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芸術鑑賞の楽しみ方

ごきげんよう!
本記事では、学部での卒業論文を「芸術作品の社会的受容について」というテーマで執筆した筆者が、あらゆる芸術作品をどうすれば楽しむことができるのかをほんわか述べていきます。

専門知識豊富というわけではないので、芸術鑑賞をする上での入り口のようにとらえてもらえればと思います。

1.作品を鑑賞する

対象は何でもいいです。
彫刻でも、建築でも、音楽でも、絵画でも。
ここではわかりやすく、一つの絵画を鑑賞している前提で話を進めてみます。
具体例があったほうが想像しやすいと思うので、有名なこちらの作品を見ていきましょう。

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こちらはヨハネス・フェルメールという画家の『牛乳を注ぐ女』という絵画作品です。

フェルメールの作品は、日本でも非常に人気が高いです。
かく言う筆者もそのファンの一人です。
ではこの作品の良さについて考えていきます。

パッと見た雰囲気では、生活感を感じますね。
どこにでもあるような日常的なワンシーンです。

まず着目してほしいのが、画面中央のミルク瓶を持つ女性です。
今にも動き出しそうなほど、生き生きとしているように見えませんか?

手に持っているミルク瓶や、テーブルに置かれたパンも緻密に描かれています。
立体である現実世界に対して、平面である絵を見たときに抱きかねない「違和感」を感じません。
人によっては雰囲気に違和感を感じるかもしれませんが、少なくともこの情景は本当にあったんだろうなと受け入れられるほど、自然だと思います。
ちょっと遠めから見たら、写真と見まごうほどの精細さです。

そしてこの絵にはどんなものが描かれているのか、よく観察してみます。
他にはどこにどんなものが置いてある?光はどこから当たっている?
どんな色を使っている?女性の表情は?これはそもそも何をしているところなのか?
そんな風に、想像力をだんだんと働かせていきます。

余談ですが、この作品は寸法が45.5 cm × 41 cmとかなり小さいです。
現代日本の一般家庭でも、普通に壁に飾ることが難しくないサイズ感ですので、それを踏まえて鑑賞してみると、新たな気づきがあるかもしれません。

2.作者について知る

次に、その作品を手掛けた作者について考えていきます。
フェルメールは17世紀オランダで活躍した画家で、それまで存在していなかった「風俗画」というジャンルで名を残しています。

そして先ほど述べましたが、『牛乳を注ぐ女』に限らず彼の作品は寸法が小さめです。
同時期に活躍したレンブラントの代表作『夜警』は363 cm × 437 cm、『ダナエ』が185 cm × 203 cmですから、文字通り桁違いです。

さらに彼の作品は、現存している数が非常に少ないです。
その希少さから、贋作も多く存在しています。

どうでしょう?
作者の情報をほんの少し知るだけで、鑑賞するときの感覚が変わっていきませんか?
今この記事をお読みいただいている方の中には、たくさんの「なぜ?」が生まれ始めていると思います。
その疑問を出発点に、一枚の絵を見ながら想いを巡らせてみてください。

3.時代について知る

作者の次は、作品が生まれた時代、もっと言うと作者が生きた時代について知っていきましょう。
『牛乳を注ぐ女』は17世紀中頃に描かれたと考えられています。
まず歴史的にどのような時代であったのか、ざっくりとおさらいします。

三十年戦争が終了したウェストファリア条約が締結されたのが17世紀中頃で、この条約ではネーデルラント共和国(オランダ共和国)の独立が国際的に承認されています。
イギリスやドイツでは経済活動が低迷し、その反動で魔女狩りなども勃発していましたが、オランダはその混乱を免れ、貿易で成果を上げ始めます。

美術史的には、16世紀ごろまでは宗教画や神話画などが正統で高尚であるという考え方が通っていました。
17世紀に入り、のちにバロック絵画という括りで呼ばれるようになるこの時代は、より実生活に近づいた作品が数多く生まれました。
フェルメールは風俗画を熱心に制作していますが、バロック絵画を盛り立てた画家の一人と言えるでしょう。

