見出し画像

#10 CTO とは何なのか?その役割と挑戦について CTO に聞いてみた【STAFESおくのほそ道】

「STAFESおくのほそ道」と題しまして、「スタフェスで働く人たちってどんな人なの?」をテーマにお届けしていきます!

これはソフトウェアエンジニアの吉藤がホストするPodcast、Radio STAFESのシリーズ「STAFESおくのほそ道」の公開と合わせて、一部内容を記事化しています。

ソフトウェアエンジニア 吉藤

第10回目のお相手は、取締役 CTO sotarok さんです。

取締役 CTO 柄沢聡太郎

話し手
取締役 CTO 柄沢 聡太郎(からさわ そうたろう)

経歴
2011年ソーシャルマーケティングの株式会社クロコスを共同創業、取締役CTO就任。2012年同社をヤフー株式会社へ売却しヤフーグループとして事業に従事。2015年株式会社メルカリに参画し、執行役員CTO及びVP of Engineeringとして技術領域全般を統括し、エンジニア組織20人規模から数百人規模、そしてプロダクトの急成長に貢献。
2020年より当社執行役員CTOとして参画、同年9月より取締役就任。リアルとオンライン両軸からシームレスかつスケーラブルな事業運営を目指し「プロダクトファースト」体制を構築・牽引。


sotarokさんの業務について

吉藤:CTO について、スターフェスティバル(以下、スタフェス)のエンジニア数名にイメージ調査をして参りました。本日はそれをもとに、「CTO ってどんなイメージなのか」、「どうやったら CTO になれるのか」など、お伺いしていきたいと思います。
まず、CTO の仕事についてざっくりと教えていただけますか。

sotarok:一言で表すとするならば、「ソフトエンジニアとしての技術的な専門知識や経験を経営に活かす仕事」です。「経営に活かす」というのがどういうことかと言うと、事業計画や、会社のビジョン・ミッションを達成していくにあたって、どういう風に技術を使って実現していくべきなのかとか、あるいはどういうところまでやるべきなのかとか、それを実現するためのソフトエンジニアの組織を採用や体制づくりも含めてどういう風に揃えていくべきかとか、会社が上手く進むために意思決定していく、それを実行していくところが仕事かなと思っています。

吉藤:技術と経営を結ぶと言いますか、その間でパワフルに立ち回るようなイメージがあります。

sotarok:そうですね。会社によって経営のキャラクターっていうのは違いますけど、スタフェスの場合だと、代表である Yusukeさん(スタフェスでは社長のことを Yusukeさんと呼ぶ)がエンジニアではないこと、取締役という経営メンバーにおいて私自身が唯一の技術者であることから、エンジニアの意思決定を私が担っているという感じですね。

吉藤:技術的な課題と経営の課題っていう、両面を見なきゃいけないとなると、とても忙しいのでは?と思っています。実際、sotarokさんとお話したいと思ってカレンダーを見てみると、すごく詰まってますよね。1日のだいたいのスケジュールを教えていただけますか。

sotarok:1日の半分ぐらいはミーティングをしている気がします。自分が関わっているプロジェクト(事業)の定例ミーティングや、レポートラインのメンバーとの1on1などが多いですね。

残りの半分に関しては、情報収集や会社の将来を考える時間に充てることが多いです。
情報収集は、外部からの場合もありますし、社内の Slack チャンネルを見て、どのチームがどういう動きをしているかとか、社内の情報を溜めている Confluence を見に行ったりとか、社内に目を向ける場合もあります。

今の執行体制として、幸いなことに、CPOVPoE という形で、自分と一緒に動いてくれる方が2名いる状態なので、各チームの執行体制はその2名に任せている状況だからこそ、情報収集などに時間を避けるようになりました。

