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『タイガー&ドラゴン』(ドラマ紹介)

『タイガー&ドラゴン』は2005年にTBSで放送されドラマです。

主演はTOKIOの長瀬智也さんとV6の岡田准一さん。

2005年1月9日に2時間の単発スペシャルドラマとして放送され、

その後、続編という形で連続ドラマ化され、

2005年4月15日から6月24日まで毎週金曜日22:00 - 22:54に、

「金曜ドラマ」枠で放送されました。


まずねー、当時の話をさせてもらうとですね、

これが放送されるって初めて宣伝見て知った時、

始まる前からの期待感とワクワクが半端なかったのよ。

てゆうのも、

2000年に放送された『池袋ウェストゲートパーク:通称IWGP』が放送されまして、

言わずもがななんですが、

特に僕ら世代で知らない人はいないと言ってもいいくらいの周知度と好感度を有する、

もう今では伝説のドラマとして語られるほどの名作中の名作でして、

この主人公である”まこっちゃん”を演じたのが長瀬智也。

このドラマを語ると偉い時間を使っちゃうんで、他にも紹介したいんですが今日は割愛しますけど、兎に角それほど凄いドラマが放送されたんですよ。

それでね、、、、


それから2年が経って、

2002年に放送された 『木更津キャッツアイ』

これもめちゃくちゃ人気があってDVDはバカ売れ、

それに伴って「日本シリーズ」と「ワールドシリーズ」ってタイトルで

2本も映画化されるという売れっ子ドラマの王道パターンの展開を見せ、

“IWGP”同様に超ロングスパンで人気を博した名作中の名作なんですよね。

この主人公である”ぶっさん”を演じたのだが岡田准一さん。


このように、宮藤官九郎さんが連続してヒットドラマを作り続けて、

もちろんキャスト他のスタッフさんも凄いんだけど、

もうこの人天才だ!って世間に認知されたんですよ。


僕の中のクドカンブーム絶頂期ですよ。

この最高の作品の熱冷めやらぬ中、

なんと、

“IWGP”主演の長瀬智也さん、“木更津キャッツアイ”の岡田准一さん

このダブル主演、且つ!

脚本家宮藤官九郎さんと磯山さんというプロデューサーのタッグ

で始まろうとしたのが!

今回紹介させて頂く『タイガー&ドラゴン』ってわけですよ。

キャスト・スタッフ分かった瞬間でもう絶対面白いじゃんって期待感爆上がりになる理由わかるでしょう?


もちろんこの『タイガー&ドラゴン』、他のキャストも豪華過ぎるんです。

西田敏行、阿部サダオ、笑福亭鶴瓶絵、荒川良々、塚本たかし、星野源、高田文夫。


大人計画のメンバー筆頭に

クドカン作品常連の顔ぶれが並んでこれまたテンション上がるわけですよ。


宮藤官九郎さんのドラマってね、

「宮藤官九郎さんのドラマが始まるらしいね」

って会話が普遍的に成立しちゃうのよ。

言ってる意味わかるかな?

「次のドラマ広瀬すずが出るらしいね」って会話はあるでしょう?

「次は嵐の誰かが主演でさー」とか。

「次のドラマ、クドカンらしいぜ?」
ってやばくない?

あんま言わないじゃん、それこそそこらの中学生がさ。

作家が前に出るのが良いのか悪いのかは置いといて、

宮藤官九郎さんってそうゆう現象を起こした稀有な例の一つなんだよね。

今日、たぶん日本で一番クドカンって言ってるんじゃないかな、俺。

で、今回紹介する『タイガー&ドラゴン』のメインキャストが、

山崎 虎児(やまざき とらじ)/ 小虎 

演 - 長瀬智也

谷中 竜二(やなか りゅうじ)/ 小辰    

演 - 岡田准一

林屋亭 どん兵衛(はやしやてい どんべえ) 

演 - 西田敏行



なるべくネタバレなしで大事なとこの“あらすじ”と“解説”していきたいと思うんですが、


歌舞伎町で活動する新宿流星会というヤクザの組員、

長瀬智也さん演じる“山崎虎児”が主人公。

そんな山崎には、借金に耐えられなくなった親が一家心中を図るも偶然自分だけが助かり、それから孤児院に引き渡されお決まりパターンでヤクザの道に進むことになったという壮絶な過去があった。

