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38/n シン・新品でも目立て チェンソー、ソーチェーン(チェンソー用チェーン)、目立ての正しい理解

ソーチェーンサービスジャパン(略: SSJ)です。

SSJは全国向けにソーチェーンのオンライン目立てを事業として行っています。宣伝を兼ねて、タイトルの記事をシリーズ化してnote上に公開することにしました。本記事の内容はXアカウントのhttps://twitter.com/SSJP2023 固定ツイートで先行公開していますが、noteで公開する内容は、Xアカウントで公開中の資料 「4D Sawchain Study」の「 V.1.25」以降の内容となります。


「新品でも目立て」

「プロは新品でも使う前に目立てをする」

字面だけだと、どこか神秘的で儀式的な行為に感じるかもしれませんが、そこにはちゃんとした理由や効果、新品ならではのソーチェーンの事情があります。36/nで紹介した「純正メーカー」の「新しいこと」も、新品時の性能向上=新品の目立ての手間をなるべく減らすという側面もあります。ということで、今回は丸ヤスリの使用を前提とした「新品でも目立て」について具体的に紹介します。試したい方は試してみると、また違う楽しさを発見できるかもしれません。

頂点が更に鋭くなる

どこが頂点でその鋭さがどれぐらいでどう大事かというのは過去回でも紹介してきました。新品の頂点は工場で刃付けをされた時点から、実際に新品を使うその時までには、多少摩耗した状態になっています。カッターのパーツはチェーンの形になってから研磨されるわけではなく、チェーンの形になる前段階で研磨されています。研磨後にライン上をカッターパーツ単体でガチャガチャされて流れていきますし、組立ラインには「へいお待ち!」と、ザザァーと入れられるわけです。組立後に研磨することを謳ったメーカーもありますが、それでも包装前後の工程や、輸送中のチェーン同士の擦れ、リールチェーンからの切り出し作業中にも案外いろいろなところに当たっているものです。頂点の鋭さを更に出す場合は力を入れて擦ってはいけません。感覚的な話で難しいのですが、「ゴリゴリ」や「ガシガシ」ではなく「シャッシャ」とやる程度です。

エッジのバリが取れる

ソーチェーンのカッターの刃付けも金属加工ですので、刃付けをする時は熱対策とバリ取りでクーラントをウォータージェットのように吹き付けながら研磨しています。

ジェットでバリが完璧に取れるわけでなく、新品のチェーンでもカッターを外側を指でなぞるとバリを確認することができます(純正メーカーではバリを極力少なくしたモデルもあります)。包丁のカエリ取りの部分ですが、ソーチェーンが切るのは野菜ではなく木であり、動力源の力も相まって、使えば1~数回のカットでバリは自然と飛んで無くなります。しかしながら、このバリが残っている内は僅かに抵抗となるのです。バリは頂点の鋭さを出す時に合わせて取れますので、バリを無くそうとカッターの外側から別で落とす必要はありません。逆に刃先が潰れてしまいます。また手研ぎでも完全にバリ0にはなりませんし、手研ぎの力で出るバリは機械に比べて少ないので、目立て後にバリ0を目指す必要もありません(逆に上刃や横刃の外側にバリが出ないのは研ぎ切れていないサインです)。

エッジの欠けが均される

新品が実際に手元に届く迄に、頂点が僅かに摩耗しているだけではなく、エッジの辺にも僅かに傷が入ります(スノーボードのプレチューンの効果やその背景と一緒です)。砥石の砥粒の性質もあり、(肉眼ではほぼ判別不可の)周りより深い線が辺の一部に入っていることもあります。

欠けの均しも頂点の鋭さ出しとまとめて行えますので、特段神経質にならなくて大丈夫です。

研磨面の表面積が増える

新品の研磨面に、元の線を打ち消さない程度に、更にヤスリによる線を上書きすることによって面の表面積が増えます。これにより摩擦抵抗が減ります。これもあまり力を入れてはいけません。うーん…意味が分からない、という方は近所の公園や海岸の砂に熊手で色んな方向から線を書きに行きましょう(大真面目)

新品の研磨面

ガレッドの目立て

ガレッドは切屑が流れるだけの負荷が軽い部分ですので、エッジと違い、使う内に自然とバリが取れません。過去回でトンネルやチップフローといった語句と合わせて解説しているので、興味の有る方は検索してみてください。

新品のホイール形状を打ち消す

これ以降の内容は難易度が上がるので、ご自身の目立てに自信と確証が持てる段階で行うことをお勧めします。

ホイールの「平面」で削られたカッター部分を「円」で削り直すことにより、頂点の鋭さや仕上角、切削角が見た目ではほとんど変わらなくても、切削中の抵抗を減らすことができます。但し、切れ味の持続性とその耐久性は落ちます。

横刃仕上角を立てる=横刃仕上角を鈍角化させる≒ワーキングコーナーを削る

過去回参照。立てる程度を強くする程、頂点に対してワーキングコーナーが削れて後退するので振動が少なくなり、クロスカット=玉切りの切れる速度も上がります。削る量が多くなる分で難易度が上がります。周辺にもヤスリが当たるのは避けられないので、頂点の鋭さや切削角を逆に鈍くさせないようにすることが大切です。

左右のカッターを揃える

どのメーカーの新品であれ、新品時は左右に限らず、1つ1つの研磨具合が微妙に異なります(つまりデプスも微妙に異なっています)。異なるのはいわゆる「カッターの長さ」と、「頂点からワーキングコーナーに掛けて現れる直線の長さ」です。以前からの繰り返しになりますが、ソーチェーンはリジットでなく、フレキシブルな刃物であるので、これらの差が即不具合にはなりません(レールの偏摩耗の具合の許容度には関わります)。揃えることで確かにロスは減りますが、ここまでやるなら先述の「ホイールの直線」と「丸ヤスリの円形」も合わせないと効果は半減します。「カッターの長さ」は見た目や数値として分かりやすいですが、揃えることに固執し過ぎてもいけません。逆に、新品や「いつもの目立て」後に切れ曲がりの不具合が出るような時はバーを疑ってください。

デプスを下げる

デプスには規定値がありますが、カッターの各角度と一緒で上げ下げの選択肢があります。また、息の長いソーチェーンのモデルは、新品時のデプスは概ね規定値より高くなっています(プログレッシブを常用していると気付きやすいと思います)。デプスの規定値から上げるとは、即ち目立ての際にデプスゲージは削らないということです。純正仕様と比較したバー長にもよりますが、新品時で下げる場合でも0.01〜0.1mm前後の世界になってきますので、目立ての自信や確証が持てた段階でも、更に使う本体+ソーチェーン&バー&ドライブスプロケット(=リムやスパー)の仕様に慣れた段階で行うことをお勧めします。

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