◯◯は宇宙図鑑のDVDを観てる。土星のまわりは氷だって言ってる。 ●●は指人形を家中に隠すゲームに夢中。もちろん探す役と隠す役は交代で私が行う。前よりもそれぞれ好きなことを私なしでもできるようになってきた。BGMに30%は意識を持っていかれるけど。
2020.5.1 緊急事態宣言が延長。どこかに出かけることもできず、幼稚園もまた一ヶ月先になった。三月の私はこんな生活夢みたいだなと思っていたけど、毎日同じように過ごす家でできることは限られているのでどうしよう。動画を観る時間も多いのが気になる。よし、流しそうめんを買おう!すみっコぐらしの喫茶すみっこ作り、折り紙、絵の具、粘土、川沿い散歩、縄跳び、ひらがな練習。幼稚園の先生になったつもりで楽しもう。もう二度とないこんな時間。今、二人はお皿に入れたおやつを仲良く食べています。◯◯は仮面ライダーゴーストにはまったよう。 ●●は私がダンスエクササイズをしたら泣いた。この前も泣いた。怖いらしい。
2020.5.7  〇〇は「マーマ!」が多い。特に何かあるわけじゃない。多分この生活に飽きていてすぐ不機嫌になる。押入れの秘密基地で寝たいと言う。一人では嫌。ママは体が大きいから無理だと言うと「えー!ひどーい!」と。「ひどい!」は最近の口癖かも。私、言ってるのかな?昨日は雷が鳴り、「お腹隠さなきゃ!」鳴った後は「ちゃんとある?」とみんなのおへそを確認。 ●●ははじめてのことは何でも自分でやりたがる。ゲームのルールみたいなのを作って説明したりする。「ちょっとおもうんだけど〜」が口癖。ぬいぐるみたちで保育園ごっこをし、「きょうははなみずがでますんで、ぷーるにははいれないです」とかそれらしいことを言う。ウンチがトイレでできるようになった!こんな日が来るなんて・・・

日常にある子どもたちの言動を、言葉にして残しておくことはほとんどなかったけど、書き留めておきたいと思ってノートに記すことにした。そんなこと、思う余裕も無かった。

外出自粛を理由に無職のままであり続けたけど、結局は自分がこの生活を望んでいたのだった。今まで働いていた理由は、経済的なこと、自分勝手な責任感、仕事をするのが当たり前という思い込みだと思う。前職を辞めることになって、職場での自分の代わりはいることを改めて知った。悲しいことではなく、当然のことで、もちろん私にしかできなかったこともあるが代わりの人にしかできないこともある。ありがたい。

世のために働かず賃労働をしていないという罪悪感は、子どもたちの側にいる生活に比べれば簡単に忘れることができた。というか子育てだって大きく見れば世のためだし、ひとりで子ども2人の衣食住を守るのは、社会に出て働くことと違う意味では、それよりもずっと大変だということに改めて気づいた。

専業主婦でいられるのならずっとそれでいい。でも、働く理由である経済的な理由は消え去ることはなく、残念ながら夫から離婚も示唆されているのでもしかしたら今後一人で子どもたちを育てていくことになるかもしれない。働かなきゃ生活できないかもしれない。その危機感すら、集中して考えることができないのでイマイチ実感が湧かなかった。逃げているのかもしれないけど、時間はたっぷりあるのに何かに集中できる時間はないストレス、集中していても何者かに中断されるストレスに対し、私はそもそも集中することをやめた。自分が何をしていようと話しかけてくる子ども達は何も悪くない。そして私も悪くない。

そもそも自分には専業主婦として自律して一日を上手にやりくりしていくこともできなかった。家族の衣食住を守ると言ったって最低限なところで、家は掃除が行き届いているとは言えないし、一日みんなパジャマの日だってあるし、食事は3食きちんとというよりかはちょこちょこ各々が食べたいものを与える時もある。専業主婦なのにフルタイム働いていた時と家事や育児のクオリティが大差無い。

できたことを認めてあげましょうとかたまには家事もサボりましょうとか言ってくれる人もいるようになった世の中だけど、私は自分が中途半端であることにいい気持ちなんかしない。

そんな中、星野源さんの“うちで踊ろう”を聴くと、「今はそれでいい。」って言ってもらえる気がした。何があっても、何もなくても、今はそれでいい。今やってることが、今できること。

世の中も、自分も、次のステージへ行こうとしている。社会に出て働くことが、夢から現実へ引き戻される感覚がしたけど、これからは夢と現実を並行して見ていく。子ども達の笑顔を守っていく。そのために、今、できることをやり続けよう。

うちで踊ろうを聞くと胸が締め付けられる。その曲をよく聞いていた愛おしい時間が過去になったということだ。けれど、あの頃は幸せだったなぁで終わらせるのではなく、愛おしい時間があったことを思い出しながら感謝をする。そして今の幸せを見つめる。また感謝する。

中途半端な自分を完全に許し、今できることをしていく。



母たちを、子どもたちを、私も応援します。