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スタジアム・アリーナを中心とした街づくり

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この写真、すごいと思いませんか?とても近未来的な感じがしますよね。 巨大な地球儀のような建物、実はラスベガスに今建設中の最先端のアリーナ "MSG’s Sphere"なのです。詳細は改めて取り上げさせていただきますが、ドーム型の天井からウォールまでLEDパネルを使った3.5エーカーの巨大ビデオスクリーンになっており、超指向性スピーカーの音響設備はもちろん、床が振動する体感型のアリーナになるようです。主に音楽イベントやEスポーツなどが行われるようですが、ボクシングの世界タイトルマッチなども開催される可能性があるとのことです。

この様にアメリカやヨーロッパでは、スタジアムやアリーナが街の中心部に作られ、経済活性化の核となっています。前回、スポーツ産業の成長可能性について述べましたが、その1丁目1番地が「スタジアム・アリーナの改革」になります。なぜならば、スタジアム・アリーナを街の中心部に作り、「集客」することで、街を訪れる人が増え、その周辺にある飲食店・ホテル・公共交通機関を利用します。そうすると、そこの雇用が生まれたり、不動産価値は高まり、税収拡大から再投資という好循環につながり、地域経済が活性化するからです。

コロナによって延期となってしまった東京オリンピックの経済的波及効果は約32兆円と言われており(オリンピック招致が決まった2013年から大会終了後の2030年までの18年間で:「東京2020大会開催に伴う経済波及効果」より抜粋)、施設建設・大会運営費・企業のマーケティングなど直接的な効果で約5兆円、オリンピックを契機としてスポーツ人口や観光客の増加などレガシー効果で約27兆円となっています。

オリンピックを招致するとこれだけ経済が活性化するので、どこの国も競ってオリンピックを招致しようとするのですね。ただ、近年はオリンピックで作った施設や設備などのレガシーを、大会後にうまく活用できないとことでコストセンターとなってしまっているという悪い事例もあるので、新しい設備や施設を作る際は、大会後に如何に有効に活用しプロフィットセンターにするかまで見据えたビジョンが不可欠です。

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また、昨年大変な盛り上がりを見せたラグビーワールドカップ"RWC2019"では、約24万2,000人が海外より訪日し、経済的波及効果は6,464億円と言われています(「開催後経済効果分析レポート」および「大会成果分析レポート」より抜粋)。そして訪日外国人客1人当たりの消費額は686,117円だそうです。」より抜粋)。そして訪日外国人客1人当たりの消費額は686,117円だそうです。

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これら東京オリンピックやラグビーワールドカップも地域経済の活性化という意味では同じ文脈になるかと思いますが、何十年に一度日本で開催されるこれらの大会を待つ必要はないのです。なぜならプロチームや大学・高校のチームが地域にあれば、後は街の中心部にスタジアム・アリーナを作り集客をはかっていくことで、同じように地域経済の活性化ができるからです。そういう意味ではスポーツは地方創生のキラーコンテンツにもなり得ると言えます。

ただ、ポイントは何度も申し上げている通り、街の中心部にスタジアム・アリーナを作るということ、そしてその周辺にショッピングモール、レストラン、バー、ホテル、オフィス、マンション、コンベンションセンター、カジノ、クラブなどを作り、一つの大きな複合商業施設にすることです。例えばスポーツ観戦後、熱狂に包まれたまま、「まだ帰りたくない」「この興奮を共有したい」という人はバーや飲食店に行ってお酒を飲んだりするでしょうし、遠方から来た方は、1泊して次の日は観光して帰りたいという方もいらっしゃいますよね。スタジアム・アリーナと複合商業施設の相乗効果でカスタマーエクスペリエンス(顧客体験価値)が最大化され、人々はまたここに来たいと思うようになるのです。

残念なのは、日本の多くのスタジアムやアリーナ(特に公共施設)は街の中心部から遠いところに作られていることが多く、そこに行くまでで一苦労、さらに行ってみたら周辺には何もなく、スポーツを観戦した後は帰るしかない、という施設が多いのです。これは元々スタジアム・アリーナをプロフィットセンターにするという経営ビジョンがないまま、空いている土地に建設してきてしまった結果だと思います。

一方でアメリカを見てみると、例えば冒頭で取り上げたMSGグループというのは、ニューヨークのど真ん中で、かの有名な「マディソン・スクエア・ガーデン」というアリーナを持っています。このアリーナはペンシルバニア駅の真上に建っており、利便性はもちろん良いのと、周辺には飲食店やホテルや商業施設などがあり、スポーツの試合だけを見るのではなく、周辺の娯楽も含めたエンターテインメントとして楽しめる街になっています。またオフィスも沢山あるので、仕事帰りにニューヨーク・ニックスの試合を見て帰ることもできますよね。スタジアム・アリーナを街の中心部に作ることで、集客もしやすくなるというのもポイントの一つです。

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最近では中国でもスタジアム・アリーナを中心とした街づくりが増えているそうです。*写真はSuzhou Industrial Park Sports Center / NBBJ

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ただ、日本でもプロスポーツチームを中心にスタジアムを中心とした街づくりが活性化してきています。例えば、プロ野球では横浜DeNAベイスターズが「横浜スポーツタウン構想」を掲げて着々と街づくりを進めていますし、サッカーではジャパネットホールディングスが中心となってV・ファーレン長崎の新スタジアムを中心とした街づくりを始める計画でいます。

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バスケットボールのBリーグでも、沖縄の琉球ゴールデンキングスが官民一体となって今秋完成予定のアリーナ建設を行っていますし(キングスは指定管理者)、リーグとして2026年までに1万5000人収容のナショナルアリーナ構想を掲げています。

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このようにスタジアム・アリーナを中心とした街づくりが進めば進むほど、地域経済が活性化し、地方創生にもつながっていきます。これが「スタジアム・アリーナ改革」です。

次回は、スポーツ庁の「スタジアム・アリーナ改革」について、その趣旨を見ていきたいと思います。ご拝読ありがとうございました。


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