吉藤:内にも外にもかなり目を向けていただいてるなという印象がありますね。
私の中では、技術的と経営って全く異なる分野の印象なのですが、思考する時間などで言うと、配分はどのようにされているのでしょうか。

sotarok:現在の時間の使い方としては、経営的な課題に向き合っている方が長い気がしています。

吉藤:現在はというと、メンバーや体制などの状況が変わるタイミングでは配分が変わるのでしょうか。

sotarok:そうですね。会社のフェーズにもよりますし、技術的なパラダイムシフトが起こった瞬間には技術的なことにフォーカスしたいと思いますね。

スタフェスクルーが思うCTO像

吉藤:冒頭でスタフェスのエンジニアに調査をしたとお伝えしましたが、ご協力いただいたアンケート結果を見ながら、お話していきたいと思います。

まず、「一般的なCTOのイメージを教えてください」という質問に対しては、「何でもできるという意味でスーパーマン」とか、「フェーズによって役割が変わる立場」とか、「技術と経営、双方のスキルが必要」という意見がありました。
このイメージについて、どう思いますか。

sotarok:どうなんですかね。スーパーマンってことはないんじゃないですかね。
自分の考えでは、「興味の範囲が技術のみに留まらず、経営にも興味があり、会社が求めている役割と合致した人」というイメージですね。
一言で「CTO」と言っても様々な方がいるし、事業内容によって技術の立ち位置も変わってくると思うんですよ。

スタフェスには非常に優秀なエンジニアが揃っているという前提のもと、語弊を恐れずに言うと、スタフェスで扱っている技術って、「非常に難しいビジネス領域」ではないんですよね。表から見たとき、直接的に言ってしまえば「ECでしょ?」という見方もあると思うんです。

でもビジネスの中でいかに技術をうまく使うことができるかによって、会社の運営効率だったり、利益率だったり、スケーラビリティだったりが変わってくるし、一言で「EC」って言っても、ぽちっと立ち上げられるものから成功を収めたと言えるものまで、多岐にわたると思うんですけど、
自分たちが向き合っているドメイン領域に対して、あるいは変化していくビジネスからの要求に対して、ソフトウェアによる的確なソリューションを提供し続ける体制をつくっていくためには、技術とビジネスドメインを繋いでいく存在っていうのは必要だし、それが今のスタフェスの中ではソフトウェアエンジニアの役割になってきているわけです。

ただ、エンジニア領域についてわからない経営から見たときに「ECサイトを運営する上でそんなにエンジニアが必要なのか?」という意見もあると思うんですよね。
どういう会社規模で、どういう領域を狙っていくかによって、そこの意思決定は変わっていくものですけど、「エンジニアが必要だ」って言えるかどうかは、経営の意思決定の中に、技術的な思考を組み込んでいるかどうかによると思います。
つまり、経営というチームの中で、一つの能力として「技術的なことを理解していて、それをビジネスに繋ぐことができる」があると、技術的な思考に基づいた意思決定も可能になるということです。

質問に戻って、「CTOがどういうイメージか」で言うと、自分たちが向き合っている技術の使い方を一番良く知っていて、それをもとに様々な因果関係とステークホルダーとの調整を頭で描くことができて、意志決定に繋げるような感じかなって思っています。スーパーマンというよりも、間に挟まれながら泥臭いことをやっている人です。

吉藤:なるほど。確かに技術の分野は、エンジニアを経験していない方にとってはなぜ必要なのかを知ることから始まりますし、そこに説得力を持たせるというのが難しい仕事でありますよね。
僕のイメージだと、背中にも目がついてるような視野の広さが必要な感じがして、加えて全方位に手を伸ばしていかないといけなくて、もしかしたらアンケートに回答してくれたスタフェスのエンジニアたちもそういう意味でスーパーマンって言っているのかもしれないと思いました。実際の感覚だともうちょっと泥臭いことをやられているんですね。

他にも「CTOに何を求めますか?してほしいことは何ですか?」という質問をしてみました。これはsotarokさんにというわけではなく、一般的なCTOに、という意味合いです。これに対しては、「開発に集中するための組織づくり」や「経営課題に関する意思決定」という意見が挙げられていました。先ほどお話いただいた内容にも出てきたワードですが、やはり「体制づくり」に関する期待って高いのかなって思います。あとは「チャレンジできる文化をつくってほしい」という意見もありました。

sotarok:特にチャレンジできる文化に関しては、私も意識している部分ですね。色々なタイプのCTOがいると思いますが、私がCTOとして体制や組織をつくっていく中で意識していることの一つに、「自律」があります。

