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短編小説集

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短編小説をまとめてます
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#2000字のホラー

[短編小説]幽霊

 ある日の夜、わたしは自分の部屋の机に向かって小説を書いていた。一段落ついて、一息ついたあと、椅子から立ち上がって後ろを振り向くと少年がいた。わたしのことをじっと見ている。

「こんばんわ」

 わたしは、彼に声を掛けた。十歳くらいの少年である。何も反応しない。ちょうど、リビングに向かう出入り口のドアの前に立っているので、わたしは部屋を出ることが出来ない。

「そんなところに、なぜいるの? ここは

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[短編小説] 虫

 この日の達也の寝起きは爽快だった。昨晩はいつもより早く寝ていた。いつもなら夜中に起きることがあるが、この日は熟睡をしていた。ちょうど、窓から太陽の光が差し込んで部屋中が広がっていた。いつもよりよく寝たなと思って気分が良かった。だが、目を開いた瞬間に違和感を覚えた。背中がベッドについてる感覚がない。身体を動かそうとしても起き上がることが出来なかった。彼はおかしいなと思った。

 首を動かして下を見

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[短編小説]未来の自分

 事件は2022年に起こった。

 わたしは、公園のベンチに座っていた。夏が終わりに近づき、蝉の鳴きも聞こえなくなり昼間の気温も涼しくなって過ごしやすい日々が続いていた。長袖のTシャツにジーパンという格好で本を読んでいた。

 突然、わたしはこの瞬間を体験したことあるという感覚に陥った。本に書いてある文章が既視感を与えたわけではない。周りにある自然が風で揺れて、メッセージを与えているように感じた。

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