ある男の借金取り立て、所謂しのぎってやつから物語は始まりまして、

400万の借金をした男、西田敏行演じる“林家亭どん兵衛”の借金を取り立てに来た山崎。

返すあてがないどん兵衛はトイレから逃げようとするも、

経験豊富な山崎はトイレの裏手に先回りしこっそりどん兵衛の後を付いていったらば、辿り着いたのは浅草のとある寄席。

仕方なく寄席に入り客席に座っていると高座に上がって噺を始め出した男がまさにその借金男。

林家亭どん兵衛。

まさかの噺家で驚いたのも束の間。

その饒舌に話すどん兵衛の落語に心を奪われた山崎。

時折、どん兵衛の小ボケにバカ笑いしながら

完全に落語の物語に夢中になってしまう。

債権者と債務者の関係性を完全に忘れ一人の客となった山崎は、

人生で一番笑います。

最後のサゲ(オチ)を聞いたらば、立ち上がり拍手。

これがヤクザ山崎と落語家どん兵衛の奇妙な出会いであり、物語の出発点であります。

そうして落語が終わり、、、


山崎は素直に「感動した!」とどん兵衛を讃え、

散々褒めちぎった最後に、

「俺を面白くしてくれ、弟子にしてくれ」と土下座をして懇願する。

まさかさっきまで借金取り立てに来てた凶暴なヤクザに弟子入りをお願いされるとは思ってもいなく困惑するどん兵衛。

もちろん丁重に断るも山崎は引き下がらない。


最終的に、

噺を1つ習得するごとに授業料として山崎がどん兵衛に10万円を払い、

それをそのままどん兵衛が借金返済として山崎に「10万円」支払う。

という妙な、それでもってwin-winな契約を結ぶことになり、

山崎は弟子入りすることになった。

この契約こそ、宮藤官九郎さんの天才的発想力の象徴ともいえるシーンなんですよ。

こんなアイディア思いつかないもん。

これドラマの冒頭なんですが、

この後から色々話が展開されていくんだけど、

「このドラマってどんなドラマ?」って言われたら、この契約なんですよ。

端的に説明して面白いドラマは間違いなく面白い。

逆に面白いドラマは端的にこうゆうドラマって伝えられるとも言えるんですが。

兎に角、クドカンさんのドラマって毎回設定がぶっ飛んでるんだけど、

それでも「これどうなるんだろ?」っていう不安感じゃなくて、

「さあ、どうしてくれるんだー!」っていう期待感を自然と抱いちゃうんだけどね。

そうゆうわけでこの契約がこのドラマのあくまでですが、話の原動力みたいなものになります。

林家亭に入門したヤクザは“山崎虎児”の虎を一字取って、師匠から“小虎”という名前をもらい師匠の実家に住み込みで生活することになる。

とゆうわけで昼は噺家、夜はヤクザという2つの顔を持ち二足のわらじを履いた山崎だったが、やはりこれが根っからのヤクザでして、


師匠が稽古をつけても話しが下手以前に昔の言葉・作法は小虎の頭に入らないわ、


おまけに兄弟子や師匠に指摘されると逆切れしてすぐに殴りかかろうするわけで

師匠も手がつけらんない。

到底、一端の噺家になんてなれる気配がない。

夜になれば、

小虎はヤクザの顔に変わる。

自分の舎弟であり、組長の息子が攫われたり、

組の金に手を出して逃げたヤクザを殺せと命令されたりと、

いろんなトラブルに巻き込まれていくわけですよ。

この小虎に毎度降りかかる通常では起こり得ないヤクザならではの非日常が、

このドラマの一本の最高のエンタメを構築する重要なファクターになっていくわけなんですよ。



もう1個このドラマに重要な柱があるんです。

ダブル主演のもう一人ですよ。

それがどん兵衛師匠の息子、

岡田准一演じる”谷中竜二”。

どん兵衛には弟子であり、息子でもある竜二という男がいまして、

この竜二って男は、超天才と言われた新進気鋭の落語家で、

周りからえらい期待されていたんですが、

これまたある事件を起こしてしまい、親父に破門され、絶縁状態になってしまう。

そんな過去を背負いながら裏原宿でダサい服しか売ってないドラゴンソーダという店の店主をしているんですが、

めちゃくちゃダサいのよ。

で、ここが面白いのが、

若干のネタバレになるんですが、

このダサい服屋の開店資金
が400万かかったわけよ。

もうお分りだと思うんだけど、

父、どん兵衛が息子のために闇金融から借りた借金ってのがこの開店資金

だったことが後々判明するのよ。