経営に関わる重要な意思決定においては、私が担っていくべきものが多くあると思いますが、会社で起こっている物事すべての意思決定を私が行うわけにいかないというのもありますし、技術的な全領域で他のエンジニアよりも知識や経験が勝っているというわけでもありません。むしろ、「これはこの人に任せた方が良い」と思うこともあるので、そう思ったらお任せするようにしています。

体制作りという点で言うと、そういう人たちが自分の得意とする領域で、きちんと自分の能力を発揮して意思決定に関わっていく、物事を前に進めていくために自分の能力を100%以上発揮していく、そういう状況をつくっていきたいんです。

私や上長や、あるいは他の部門のだれかにお伺いを立てながらやっていくというよりかは、自分たちで決定をして前に進める状態、自分たちが正しいと思うものを正しく進めることができる状態であることが大切だと思いますし、それが「自律的な組織」に繋がってくると思っています。

そのためには、「経営が何を考えているのか」ということを理解しているチームとか、自分たちが意思決定した方向が間違った選択でないと自信を持てるような状況とか、ステークホルダーや関係部門がわかりやすいとか、情報共有の型みたいなものが構築されているとか、そういう状態をつくれたらいいと思うんですよね。

意見が挙がっていた「開発に集中できる組織」や「文化」についても、煩わしいことが起こらずに、自分たちの意思決定が正しい方向に向かっているという確信を持って、コードを書いたり設計したり実装してリリースに繋げていったり、そういう自律した組織がつくれたらいいなと思っています。

リーダーのミーティングなどでは「経営の中では最近こういうことを話題にしているよ」というのは、意識して参加者に伝えるようにしているんですけど、そういう意識がチームの動き方にかなり活かされていると実感する場面も多いです。

吉藤:なるほど。経営が何を考えているのかっていうのは、知る機会がないと難しいところもあるので、そういう材料がないと個々のエンジニアも意思決定していくにも安心して行えないというところがありますよね。

CTOへのチャレンジ

吉藤:次にですね、エンジニアから CTO になりたい人っているんだろうか?と考えまして、今回それについても聞いてみました。結果、半分ぐらいの人が「チャンスがあればなってみたいかも」「おもしろそう」というポジティブな意見を挙げてくれました。反対に「荷が重い」「機会があってもやりたくない」という方もいらっしゃいました。
CTOのsotarokさんから見て、この結果っていかがですか?

sotarok:まさにスタフェスのバリュー、「やってやれんことはない」と思いますけどね。
正直ちょっと意外です、やってみたい人が半数もいるんだ!と思いました。アンケート結果を見るまで、たしかにこういう話ってしたことなかったなと。

吉藤:sotarokさん目線で、どういう人が CTO に向いているかってありますか?

sotarok:私が思うCTO像に関しては話した通りなんですけど、すべての CTO がやるべきとも思っていないので、CTO 毎に色があってもいいと思うんですよね。加えて、会社経営って常にそうですけど、自分にできない事でも誰かができればいいんですよ。

CEO にエンジニアリングがわからないとしても CTO がやればいいのと同じように、「CTO ができないこと」を「できる組織」であればいいという気がしているので、向き不向きでいうと、やりたいと思っていればできると思いますけどね。

私は CTO 3社目ですけど、初めて CTO になったときは、経営だとかマネジメントだとか、本当に何もわからない状態で、普通の開発チームリーダーみたいな振る舞いをしていました。やらなければならないことに対して、みんなでそれをどうやっていこうかっていうのを話して、決めていく感じでした。

