q

感情と、言葉と、ほんの少しの本音と、私と

q

感情と、言葉と、ほんの少しの本音と、私と

最近の記事

  • 固定された記事

遺書

葬儀には、自分の持っている中で一番お気に入りの服を着て、参列してください。喪服は禁止とします。 香典袋は、開けるときに楽しいので、可愛いキャラクターのポチ袋なんかにしてください。アンパンマンとかドラえもんとか。サンリオのだと、私がより喜ぶかと思います。中身は小銭だって構いません。ギザジュー100枚とかでもいいよ。見つけたとき、なんか特別な気分になるよね。 遺影に使う写真は、大学の卒業式の日、家族に囲まれながら撮ってもらったものがいいかな。今までで一番幸せそうな顔をしている

    • 着飾らない日々と

      遠くに見えて、ずっと近くにあるもの。 近くに見えて、もっとずっと遠くにあるもの。 君の欲しいものを、私は多分ずっと持っていて、私の欲しいものを、君が多分ずっと持っている。 まるで答え合わせをするかのように、君が私をそっと見つめるから、照れたふりをして逸らした。 傘を持っていない日に限って雨が降るとか、半熟のゆで卵が鞄の中で割れてしまうとか、私の人生ってなんかずっとそんな感じで、化粧が上手にできた日に恋人に会えないとか、おろしたばかりの服をすぐに汚してしまうとか、やっぱ

      • 覚悟

        2日間眠れなかった。眠らなかった。 ただの小さなかすり傷のはずだった。時間が経ったらかさぶたになって、そのまま綺麗に剥がれて、平らになる。まるでそこに傷なんてなかったかのように、元通りになる。 そう思って放っておいたら、いつの間にか傷口が化膿して、どんどんどんどん広がって、腐敗した。 激しい動悸と震える手を必死に抑えながら、平然を装った。苦しかった。 差し出された手を、振り払うことができなかった。 許されている気がして、認められている気がして、嬉しかった。満たされた

        • 匂いと記憶

          懐かしい、優しい匂いがした。 振り返っても、そこにはもう何もなかった。 季節の移り変わりを、大切な人たちの表情を伝って感じられることが、たまらなく嬉しい。 夏の記憶が鮮明に残っている。 二人きりでした花火も、部屋の中で食べたケーキも、泣きながら歩いた公園も、暑い中ひっついた夜も、海も、空も、山も、星も、ずっと覚えている。 思い返せば、欲しいものはいくつもあったけれど、手に入れても仕方のないものばかりだったように思う。 欲しいものを欲しいと言えるあなたの貪欲さが、羨

        • 固定された記事

        遺書

          切りすぎた前髪すらも愛おしいってさ

          心の穴を埋めたくて、人に優しくした。 君のつく優しい嘘に救われていたのは、きっと私だけではなかったと思う。 気がつかないふりをして、君の優しさに甘え続けることを、どうか許してほしい。 一晩中泣き腫らした目が、痛い。 伝わらないことのもどかしさとか、理解してもらえないことの苦しさとか、そういうの、もうすでに何度も何度も通ってきたし、ちゃんとわかっているつもりではいたけれど、痛感して息苦しくなった。 助けてが言えない。たった数文字の言葉が口に出せなくて、いつも遠回りをし

          切りすぎた前髪すらも愛おしいってさ

          夏と本音

          今にも溶け出しそうな身体で、必死に走った。 愛って、交差するものだと思っていた。 複数の線が一つに重なるその瞬間に、私は確かにそこに存在していられるだろうか。 耳を開けた。25歳、生まれて初めて身体の一部に穴を開けた。三箇所開けた。恋人に開けてもらった。 彼への絶対的な信頼からか、不思議とそこに恐怖心はなかった。 淡々とピアッサーを扱う彼が、いつにも増して逞しく、頼もしく感じた。 初めて彼の隣で迎える夏。初めて耳を開けた夏。染まる。夏が私を染める。私が、日々が、夏

          夏と本音

          空白

          私だけにしか触れることのできない世界で、私だけが知っていることがある。 誰にも話すことのないこの秘密が、私をいつもほんの少しだけ強くしてくれる。 「いつも読んでるよ」って言われて、驚きを隠せなかった。 タルタルソースのかかった牡蠣フライが絶品で、コロッケは一つ45円の破格。生ビールとハイボールが一杯198円の格安居酒屋にて。 数ヶ月ぶりに顔を合わす彼女は、以前よりも綺麗になって、どこか少し大人の空気を纏っていた。 「昔の自分を見ているみたい」なんて偉そうなことを口に

          明日この世界が終わるとしても

          不確かなものに脅かされて、確かなものを疑うなんて愚かだ。 人は孤独が生み出した愛に救われて、きっとまた別の誰かを救うのだろう。 誰かの一番でいたい。何かで一番になりたいと思うよりも、それはもっとずっと強い欲のような気がする。だから人は恋をして、自分が一番でいられる場所に身を置くのだろう。 誰も一番にはせず、誰の一番にもなろうとしない彼は、いつもどこか何かを欲しているような目をしている。彼の視線の先には何があるのだろうか。誰が映っているのだろうか。知りたいと思ってしまうの

