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ウクライナ侵攻後の世界

どうやらインドは、ロシア産原油の輸入量を増やしているようです。デイリー新潮の電子版に、藤和彦さんの書かれた記事が掲載されています。

ロシアへの経済制裁で、欧米が自らも痛みを感じている中、インドだけがいい思いをしている…これは、ケシカラン。
※実際には、インドだけでなく、他にもそこそこいい思いをしている国があるかと推測しています。

近年、インドは米欧日との連帯を強化してきているのだから、経済制裁にも積極的に協力して欲しい…。そう願うのは、どうやらアメリカのバイデン大統領だけではなさそうです。イギリスのジョンソン首相も、4月21日、22日とインドを訪問し、モディ首相と会談をしています。もともと今回の同首相によるインド訪問は、両国の経済協力関係を強化することが主目的。でも、インドがロシアへの経済制裁にもう少し協力的になれるのなら、それに越したことはありません。事実、首脳会談ではロシアによるウクライナ侵攻のことも話題になったようです。

しかし、22日にインドで記者会見を行ったジョンソン首相の発言では。「ロシアに対するインドの姿勢はよく知られているところであり、どうやらそれを変えることはできないようだ」。
「インドはロシアとの歴史的なつながりが深く、その経緯はよく理解されなければならない。それでもインドは、ブチャで起こったこと(注:虐殺のこと)については、強く反対しているのだ」。

ジョンソン首相のこの発言。まるでモディ首相の気持ちを代弁したかのようです。

私の中でこれまでに培われてきたジョンソン首相の「強硬な」印象からすれば、意外に感じるほどの包容力。もちろん、この発言の裏には、「インドへの期待外れ」ではなく、「ここでインドを仲間外れにしてはいけない」という危機感があるのでしょう。

ロシア軍によるウクライナ侵攻は、ロシアが国連安全保障理事会の常任理事国であることを鑑みて、とても許せるものではありません。同時に、ウクライナでの戦いが終結したあと、世界は新たな安全保障の枠組みを構築する必要に迫られます。その時に、インドが米欧日側にあるのか、あるいは独自の立場にあるのかで、シナリオが大きく変わります。

プーチン大統領の「領土拡大」思考は、とても正気とは思えません。しかしロシアには、正気の人たちだっています。

2022年1月31日。全ロシア将校協会会長のレオニード・イワショフ退役上級大将(78)が、同協会のホームページに声明文を発表しています。それが2月16日に、朝日新聞電子版に報じられました。ちなみにウクライナ侵攻が始まったのは、今からちょうど2ヵ月前の、2月24日です。

ここで「全ロシア将校協会」のイワショフ会長は、ウクライナ侵攻に反対するどころか、プーチン大統領に辞任するよう求めています。朝日新聞のこの記事では触れられていませんが、同会長は同じ声明文の中で、ウクライナがNATO加盟を希望するに至った経緯を、次のように述べているのです。

「ロシアの国家モデルと権力システムが魅力的なものである必要があった。しかし、ロシアは魅力的なシステムを作ることができなかったので、ウクライナは、欧米に行ってしまった」

なんという、冷静かつ的確な分析。こういう退役軍人がロシアにいることに深く感銘しますが、ただ開戦後、全ロシア将校協会が口をつぐんでしまっていることは残念です。もちろん指揮官の命令に従う軍人として、開戦後に最高司令官たるプーチン大統領に反する発言をすることは、軍人としての彼らのモラルに適さないことなのでしょう。

ウクライナで連日起きていることの報道を目にするたびに、まったく気が重くなります。また、攻めている側のロシア軍だって、若者が死んでいることは、同じように悲しい。しかし世界は、ウクライナ後、平和への新たな枠組みを構築する必要があり、そのためには過剰な「区別」、すなわち西側だ、東側だ、なんだかんだということを乗り越えていかなければなりません。それは、「対立」に根差した平和的枠組みには限界があり、できるだけ「相互尊重」に基づいた考え方で枠組みをつくるほうが望ましいと思えるからです。

ロシアにだって正気な人がいるのですから、彼らと協力して平和的枠組みを構築できれば、さらに安心・安全なのではないでしょうか。

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