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北原コレクション⑤「神秘、魔法箱」

 幻の逸品は、1920年代H.YAMADA製の「魔法箱」。本体は木箱で、前面に絵柄。洋装に身を包んだマジシャンの少女が左手に小銃を持ち、右手で扉の取っ手をつかんでいる姿が描かれています。また、箱のサイズは、高さ約26㎝で意外と大きく、取り付け箇所は、釘で各パーツを打ち付けています。

 中を見る部分が一切ない作り。内部構造は不明ですが、ゼンマイ駆動。「チン」と涼しげな鐘の音が合図となり、少女が扉を開閉するたびに人形が瞬時に変わる摩訶不思議な魔法箱。美少女が演じる華麗なマジックは、想像力を刺激します。

 扉が開くと、最初にダンスをする少女が現れ、一度扉が閉まります。続いて、幼女、うさぎを抱いた少女、サーカス犬の順に回転し、切り替わる仕掛け。ゼンマイ動力で一連の動きを繰り返します。4つのシーンがあるので、内部の回転部が各90度で4つに分割されており、それぞれに少女等が固定されていると考えます。

 少女の持つピストルの先に穴があり、本体プリントでは、穴の先に煙の絵が描かれていることから、穴のところに火打石の仕掛けがあれば、火花が見えるかもしれません。さらに、内部にオルゴールが設置されていたら、よりドラマ性、神秘性が高まり、ミステリー劇場のようになると空想してみました。

 以前、2008年に発行された「アンティークトイス」というコレクション本で、北原コレクションの秘蔵品紹介ページがあり、その中にこの魔法箱が掲載されていました。

 見た瞬間、琴線に触れたというより、電気が走ったような衝撃。一目見て、私の心をぐっとつかみました。見たことがないというだけではなく、そのビジュアルに心を奪われた感覚。すごい、なんて素晴らしい、欲しいと思いました。

 オリジナルの箱もあり、箱絵も素敵です。本体、箱とも神秘性あふれるデザインや形が秀逸で、子どものおもちゃとは思えないような雰囲気が漂っています。箱絵を見ると、正式な名称は、「A MAGICIAN」、ずばり、マジシャンです。

 是非、実物を見たいと思いながら、なかなかその機会がありませんでした。それが2013年4月、東京の日本橋高島屋で開催されたコレクション展でこのお宝を見ることができ、感激。ガラスケース越しですが、大きさや色合いなど雰囲気を味わうことができました。いつか間近で駆動するところを見てみたいです。

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