で、それを取り立てたのが山崎であり、後の小虎。

ここで繋がるんですよね。

借金取り立てに来たはずが落語に惚れ込み弟子入りを果たし親子のような関係を気づいていく小虎。

一方、

事件を起こし家出をしてどん兵衛に借金まで作らせて親子の絶を切った竜二。

相反する選択をした二人だが、ひょんなことで二人は出会う。

この出会いが小虎の運命を変える。

竜二ってのはやはり根は落語家。

ウケたいとか、笑わせたい!という欲求の塊なんですね、

そのため面白いオチを求めちゃう性格の持ち主で、

なにか事件が起きれば面白そうだと言って、危険をかえりみず、事の顛末を見届けようとする。

人に話したら絶対ウケるって思ったら後先考えてしまうところがあるんです。

その性格をうまく小虎が取り込むんですね。

まったく想像のつかない古典落語の世界に手も足も出なかった小虎だったんですが、

毎回師匠から教わる落語の噺のストーリーは理解し、自分なりに咀嚼した上で、

ヤクザである自分の身に降りかかるとんでもない事件に毎回オチを見つけて、

師匠から聞かされた落語の噺と自身の体験談を超絶巧妙に織り交ぜ小虎なりにアレンジした創作落語を生み出し、客を魅了していくという話になっていくわけです。

これを毎回、師匠から教わる落語のテーマに沿って小虎が創作していくんです。

このドラマ自体が創作落語なんですよ。


ここで、話は逸れますが。

発想は面白いんだけど、これ結構ハードなことやってると思わない?

てゆうのも、ほとんどの人が落語を知らないと思うのね。

饅頭怖いとか寿限無とか、なんとなく知ってる人はいると思うんだけど。

多くの人が触れたことがない聞いたこともない落語の噺をどう視聴者に伝えるのかがこのドラマの最大の課題であるんです。

要するに、

聞きなれない落語の噺をドラマの中で説明するということは、

一歩間違えれば大変退屈なものになり得てしまう。

落語ってのは江戸時代の話で、言葉遣いも物の名称すら難しから、

これを下手に1から説明したら尺もなくなるし説明台詞ばっかりになってしまうんですが、

クドカンの脚本力ってのは凄すぎる。

元の古典落語を視聴者に伝えた上で、

小虎の実体験を古典落語に落とし込み、

最後に舞台に上がり納得いく巧妙なオチに仕上げていく。


ヤクザという職業を落語に落とし込む奇抜な、そして完成度の高いコミカル作品に仕上がってるわけですよ。



とにかく設定はめちゃくちゃじゃない?

ヤクザが噺家になるって話ってさあ。

でもね、こんなハチャメチャな設定で雑多な感じがするんだけど、

そこには登場人物の行動には全部理屈があって、

毎回毎回最後は綺麗に噺が落ちるんだ。

ヤクザってめちゃくちゃ怖いじゃん?

笑うことと真逆な職業。

でも、これを落語にかえちゃうとめちゃくちゃ面白いんだよ。

だからね、どんな不幸な出来事も落語というものを通せば全て笑いになる。


逆にも言えて、

どんな悲劇でも笑い噺にして話せばいい。

そしたら救われる。

どん兵衛はそれが落語であり、噺家の使命であるって思ってるんだ。

このドラマの一番言いたかったことだと思う。



こっからは深読みかもしないけど、

どん兵衛には小虎以外にも弟子が何人かいてね、

弟子の名前はどん兵衛が全部決めてるんだけど、必ず自分の名前の“どん”をつけて命名するわけよ。

毎回その弟子を紹介するってシーンがあるんだけど、

「こいつらはどん太、どん吉、どんつく、どんぶり・・・」

で最後の弟子に

「お前名前なんだっけ?」

ってわざと聞いて、弟子が

「うどんです」

て答えるくだりが随所にあるんだけどさ、

たぶんだけど、

これが本当の“天どん”だ!

ってことを暗喩したかったんじゃなかったのかなと。

ちょっとしたクドカンさんの遊び心かなと。

これは深読みね!



長くなりましたが、これだけは覚えてもらいたいのが、

『木更津キャッツアイ』の木更津ってあるでしょ?

この“津”はね、“す”じゃなくて“つ”に点々だから。


(終わり)


『タイガー&ドラゴン』

演:長瀬智也/岡田准一 脚本:宮藤官九郎

気になった方は是非Paraviでご視聴ください。

https://www.paravi.jp/title/63630


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