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男が好きで、男が嫌いで。#3ーおとうさんといっしょー

こういった自分探しの文章を書くときに、家族の話をラスボスのように扱って、結局の原点はここだった! みたいな結末にしてしまう類のものを、とてつもなくダサいと思っているので、こんな話題はとっとと書いてしまうべきだと個人的には思っている。

一番身近な「男」と言えば、自分にとっては父親なのだから、どんなコンプレックスや因果があろうが、折り合いがついていなかろうが、いつかはここと向き合わなければいけない。

私が趣味でやっているPodcastneoおじさんの番組内でも、今回と同じ「おとうさんといっしょ」というタイトルで似たようなことを話しているが、話しきれなかった部分を今回きちんと書きたくなった。

男の子たちの人生にとって、「父親」というものがどれほどの影響を及ぼすのだろう?

不在であろうとなかろうと、世間は男たちの人生と父親の関係を紐付けしたがる。いても、いなくても「父親」というのは、人生において大きな存在感を放っていなくてはいけないらしい。(ここを深く考えすぎると長くなるのでこれ以上は書かないけれど)


ー僕の「お父さん」という人

最初に言っておくが、僕は父のことが嫌いではないが、完璧に母の味方である由緒正しきマザコンだ。それを以って僕のお父さんの話をしよう。うわ、お父さんなんて呼んだことないや、鳥肌! 

僕の父を一言で表すとするならば、人たらしの遊び人だ。

大酒飲みで、博打好き、ひと回り年の離れた兄弟が二人もいる末っ子なので、呼吸するように人に好かれてしまう。いつも周りには人がいて、お調子者が極まってどこに行っても人気者。そういう人だ。

なぜこんなにも父が他人から魅力的にうつるのかというと、彼は何をしていても楽しそうなのだ、母が彼に惚れた理由もそこだと言う。
人生には浮き沈みがあるはずのに、どうしてそんなに楽しそうに生きていられるのか、それは彼が他人に一切興味がないからだ。
だから人に期待もしないし、理解をしようともしない。その分お調子者の彼に、人は期待してしまって、理解しようと苦しんでしまうんだと思う。

彼自身、「俺は友達なんて一人もいない」と平気で言ってのける。(隣近所に幼稚園からの幼なじみが住んでいるのに。なんという強メンタル。なんという薄情さ。)

この点だけで話すと、自分が真逆の人間(人に興味津々で、理解したくて仕方ない)だから、その辺りの反りが合わないのだろうなとも思う。

ーパパの大恋愛

そんな他人に興味を持たない彼の大恋愛を僕は知っている。母以外の女性との恋だ。

僕が小学2年生の頃だっただろうか、彼は他の男の子供を妊娠したホステスに恋をした。
幼心に覚えているのは、パパが帰ってこない夜が続いていたこと、ママが夜な夜な1000ピースのジグソーパズルを次々に完成させていたこと、7つ下の弟の父親参観には誰が出るの? と心配していたこと。

自分にとって嫌な記憶なんだろう。さくらももこ並みに記憶力には自信があるのに、それだけのことしか覚えていない。

婿養子の彼は、一緒に住んでいる義理の母(祖母)に「僕は今大恋愛をしているんです!」と、言い放つほどその恋に盲目になっていた。

(あ、暗いトーンになってしまいましたが、やっぱり子供たちは捨てられないと、元のサヤにおさまっておりますし、色んなことがありながらも両親は18歳の恋人の時から60歳の夫婦である今の今までずっと一緒に生きています。ただ、どこにでもある夫婦のいざこざがパワフルな父の性格に加え、明け透けな母の性格と相まって、子供である僕たちにまで話が伝わってしまったというだけのことです。)

僕がマザコンである大きい理由の一つに、この”パパの大恋愛”がある。
勘違いしないでいただきたいのは、これで父のことを軽蔑したとかいう話ではなく、これを機に僕は早く大人になりたいと切に願い、息子の一面と同じ速度で母の人生の相棒として大人になってしまったというだけのことである。

ただこの事件以降、僕は父のことを「パパ!」と手放しで甘えられず一緒に住んでいるおじさん、くらいの気持ちで接するようになったのは紛れもない事実だ。一度目の前からいなくなろうとした人間だから、その傷は深かったのだろう。いまだ男にうまく甘えることができないのはこれが起因しているのかもしれない。

ーおとうさんと全部いっしょ

片や、僕の小学校からの親友に父親を神格化している男友達がいる。
彼は、お父様の歩んできた人生を寸分たりとも狂うことなくなぞっている。

高校を卒業し大手の会社に勤続。31歳にして今年で14年目のベテランだ。
彼はとにかく早く結婚したがっていた。(彼のお父様がそうしたように)自分も子供を授かり、自分の妻の家族と一緒に暮らすことが彼の人生のゴールだった。