          明日この世界が終わるとしても

          キラキラした日々ではなくたって

          信じることと愛することの違いを知って、求めることと与えることの意味を知った。 夢で逢えたら、あの日の夢の話の続きをしよう。 書きたいことはたくさんあって、留めてはいられないほどに感情は日々揺れ動いているはずなのに、どうしてか下書きばかりが募っていく。私も所詮は凡人だ。そんなわかりきった事実を痛感して、その場から逃げ出したくなった。 エッセイストになりたいなんて大それた夢を少しも笑わないで聞いてくれた君に、自分で書いた本を一番に手渡すことがまた私の新しい夢になった。私の言

          キラキラした日々ではなくたって

          未知

          なんでも知っているような気になって、本当はなんにも知らなかった。 何を書いても、何も書かなくても、やっぱりどこか納得はできなくて、何を伝えても、何も伝えなくても、やっぱりどこか満たされなかった。 他人を羨んで得れるものなんて所詮、嫉妬という醜い感情くらいだと知っているはずなのに。 「あれあるよ」って私の好きなものを先に見つけて教えてくれたり、当たり前のようにいつも使っているものを用意してくれていたり、誰かが私の日常に溶け込んでいくことに幸せを感じる。 そういうものにき

          きっとまだ運命を信じていたい

          何かを手放して、何かを手に入れる。 そんな繰り返しの中で、私たちは息をしている。 永遠に続くような気がする瞬間を大切にしたい。くだらないことで腹を抱えて笑ったり、一つの鍋を囲んでつついたり、近くのコンビニまで歩いて話したり、深夜に大きな声で歌ったり、映画を観て泣いたり、そんな一瞬一瞬の積み重ねが、私という人間を象る。 いつかあの瞬間のときめきを忘れてしまっても、記憶の中の私たちが笑っていられるのなら、それでいいような気がする。 出逢いは常に別れを内在しているけれど、い

          きっとまだ運命を信じていたい

          あの日の空に救われて

          いつの日か彼女と見上げたあの空に、私は今日もそっと背中を押されている。 いつの日か彼女が紡いだあの言葉に、私は今日も優しく抱きしめられている。 「今は少し休んでも大丈夫だと思います」 「自分のことゆっくり労ってあげてください」 「もう十分がんばっていると思います」 電話越しに罵倒される毎日。恋人にも、家族にすらも理解されないと、心の中でずっと孤独を感じながら、黒いスーツを身に纏い、慣れないヒールを履いて、目に涙を溢れそうなくらい溜めて、駅から職場までの道をゆっくりと

          あの日の空に救われて

          好き

          早朝の空の色 助手席から見る横顔 風に吹かれる金木犀の香り 永遠に思えた一瞬 電車の窓から差し込む光 彼の匂い クリームソーダ 深夜の点滅信号 ほろ酔いで歩くこと 待ち合わせの時間 ショートカットの女の子 こたつで眠ること コインランドリーの前を通るとき キラキラのネイル 電車に揺られながらする読書 夜の河川敷の散歩 誰かの腕の中で眠る夜 肉汁たっぷりのハンバーグ サプライズを考えている時間 お花屋さんに寄る帰り道 冬の夜の匂い 身体

          赦す

          私のことを赦してほしい。 私は君を赦したい。 赦すことは、妥協することではない。 赦すことができなくて、ずっと苦しかった。 時間が経つと薄れていってしまうものに怯えている。 そのまま保っているためには、何かを犠牲にしなければならないのだろうか。 「私だっていろんなこと我慢してるのに」 普段は絶対に口にはしないそんな言葉を吐いて、ふと我に返った。きっとそれは私の本音で、甘えだったと思う。 弱いのに強いふりをしてしまうし、寂しいのに満たされているふりをしてしまう。

          枯れない花を贈って

          誰かの幸せのために自分の幸せを手放すことを愛だとするのなら、愛とは残酷なものだと思う。 愛と欲望の狭間を逡巡する私を嘲笑ってほしい。 私も、なんとなくで花を買う歳になった。 毎日、水を替える。大切に、丁寧に、愛情を注ぐ。「子どもと同じ」って、どこかの誰かが言っていた。 花屋さんの前を通る瞬間は、いつも胸が躍る。あの匂いが好き。誰かの愛情がたくさん詰め込まれた花たちを、じーっと眺めるあの贅沢な時間が好き。 「私、お花屋さんになりたいんです」 いつかの私の言葉、そこに

          枯れない花を贈って

          心が壊れた日のこと

          消えないでと願いながら、消えていく虹を見つめた。 行かないでと願いながら、遠くなる君の後ろ姿を眺めた。 季節が冬から春に移り変わるあの生温い風が、私の頬に優しく当たるたび、いつも同じ記憶が頭をよぎる。カーテンから差し込む陽の光が、あの頃の私にはどうにも鬱陶しくて、一ミリの明るさもない部屋の薄暗さに至極安心していたっけ。 痛いときに痛いと言えない苦しさとか、助けてを言葉にできない脆さとか、そういう感情に、私の心の悲鳴に耳を傾けることを恐れて、避けて、逃げて、そして壊れた。

          心が壊れた日のこと