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障害リハビリとは「戻す」ではなく「使いこなす」行為 -2.の解説-

リハビリの話をする前に大事な情報を三つ伝えます。

1.麻痺は無くならない
2.リハビリの最初は自然治癒の促進
3.リハビリの真骨頂は1年後から

note読者の皆様は(脳)障害によるリハビリを受けたことないと思います。

私も受けたことはありません。言語聴覚士(セラピスト)としてリハビリを提供する形で関わる機会が多いだけです。

障害を一番近いところでたくさん見比べ、消えることのない障害を本人が使いこなせるように毎日闘ってきたから伝えられる内容だと思っています。

今回の伝えたいメインの相手は、介助者となっている妻・夫・家族の皆様にです。

ある誤解によってリハビリに大事な時間とお金を頂いているのに無駄になっている。

そんなケースがちらほら出ているので生意気ながらお伝えしていきます。

2.リハビリの最初は自然治癒の促進

[1.麻痺はなくならない]の解説はこちらから

脳卒中(脳出血や脳梗塞)は恐ろしい病気です。
発症直後はほとんどの方が意識障害を併発します。
意識障害はざっくり説明すると、脳が覚醒してるかどうかです。

脳の覚醒不良(働きが鈍い)と刺激に対しても反応がなくなります。
つまり声をかけようが揺すろうが何も反応しなくなり、目を開けておくことすらも困難になってきます。

リハビリの最初は、急性期病院から始まります。
ここでは症状を安定させることに全力を尽くします。

リハビリの役割は、自然治癒を促すために脳の働きを活性化させることです。

一秒でも早く多く、どんなことでもいいから、脳が働くようにあらゆる手段を試していきます。

ダメージ量によって、覚醒不良度合いも改善までの時間も異なります。

回復期病院への転院までの期間は平均2週間と短いです。

急性期病院の役割が「命を救うこと」に尽きているからです。

回復期病院の役割について説明します。

急性期に引き続き眠っている脳の働きを活性化させることをしています。
脳がおぼろに目覚め始めるところ〜脳機能が回復できる上限最大まで の期間を回復期病院で過ごすことが多いです。
入院期間はだいたい3ヶ月から6ヶ月。

この時点での回復も、自然治癒によるものが大きいです。

リハビリの役割で欠かせないのは自然治癒の促進がまず一つ。ほかには使える機能と使えない機能(障害)を見分けることです。

セラピストの腕の見せ所は、短い期間で効率的に障害の有無を見極めつつ、日常生活動作を一通り出来るようにすることです。

実はここで、1つ落とし穴が潜んでいます。
誤解されやすい出来事のきっかけにも深く繋がってきます。

家族は一度発症〜急性期の時期に悲惨な状態を見てきています。

このまま助からないのかも😭→生きることは出来たけど言葉も発しない😥→最低限は会話も運動もできるようになった😊と心の変化が現れます。

このような最悪な状況から一転して改善すると、最終的な「結果」地点ではなく「変化量」の大きさで満足感を判断しがちになります。

しかし、人間は欲深い生き物です。
その時その場では「変化幅」の大きさに満足感を得られても、少し経つとそのことすら忘れて次第に現在の「結果」位置に対して物足りなさを感じます。

その判断基準によって何が起きるか。次に挙げます。

①すべての機能は時間をかければ回復する、と勘違い
②回復したのはリハビリのおかげ、と勘違い
③障害が残ってるのは本人の努力不足、と勘違い

損傷機能を回復しているのは事実ですが、皆さんが思っているよりも健常な機能の「再起動化」が行われていると思います。

よくよく考えると発症直後というのは全ての脳機能が「シャットダウン」状態になります。
つまり健康な機能も含めて「エラー」か「スリープ」です。

「復旧」は最近のスマホやPCのようにはいかず、かなり時間がかかります。よく言われているのは大幅な脳の回復期間は発症からの約1年間です。2年目でゆるやかな回復になり、3年目では頭打ちとも言われています。

また1年目後半になるにつれ「エラー」か「スリープ」かの情報がハッキリしてきます。全てが一律に回復できるわけではなく「障害」像もハッキリとしてきます。

私が最初のリハビリ期間が自然治癒によるものだと表現するのはこのためです。(もちろんリハビリによって促進や改善に一定の効果が出てることも重々承知しています)
ただこの期間の回復手段のメインは自然治癒、リハビリは補助的要素だと認識しておいてほしいだけです。

(初期の)回復がリハビリのおかげでない、という意味も同様のところからきています。

上記の考えが前提にあると
退院生活後に残っている障害を本人と努力不足と認識してしまい
辛口な発言や本人の限界を超えたリハビリを求めてしまう傾向が強いようです。

また、回復期以後のリハビリで求められるのは
「使えない機能を使えるようにする」のではなく、
「使える機能で使えない機能分も『使いこなす』」ことになってきます。

リハビリが万能でないこと、自然治癒で改善できるのも上限があることを理解していただきたいです。

この時点でのリハビリには自然治癒の促進補助効果を狙う考え方な多いですが
次のステップからは一気に、リバビリに求める考え方と使い方が変わってきます。


私は、リハビリの本質や意義を問われたら迷いなく「『使いこなす』ための訓練である」と答えます。

次回は、「3.リハビリの真骨頂は1年後から」を解説していきます。
それではまた!

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