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退勤電車で流した涙の理由なんて


優しさって、想像力だと思う。


騙されたままでいることも、気づいていないふりをすることも、ちゃんと優しさだったよね。

あなたの好きな色は、何色だろう。


弱さを曝け出すことが強さだとするならば、私はきっと、そこで生き抜くことはできないだろう。

正解なんてどこにもないはずなのに、正解を追い求めて、必死にもがいていたあの頃。

目を背けたのではなく、優しくしてあげたかった。

せめて私だけでも、私の味方でありたかった。

私は、私の好きな色を知っているはずだから。


ずっと、不確かなものを好きになれなかった。

そんな自分自身も認めて、抱きしめてあげたかった。


私が私であるために、何かを犠牲にして、殺して、潰して、閉じ込めて、そこにそっと蓋をする。

そんな私の偽りを、嘘を、どうか、どうか愛してほしい。

泳げないふりをして、あなたの深い愛に溺れていたい。


私の教えた花の名前をずっと覚えていてほしい。

花が咲く瞬間だけを思い浮かべていてほしい。

枯れないでね、ずっと。



ある日の通勤途中、道端で無様にひっくり返る牛丼に出逢った。購入した人がどんな気持ちで家に帰ったのかを想像して、胸が痛くなった。お腹を空かせて、鼻歌でも歌いながら歩いていたのだとしたら、突然手から離れて地面に散らばる牛肉と白米たちを眺めながら、いったいどんなことを思ったのだろうか。

美味しく食べられることを楽しみに連れ帰られていた牛丼は、どんな気持ちで地面に叩きつけられたのだろうか。

そういえば、とろ〜り3種のチーズ牛丼にタバスコをちょこっとだけかけて食べるとすっごく美味しいって、まるで自分だけの秘密を誰かに教えてあげるみたいに話をしてくれたあの人、元気かな。

36歳なのに、無邪気ですごく可愛かった。

散らばった牛丼と、購入者の切ない気持ちがきちんと成仏しますように。


「遊ぶ」と「暮らす」は違うって、フランス人のお母さんが私に言った。

「恋人は優しい?」と聞かれたから「優しい」と答えたら「一緒に暮らす前はみんな優しいよ」って言った。

私の恋人は、多分、ずっと変わらずに優しいままだよ。そう思ったけれど、黙って話を聞いた。

彼女に幸あれ。旦那さん、優しくしてあげてね。


春の香りが懐かしくて、どこか寂しい。

この季節はすごく好きだけれど、苦しい。


頭をポンっと触られて、髪の毛をくしゃっとされるのが、すごく好きだった。

弱った姿を見て、涙が止まらなくなった。

そんな私にピースをして、笑ってくれたよね。

ごめんねじゃなくて、ありがとうって、笑顔で言いたかったのに。

ずっとずっと、私の大切な人。宝物。

今年も桜が咲く頃、会いに行きます。

スーパードライで乾杯しようね。

私、24歳になりました。

天国で、また会いましょう。





それでは。



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