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37/n シン・ソーチェーンの「耐久性」 チェンソー、ソーチェーン(チェンソー用チェーン)、目立ての正しい理解


ソーチェーンサービスジャパン(略: SSJ)です。

SSJは全国向けにソーチェーンのオンライン目立てを事業として行っています。宣伝を兼ねて、タイトルの記事をシリーズ化してnote上に公開することにしました。本記事の内容はXアカウントのhttps://twitter.com/SSJP2023 固定ツイートで先行公開していますが、noteで公開する内容は、Xアカウントで公開中の資料 「4D Sawchain Study」の「 V.1.25」以降の内容となります。

「ソーチェーンの耐久性」

 SSJでも今まで使い分けが曖昧になっていたと思いますが、同じ1本のソーチェーンの中でも、「チェーンの破断やパーツの曲がりに対する耐久性」と「刃の持続性(刃に対するダメージ)に関わる耐久性」の2つがあります。「フルチゼルとそれ以外の話ですか?」という方、「ゲージのことでしょ?」という方、「ははぁん…上刃と横刃の角度ですね?」という方、それぞれにもう1歩踏み込んだ内容の記事になります。知ったところで役に立つかわかりませんが、「新しいチェーン」に出会った時の判断の参考になることを願います。

シャシーの把握=ソーチェーン分解図


赤丸部分がカッターパーツのカッターの部分

切れ味の持続性に関わる耐久性

カッター部分の耐久性 その1

おさらい+αです。カッターの形状によって、フルチゼルよりセミチゼルやマイクロチゼルの方が、切る量(㎠)に比較して切れ味が持続します。原理は以下です。

  • カッターの頂点(カッティングポイント)を支える周りの金属量=マウントボリューム

  • カッターを上から見た場合のワーキングコーナーがあることによる、カッターの働き中の横ブレ抑止(横ブレが強い=頂点の摩耗が早まる)

 どの形状のカッターでも上&横の仕上角を鈍角化させれば刃持ちが良くなる…というのは、マウントボリュームの増加と切削角の鈍角化によるものです。また、仕上角を鈍角化させるとカッターのヒットから頂点に集中する負荷が、時間的に早く上横の刃に分散されます。この「負荷の分散」には、仕上角だけでなく頂点からトップエンドのトッププレートチルトも関わります。上刃仕上角を鈍角化させると頂点とトップエンドの高さ座標のギャップも少なくなります。

頂点とトップエンド

話は少し変わり、セミチゼルやマイクロチゼルで横刃仕上角を90度に近付ける、つまり横刃を立てて鈍角にするほど、カッターを上から見た時にワーキングコーナーは頂点に対して後退します。そして振動少なく切れるようになります。考えられることは、後退したワーキングコーナーが、前のカッターが切り出した縦横で凸凹の軌道に当たり辛くなったということです。

カッター部分の耐久性 その2

 90と91や、61と63ではカッターの肉厚が異なります(更に、91より63の方がカッターも厚くなっています)。325-050のナローカーフではこんなことはありません…( )。

左90PX、右91PX
カッターの向きが揃っていません…が、左から2番目の63PS3のカッターの厚みに注目してください

 カッターの厚みは推奨排気量の違い=カッターの曲がりや折れに対する違いだけだろうと思うかもしれませんが、これが切れ味の持続性にも影響するようです。「ようです」というのは、メーカー時代にも90は91より切れ味の低下が早いや、オレゴンよりスチールの方が切れ味が長続きする(当時は硬さの問題だけだと思っていました)というのはいろんなとこで聞きましたが、特にその話題は追っていなかったのと(モデルが分からないとどうとも言い難い為)、「ジオメトリー」の重要性と各メーカーの設計開発の真髄に改めて気付いたのが、別の企業で測量機器やレーザー距離計、点群スキャナー、3D CADに関わってからでした。当時の自分と今の自分が話したとしても「よく分からないけどソーチェーンが好きな人なんだなぁ…」と全く理解されないと思います。カッターの厚みがあると、ジャンプ中にカッターを下側に向ける力が強くなる(カッターが必要以上に上向かない)ので、エッジに対する負荷が分散します。91から90、または63から61にすると切れ味が早く落ちるのは好転反応ではありません。

カッター部分の耐久性 その3

 メッキを厚くしたり、カーバイドチップを付けたソーチェーンのことです。これはSSJのブログ以外にも、既にオンライン上で多くの情報が揃っていますので割愛します。一応、過去回を載せておきます。尚、メッキを厚くしたり、カーバイドチップを付けると切れる速度は低下します。逆も然りです。