作者がこういった時代に生き、何を感じ、何を考え、どんな思いで絵筆を手に取ったのか、何を描こうとしたのか。
その作品の向こうに一人の人間を感じること、想いを馳せることが美術鑑賞の醍醐味であると筆者は考えています。

4.アトリビュート―寓意について

ここまででお読みいただければ、大抵の作品を鑑賞するのが楽しくなってきているはずです。
しかし、今回の作品にはあまり存在しませんが、美術鑑賞をより楽しむ上で必要な知識である「アトリビュート」の存在がありますので、そちらにも少し触れていきます。

アトリビュートとは、作品の中にある特定のものを配置することにより、その作品に「意味」を与えるものです。
ただ女性が佇んでいるだけの絵があったとして、そこに百合の花があり青い布をまとっていればその女性は聖母マリアであるという説明になります。
結婚式を描いた絵の中に犬がいたとしたら、犬は貞節のアトリビュートですので新婦は婚前交渉をしていない女性であると解釈ができます。

他にもたくさんありますが、全てを網羅して説明するのは難しいので、アトリビュートに興味を持ってくださったのであれば専門の書籍を読んでみるのが良いと思います。

・マンガでわかる「西洋絵画」のモチーフ: 美術展がもっともっと愉しくなる! 池上 英洋 https://www.amazon.co.jp/dp/4416518196/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_xL-TEbJ51FZQQ

・モチーフで読む美術史 (ちくま文庫) 宮下 規久朗 https://www.amazon.co.jp/dp/4480430768/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_xM-TEb8QCGJRT

5.想像力を働かせること

自分で知識を補完して想像力を巡らせることができれば、私からお伝えすることがもう無いです。
ですが、実際に
「どんな知識や教養が必要なのか」
「どんなことを考えてみるのがいいのか」
それすらわからないと、ただ一枚の絵を見たところで楽しむことは難しいでしょうから、楽しみ方の入り口の一つとしてここまでご紹介してきました。

興味を少しでも持ってくれたのであれば、ぜひ芸術鑑賞の世界へ踏み入ってみてほしい。
鑑賞の仕方がわからなくて敬遠していたのであれば、具体的にどんな方法があるのかわかればハードルは下がるかも?と考えてここまで書いてきました。

今回は絵画作品を例に挙げていましたが、鑑賞の根幹は他の芸術と大差がないと思います。
好きだと感じる作品に出合うことができればそれは幸せですし、その作品をより深く知ることができる一助になれていれば嬉しいです。
そしてその鑑賞の過程を通じて別の作者や作品と新たに出会い、作品同士の繋がりに気づいた瞬間の感動は筆舌に尽くし難いものです。

6.総括

冒頭で述べた筆者の卒論では、あるオペラ作品を取り上げました。
オペラという媒体を選んでしまったことに後悔しました(?)
総合芸術とも言われていますから、ただでさえ情報量がとてつもなく多いです。
自身は社会学に近い学科だったため音楽を専攻していたわけではなかったですし、担当教授も音楽が専門の方ではありませんでしたので、執筆が難航しました。

それはさておき、現代には鑑賞する対象が非常に多く存在しています。
たとえば筆者のライフワークであるゲーム、特にRPGというジャンルは、オペラのように音楽、美術、脚本、衣装などを始めとした技術の結晶とも呼べるものになっています。
そういう意味でも、芸術的観点や教養があるだけで、今まで遊んでいたゲームが違った見え方がしてくるかもしれません。

最後までお読みいただきありがとうございました。
叔母からもらったパウンドケーキを食べながらミルクティーを飲み、なんとなく手持ち無沙汰だったので積んでいた美術史の本を手に取って読んでいたら、今回書いたようなことが思い浮かびました。
様々な美術館がVRなどで館内を見れるようにしていたりするので、興味があれば見てみてくださいね!

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