面会から3日で在宅介護を選択
変わり果てた父との対面から三日後、私は在宅介護の決断をしました。
そして決断の翌日、父は家に戻ってきました。
きっと、一般的にはこのスピードでの判断や帰宅は出来なかったと思います。
自分なりの備忘録と、誰かの判断のひとつになればと思い、記録しておこうと思います。
(あくまでも個人判断ですので、何かを批判するものではなく、また正しさを伝えるものではありません。)
経過
1月11日、容体がおかしいことからの10時過ぎに救急車で夜に搬送。
翌日午前3時にコロナ感染が確定。コロナ病棟で面会謝絶で入院。
2月7日転院。母が付き添い。この後すぐに家族に面会が要請される。
翌週に面会日程の調整をし2月20日に決定する。
2月20日、面会。
直後から在宅医療をしている方とやりとり。
2月23日、再度面会。退院を決断し、夜に病院へ電話。
2月24日、正午退院。自宅に移動。
なぜ退院したのか、できたのか
当初の面会時に、薬の副作用か睡眠薬の影響を疑う。
その後に在宅医療をしている知人とのやりとりをはじめる。
母が親類の介護の過酷さを聞いて、戸惑う。
二度目の面会で、嘔吐と食事をほとんど食べられない状態を聞き、主治医の方針や本人の意向などから点滴についてもしていない状態。
誤嚥性肺炎の可能性から、吸引を一日5回必要であり、やる側もされる側も過酷な時間が想定される。
ただ、複数の看護師が一刻も早く退院をしたほうが良いのではという話をしてくる。
「明日退院をしよう。」
結果的に、在宅医療で信頼できる医師が居たことで、全ての決断を早められました。
退院後の想像できない状態、懸念、万が一の決断について…
そのすべてを相談し判断することへの躊躇がなくなったことが、一番おおきなことだったと思います。
でも、在宅医療の主治医がいて、すべてについてすべての時間を一緒に見守ってくれるという安心感が決断に至ったのです。
いろいろなことを言われますが、すべて相談して回答がもらえる状況の中で、引き取ったほうがこちらの意向どおりにできるという状況が明確になってきます。
病院という限界
病院を悪く言うわけではありませんが、病院には限界があります。
実際に面会のときに、同じフロアに何十人と同じような患者がいる中で、先生も、看護師も、過酷な状況で働いていらっしゃいます。
でも、病院というシステムの中では、個別対応には限界があるわけです。
私が最初に面会した時に、「できるだけ早くここを出なければならない」という直感が働いていました。
私たちにとって医療とは、イコール病院というイメージがあります。
在宅での医療ということに想像が沸かない中で、たまたま数年前に会った同い年の友人が、在宅医療の専門医だったこともあり、何度か会う機会の中で在宅医療についての認識が私の中に出来たというのはとても大きいのだと思います。
病気=通院、入院。
それ以外の方法が選択できる時代になった。
ということも、私たちの認識のアップデートが必要なのでしょう。
自宅に帰ってから
緊急退院ですから、何の準備もありません。
介護ベッドもなければ、ケアマネも看護師もいません。
あるのは家と家族、そしてその決断をすべて受け入れてくれる在宅医療の先生。
帰宅に際して、最も懸念だったのは、一日5回の吸引作業。
苦しむ姿を見ながら、これを永遠とし続けなければならないことへの躊躇が一番大きな壁だったのです。
でも、帰宅して48時間経ちますが、一度も実施していません。
あの吸引は、何だったんだろう・・・
病院を責めるわけではありません。
でも、病院にいるから、やらなくちゃならないことだったのです。
吸引をすればするほど体力を消耗してしまうわけで、来月で90歳になる父の寿命を更に縮めているのではないかとさえ思っていました。
それが、一度もない。
最初の面会で、薬の副作用や睡眠薬の指摘をしたこともあって、その直後から薬の処方をすべて止めたら、次の面会では会話ができるようになりました。
そして、現在は薬が必要ないわけです。
あの薬は、何だったんだろう・・・
病院を責めるわけではありません。
でも、病院にいるから、やらなくちゃならないことだったのです。
プロデューサー
私は18歳で起業してから、たくさんの会社の経営や事業を作ってきた中で、ハプニングは当たり前、刻一刻と変わる中で状況を把握し随時判断・決断をしていく生活を30年以上やってきています。
だからか、私にとっては、動揺するどころか、自分の中でプロジェクトがスタートして、自分の天職ともいえるプロデューサーとしての役割が課せられている状態…です。
現状把握のために因果関係、関係者、環境、時間など、様々な制約の中で、何を最善とするかを決め、チームをつくりリソースを分配していく。
あー、こういう時のために身に付けたスキルなのか?と思うほど、冷静に判断をしながらプロジェクトが進行しています。
自分はやっぱり経営者なんだなーとか、プロデューサーなんだなーとか、客観的に分析しながら対応している自分がいたりなどw
それもこれも、在宅医療という制度と先生との繋がりがあったことが、すべてにおいて心強いのでしょう。
ふり返れば、これまでのあらゆる機会にも、頼りにさせていただく方々がたくさん周りにいるからこそ、僕は判断ができているんだということに、じんわりと実感し感謝が溢れてきます。
・・・ただ現実は、一日でスプーン1〜2杯程度のカロリーしか摂取できないことから、衰弱し続けていることは確実で、予断は許さない状況ではありますが。
そして、様々な方々に予定を調整いただき代行いただき、この時間を確保することに理解をいただけることも、替え難い感謝でいっぱいです。
ようやく週があけて今日から本当の準備が始まります。
自分の経験が、多くの人の何か気づきに繋がればと思います。
社会が、もっとやさしくなることを祈って。