破断や曲がりに対する耐久性

「ゲージを薄くすると耐久性が落ちる」というフレーズについて具体的に紹介します。

ゲージ=ドライブリンクの厚みではない

オレゴンの72=050、73=058、75=063の画像です。72以外はレールに収まるゲージ部分とそこから上の段差がありません。これは73と75は専用のドライブリンクがあるのに、72は73のドライブリンクをベースに、バーのレールに収まる部分だけを削って050ゲージに流用しているからです(ガンダムとジムみたいです)。325の20、21、22も一緒です。つまり、破断や曲がりに強いというのは058 vs 063の場合はソーチェーンとバー、058 vs 050の場合はバーに対するフレーズと思ってください。物凄く細かいことを言うと、72は008インチ分、バーとの接触面積が増えてるので「摩擦によるロス」を起こしていることになります。話が前後しますが058 vs 063ではドライブリンクのゲージ部分以外の厚みの分、リベットが長くなる=金属量が増えるので負荷が分散されて「ソーチェーン単体の破断に対する耐久性が高い」となります。

一番左端のドライブリンクの造形に注目してください

91と90にも同じ「ドライブリンクの流用」があります(90PXのドライブリンクは現行の91PXや91PXL、91PSでもない旧モデルからの流用です)。

90 vs 91

95 と21でも同じ流用があります。更に混乱を引き起こすかもしれませんが、今までの話で注意しなければならないことは、これはあくまでオレゴンの話であり、スチールとはゲージに対してベースとなるドライブリンクが異なります。STIHLは海外で販売されている058ゲージ以外のドライブリンクはワンオフ(以前は063ベースで050も作っていたと記憶していますがいつの間にかR# proシリーズや3/8Pの043のドライブリンクはワンオフです)、ハスクバーナのSP33Gのドライブリンクは発表当初からS35Gとのパーツの共有化を意識した作りです。お手元にあれば比べてみると「あっ」となると思います。

325の比較

タイストラップの厚み

 ナローカーフと言われるソーチェーンの内、23XX proのみタイストラップの厚みが同ブランドの同じピッチ内で変わりません(1/4LPやスチールのヘキサは手元に揃えていませんし、正直興味が無いので分かりません)。なので、もし繰り返しソーチェーンが破断する!という場合は、破断した箇所と自分の目立ての癖やデプスを考えて、次のソーチェーンを選ぶということに繋がります(オーバーパワーでなく、目立て含めしっかりメンテナンスできていれば普通は破断しません)。この時、ドライブスプロケットとバーのノーズスプロケット、レールも見ないといけません。スチールのタイストラップの厚みとドライブリンクの厚みは「リベットの長さ」と強度をトータルで「=」にしたものかもしれませんが、36/nで解説したように「秘密」が多い部分なのと、SSJのバイオセンサーは毎日のように木を切っている方よりは感度が低いので、SSJにはこれ以上の判別不可です。

ピッチに加え、タイストラップやドライブリンクのゲージ以外の厚みでトータルのリベットの金属量が変わります

なんだか投げやりな感じですが、メーカーや輸入代理店、販売店、コピーメーカーが情報発信をしていない中で、「こういうこともありますよ」という提示をしていれば後はそれぞれの方が実際に手に取ってポイントを比べるだけなので十分だろうと思います(禁句「後は自分の目で確かめてくれ!」)。

各パーツの肉抜き加工

肉抜きといってもドライブリンクのオイルデザインの穴のことではなく、タイストラップのコーナーやドライブリンクの天面の話です。1/4LP〜3/8に絞りますが、肉抜きされてない順でハスクバーナX-cut(SP21Gを除く)>スチール>オレゴンです。X-cutは実物を見るとボッタリとした印象を受けます。タイストラップのコーナーがくり抜かれていなく、ドライブリンクの天面も直線であったり、凹みが緩やかです。スチールやオレゴンの404に似てます。成形のエッジが甘いとかいうことではなく、これも金属の質量を敢えて増やした破断対策だと思われます。

左からオレゴン、スチール、ハスクバーナ

リベットの長さ=金属量

目次から飛んできた方は「破断や曲がりに対する耐久性」に戻りましょう。

次回予告

 アルミホイルを頭に巻いたようなソーチェーンのことだけでも37回目の記事になってしまいました。次回の38/nでは「新品の研ぎ直し」について改めて解説したいと思います。


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