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統合失調症

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ルラシドン(ラツーダ)

最近 統合失調症や双極性障害の治療にルラシドン(ラツーダ)を使うことが増えている。

分類的にはリスペリドンと同じくSDA(セロトニン・ドーパミン受容体遮断薬)とされているものの、使った印象はオランザピンに似た感じがある。

詳しい薬理作用は 以下などを参照。

ラツーダ(ルラシドン)の効果と副作用 こころみ医学

最近はすっかり薬理的な作用に興味がわかなくなっている。

どんな作用があろうが効い

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診断基準の適切な利用方法

診断基準の適切な利用方法

精神科においては主に2つの代表的な診断基準がある。

WHOが作成するICD10(及び11)。
アメリカ精神医学会が作成するDSM5。

うつ病や統合失調症の診断基準はネットでは広く公開されており、検索すると容易に見つけることができる。

しかし一般の人が使うときには注意が必要である。

妥当性に対して多くの批判がある特にDSM5は誰でも同じ診断になることを目指しており、うつ病の場合9個の症状から

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多剤併用・大量投与の改善の努力をするということ

多剤併用・大量投与の改善の努力をするということ

向精神病薬の多剤併用・大量投与は、諸外国と比較しても日本では多く、以前より大きな問題となっている。

多剤併用・大量投与の定義はあまり明確ではない。

3種類以上あるいは2種類でCP換算量で1000mg以上の抗精神病薬
3種類以上の抗うつ薬
2種類以上の抗不安薬
2種類以上の睡眠薬
の場合はそれぞれ多剤併用・大量投与であると言っても問題ないと思われる。

抗精神病薬・抗うつ薬は2種類を両方とも十分

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寛解した後 減薬した方が長期予後が良くなる

寛解した後 減薬した方が長期予後が良くなる

統合失調症の人が寛解したあとに薬の量はどの程度続けるのが良いかは色々な意見がある。

急性期の量を続けると、
・再発・再燃のリスクを減らす
・副作用が出やすい

一方 減量すると、
・再発・再燃のリスクが上がるかもしれない
・副作用は少なくなるかもしれない
・どの程度減量するのがベストか分からない

現時点では明確な基準はなく、医師がそれぞれの判断と責任で処方をすることになる。

再発予防を最優先

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多剤併用・大量投与を改善するときの医師の不安

多剤併用・大量投与を改善するときの医師の不安

多剤併用・大量投与の改善について考える時にいつも思い出す人がいる。

統合失調症の中年男性。

長期間入院し大量の抗精神病薬を服用していた。

ハロペリドール50mg、リスペリドン12mg 他、CP換算値は4000mgを超えていた。

いつもカーテンを閉めてベット脇に座って一日を過ごし、他人と交流はなく、話しかけても「別に・・」と答えるのみでほとんど動きのない人であった。

非常にゆっくりと時間を

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入院したときに家族はどうしたら良いか 後編

入院したときに家族はどうしたら良いか 後編

入院した時に家族はどうしたら良いか 前編、中編 の続き。

7.待っているということを伝える病気を治療するために入院をするものの、いざ入院すると様々な苦しみを感じる。

病気の症状で苦しみ、
家族から離れている寂しさで苦しみ、
自分は病気ではないと苦しみ、
周りのちょっと変わった人の言動で苦しむ。

面会したときや、電話をかけてきたときに色々な苦しみを話し、「退院したい」「連れて帰って」「先生に退

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多剤併用・大量投与の人が減量ができるための条件

多剤併用・大量投与の人が減量ができるための条件

多剤併用・大量投与の減量は本人や家族にとっても少しずつ気長に取り組むべき課題である。

しかし当然ながら多剤併用・大量投与の人全てが減量できる訳ではない。

安全に減量する「どんな状態になろうが、どんな結果になろうが減ったら良い」というのであれば話は別であるものの、安全に再発させずに減量するということは極めて重要な点である。

