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4。(虎本)

虎本です。寒さに負けず、熱海殺人事件の稽古は4回目。
稽古の前には必ず身体に重きをおいた基礎トレ。
それをしなければこの作品に立ち向かえない…というのもありますが、
敬意であり礼儀であると思うのです。
つかこうへいさんへの。

ご存じない方に説明させていただきますと、つかこうへいさんは演劇界において「つか以前、つか以後」と呼ばれるほど影響を与えた劇作家で、当然僕も影響を受けています。
僕とつかさんの出会いはまた当日のトークで語るとして、虎本剛の演劇人生にもきっちり「つか以前、つか以後」が存在します。
代表作であるこの熱海殺人事件は若手から老舗劇団まで全国各地で上演され、おそらく日本で最も演じられている作品なのではないかと思います。その作風は一言でいえば、圧倒的な熱量と暴力、それを凌ぐほどの愛。

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独自の美学と方法論をもとに、狂気をまとって事件に挑む、東京警視庁の部長刑事・木村伝兵衛
そして彼を公私ともども支える、孤独な女刑事・水野朋子
そこへ富山から赴任してくる、野心ギラつく若手刑事・熊田留吉

水野は木村との関係を絶ち嫁いでいく。同じく熊田は出世のために、恋人と母親を捨てようとしている。
そんな1歩踏み込めず歯がゆい歪な3人の前に、熱海で恋人山口アイ子を自らの手で殺害した犯人・大山金太郎が現れる。

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つかこうへいさんの凄さを語る上で、「口立て」という手法があげられます。台本を事前に用意せず、その場で俳優に口で台詞を伝えるのです。俳優はその場でその活きの良い台詞を覚えていきます。

凄いな!!

この莫大な量の台詞をよくもその場で思いつけるな…と感心するとともに、僕ら台本をお借りして上演する側としては「事前に台本を読めるお前らは、じゃあ、この作品にどう挑むんだ?」と問われている気もするのです。

他にもつかさんの功績、生み出した手法や技術をあげていけば枚挙に暇がありません。

でも僕はつかさんの凄さは、僕らが熱海殺人事件で向き合わねばならいのは、そうした技術面ではないと思うのです。
つかさんがこの作品に込めた思い、情熱なのだと思うのです。
それは真似をするだけはたどり着けないと思うのです。
僕は熱海殺人事件を、つかこうへいを、現在全力で分析・研究中です。僕なりにこの作品の構成と仕組みを解読し、そこに込められたテーマを浮き彫りにし、客席に届けたいと思います。
そして俳優たちと向き合い、僕なりの熱海殺人事件に仕上げてみせます。

稽古場ではただ熱く演じるだけでなく、緻密な計算と試行を繰り返しております。勢いと熱量を保ちながら、理屈をまかり通すための筋道を探しています。これが僕流。これがステージタイガーの作り方。
そして冒頭にも言いましたが、つかさんへの作品への敬意と礼儀、ひいては今まで上演されてきた熱海殺人事件への立場表明であると考えます。


難しいことばかり言いましたが、稽古は楽しく、行き着く暇もないほど演劇やってます。

それではそんな熱海殺人事件を支えてくれる、今日も寒風のなか汗水たらして声を枯らして台詞を叫ぶ、愛すべき4人の俳優を紹介いたしましょう。

部長・木村伝兵衛 … アミジロウ
刑事・水野朋子 … 小野愛寿香
刑事・熊田留吉 … 谷屋俊輔
犯人・大山金太郎 … 佐竹仁

最大級の熱と愛を届けます。
僕はワクワクしています。
宜しくお願いいたします。

虎本剛


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