しかし、彼の誤算はお父様がそういう形におさまるまでの過程を知らなかったことである
時代も違ければ、環境も選択肢も違う。彼のお父様が自分と同い年の時どんなことを考え、本当のところなにを思っていたかなんて知らなかったのだろう。

彼がお父様のように生きてみようとしたはいいものの、彼も僕同様、どこにでもいる31歳の男。なにかを諦められない気持ちや感情、欲求がたくさんあるのが目に見えてわかる。いや、もしかしたら、人よりも青春できていないと感じてしまっていて、僕には想像もつかない、とてつもなくデカイ漠然とした焦燥感を感じているのかもしれない。

だって結局よそに女作ってるんだもん。もちろん優先順位が分からないほどのバカではないから、僕の父同様に離婚はしないと思うけれど。

ー「お父さん」みたくなりたくないよね。

さて、父親に対しての考え方がまるっきり違う2人が共通の幼馴染の独身さよならパーティーにお呼ばれした。男6人、場末の風俗街でハメを外そうという算段で人のお祝いに託つけて集まった。

景気づけの居酒屋でなぜか、父親って……  という話になった。(恐らく、僕が酔っ払うと笑い方や挙動が父に似てきたという話からこの流れになったと記憶している。)

「年取るにつれて、こっちが真剣に話しているのに受け止めてくれない父の茶化し方とか、夜遊びの仕方が似てきて嫌になっちゃうよ。それに一番最低な姿を知っているから、自分がそうなってしまうのが怖くてたまらない」と吐露した。(祝いの席でそんな話をするなよ)

驚いたことに、この告白を聞いた3人が各々自分と照らし合わせて食らってしまったのだ。(1人は離婚で父親と絶縁状態、1人は父親が色狂いだったことを大人になってから知り、もう1人は奔放で身勝手な父親を心底憎んでいた。)

これに共感しなかったのは、両親が恋人同士のように仲のいい主役の友人と先ほど話した父親信仰を止めない彼だけだった。

父親に似てしまうのを恐れている4人に共通していたのは、歳を重ねることで、親の気持ちというよりも、1人の男としての気持ちがわかるようになってきてしまうということだった。

各々が父親のようになるのが怖いと打ち明け合い、自分の中の父親を突きつけられたようだった。

でも。そりゃそうだよね、人間だもん。とも思う。
家族ができたからって自分の全てを投げ打つことなんて容易じゃないし、家族を養うというスイッチだけオンにしていたら、それはそれでオーバーヒートしてしまうよ。とも。

ー僕の「お父さん」との付き合い方

自分の父にフォーカスし直してみる。
特に趣味もなく、友人もいない。自分が今感じている気持ちがなんなのか上手に言語化できない彼を見ていると、そりゃおかしくなってしまうよな。と今なら理解はしてあげられる。一寸男盛りをどうしよう? と焦る気持ちも死ぬほどわかる。

けど、自分はそうなりたくないと心の底から思っている。

それでも”血”というものは恐ろしい。DNAはコントロールできない。だから、自分はそれと戦わなければいけないし、受け入れて許さなくてはいけない。そうしないと、自分の核に近いところを拒絶することになってしまうから。

あれ? 色々割り切ってますヅラして強気に書き出してみたはいいものの、結局自分の中に父をこんなにも感じてしまっている。
アイムソーリー、パパ。生きてるうちに分かり合いたいね……。
って、ちょっと待って! 俺も人たらしの彼の術中にハマってしまっているではないか!! 諦めろ自分!! 彼はそういう人なのだから!!

でも大丈夫。僕のDNAは人たらしの父だけで構成されているわけではない。
母はずっとあることを子供の僕に言い続けていた。

「○○ちゃん(浮気相手のお腹の中にいた子)は、頭がヘコんでいるんだよ」

父の大恋愛が笑い話になってからこのフレーズを幾度となく聞いた。
ふーん。と、意味がわからないまま、過ごしていたのだが、1年ほど前にようやくこのブラックジョークの意味を理解できた。

父が妊婦とセックスしていたから、お腹の中の子の頭にチンチンが当たってヘコんでしまった。と。

そんな最低で最高なジョークを母は子供の僕に言って聞かせていたのか!?
ほらね、そんなこと言う母を好きにならずにいられないでしょう? 人たらしの父と付き合うにはこういうユーモアがないと乗り切れないのだろう。さすが長い付き合いだけのことはある。こういうユーモラスな遺伝子も僕の中には組み込まれているのだ。

ただ、父の勃起したチンコを見たことがないからなんとも言えないが、自分のモノを見る限りは、赤子の頭がヘコむほど奥まで届くはずないよなと思い悲しくなる。

お母さん、それはあなたが一番よく知っていますよね?


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