多剤併用・大量投与の減量が可能なのは、減量することでメリットが得られる

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過感受性精神病という概念

過感受性精神病という概念

過感受性精神病という概念がある。

統合失調症の人に抗精神病薬を過剰に多く使用し続けるとドーパミン受容体が増えてしまい、

・高用量の抗精神病薬が必要となる

・抗精神病薬を少しでも減らしたり、飲み忘れたりしたときに再発・再燃しやすく、治るまでに時間がかかる

・遅発性ジスキネジアなどの副作用がでる

などの 過感受性精神病になってしまうという仮説がある。

「抗精神病薬を過剰に多く使用し続けると

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2週間後に効果が無いときにどうするか

2週間後に効果が無いときにどうするか

先日 統合失調症治療ガイドラインについて解説した。その補足である。

2週間後に効果がないときにどうするか統合失調症の人に治療を始めた後、順調に少しずつでも改善すれば良い。しかしなかなか治療効果がないときもある。

ガイドラインでは2-4週間で効果判定をすることが推奨されている。しかし実際に効果がない・不十分と判断したときに、どうしたら良いかは難しい。

効果判定については色々なデータが出ている。

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薬はいつまで続けるのが良いか 統合失調症の場合

薬はいつまで続けるのが良いか 統合失調症の場合

統合失調症の人は安定後 薬をいつまで続けるのが良いかは極めて難しい問題である。

「本人・家族としっかり相談して決める」と表現されることが多いものの、相談するといわれても、そのための情報が極めて少ない。

本人・家族は当然ながら初めての経験である。

精神科医は薬を止めた人のその後はほとんど知らない。
一部の再発し状態が悪くなって病院受診をした人のことしか知らない。
当然ながら「薬は止めずにずっと

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自分の統合失調症の治療アルゴリズム 初発編

自分の統合失調症の治療アルゴリズム 初発編

統合失調症の治療ガイドはいくつかあるものの、基本的に第二世代抗精神病薬の中からどれを使ってもよいとされている。

自分なりの初発の統合失調症に対する治療アルゴリズムを紹介する。比較のため現在の自分のアルゴリズムと10年以上前のものを紹介する。

ちなみに以下の記事はうつ病編。

抗精神病薬過去:リスペリドン2-4mg 夕食後 <最大8mgまで>

現在:ブレクスピラゾール(レキサルティ)2mg 夕

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統合失調症の多剤併用に関する論文

統合失調症の多剤併用に関する論文

抗精神病薬の多剤併用・大量投与は、

・効果が高まるという明確なエビデンスが無い
・副作用が増加する
・値段が高くなることが多い
などの問題が指摘されている。

多剤併用に関する論文のレビュー多剤併用の効果と副作用に関してレビュー(Galling B et al. 2017)を紹介する。

ちなみに、オープンラベル試験とは医師も患者もどの治療を受けているか知っている試験であり、ダブルブラインド試験

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主治医が本当の状態を知らないという可能性

主治医が本当の状態を知らないという可能性

うつ病として治療を長く受けているにもかかわらず、良くなったり悪くなったり変化が大きく治療方針に違和感を感じてしまうときには、主治医が本当の状態を知らないという可能性を考えておくべきである。

・お酒は飲んでいません と言いながら、連日飲んでいる人

・薬は飲んでいます と言いながら、不規則に飲んだり 時々 一度に多めに飲んだりしてしまう人

・ずっと動けません と言いながら、気が向いた時には普通に

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長く話を聞かない主義の例外

長く話を聞かない主義の例外

以下の記事で書いたように、私は患者の話を長くは聞かない主義である。

しかし例外がある。

1.新患のとき当然 初めて会う人でこれまでの経過が全く分からず、聞きたいこと・知りたいことが一杯あり本人も話したいことが一杯ある。

そのため通常の外来とは別の時間帯に診察をする。

2.入院を必要とするとき非常に重要な時で可能な限り入院をマイナス経験にさせないため、話を聞いたり説明に30分以上、時に1時間

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