それをどういう順番でどのように行ったら、事業計画の本筋をこのように、このタイミングで達成できるから、ここに注力してやりましょう!とか、リソースがどうのこうのとかっていうことを当時あまり考えたことがなくて、CTO として目の前の課題と戦ってがむしゃらにやっていた時代を経て、「もっとこういう風にやった方がいいな」というのが見つかって、どんどんできることが増えていって、それが経験に繋がってくるってあると思うので、やってみたいと思っているのが最初の一歩なのかもしれない気がしますね。

実際やってみる時に、何を意識してやった方がいいかっていう話で言うと、「決める」ことですね。自分に能力があるないに関わらず、CTO が決めないと誰も動けないような状況になることもあるので、決めなければならない瞬間に決断ができる人は強いなと思います。
決めたからにはその決定事項が正解になるように動く訳じゃないですか。決めるっていうことがまず大事で、それをいかに正解にできるかどうかってことですね。

吉藤:なるほど。どういう人が向いているかという観点で言うと「やりたいという気持ち」ですね。特段、「これが CTO としての正解」というものはなくて、CTO それぞれの環境で最適なものを探っている感じなんですかね。

sotarok:そうですね。大きい会社だと事業部 CTO のような、領域ごとの意思決定やそれに必要な振る舞いなどを行う立場が複数いる体制もあるので、スタフェスでも、やってみたいと思っている人に、どこかのタイミングで一部を任せてみたいなと思います。

吉藤:CTO 養成学校があるわけじゃないので、なってからじゃないとその力って磨かれないみたいなところありますもんね。

sotarok:そうですね。最初から完璧にできる人も存在しないので、やる気があるならやってみるのみですね。あとは、会社によって違うところもありますけど、スタフェスにおいては、経営層と「自分たちの目線からはこうである」「相手の目線からはこうである」というような議論も必要になってくるので、そういう状況に臆さないこと、立場関係なく目の前の議論に集中できることは大事だと思いますね。

吉藤:最後に、スタフェス内外問わず「CTO になってみたい」という人に対してメッセージをお願いします。

sotarok:CTO をやりたい人が増えるというのはいいことだと思いますし、技術者が経営に関わっているという状態は増えていくべきだと思っています。その方が、色々な技術や、技術をうまく活用したビジネスが生まれるはずだからです。

「プレゼンテーションや表現は上手くても、ものづくりはできません、やりません」という状態って、それはそれで一つの能力ではあるんですけど、エンジニアリング歴が長い私からすると、やっぱり ”もの” をつくってなんぼみたいなところもあると思っているので、経営に関わるエンジニアが増えてくるってすごくいいなと感じます。自信を持って色々な壁にぶつかって経験を積んで、「CTO」にもどんどんチャレンジしてほしいなって思います。頑張っていきましょう!

吉藤:貴重なお話が伺えました。ありがとうございました!

sotarok:ありがとうございました。


📻配信リスト

Spotify ApplePodcast GooglePodcast


編集者から

最後までお読みいただきありがとうございました!

スタフェス CTO である sotarokさんが普段どのようなことを考えて、どのようなことをされているのか、学びになった回でした。

「決めるっていうことがまず大事で、それをいかに正解にできるかどうか」というお話がありました。
昔とてもお世話になった人にも似たようなことを言われたことがあって、ふとした瞬間に思い返しているんですけど、わかったつもりでいても、振り返るとアクションが全然追いついていないなあと反省しました。

正解とわかっていて決定するときはひたすら進むのみなんですけど、正解かわからないけど決定しなければならないときって、その後にすごくパワーがかかると思うんです。
自分で選んだことなので、もちろん他人に矢印を向けることはできないですし、基本的には率先して旗を振るべきですし。(権限委譲が大事な場面もあると思います)

これで進んでいく!という覚悟であったり、自分やチームが迷わないようにするためであったり、何かを選ぶということは、「一旦それ以外の退路を断ってみる」感覚とも言えると思います。
今のところ、sotarokさんレベルのことをできるようにとは微塵も考えていないんですけど、自分の腕を広げたときに抱えらえることに関しては、この感覚で向き合ってみようと思いました。

CTO としての sotarokさんから、また sotarokさん率いるエンジニアチームから、ますます目が離せませんね!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?