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36/n シン・純正とそれ以外 チェンソー、ソーチェーン(チェンソー用チェーン)、目立ての正しい理解

ソーチェーンサービスジャパン(略: SSJ)です。

SSJは全国向けにソーチェーンのオンライン目立てを事業として行っています。宣伝を兼ねて、タイトルの記事をシリーズ化してnote上に公開することにしました。本記事の内容はXアカウントのhttps://twitter.com/SSJP2023 固定ツイートで先行公開していますが、noteで公開する内容は、Xアカウントで公開中の資料 「4D Sawchain Study」の「 V.1.25」以降の内容となります。

純正ソーチェーン

 何を以て純正とするかは改めて考えると難しいです。ピッチ&ゲージの歴史や、チッパーチェーンやスクラッチャーチェーンの歴史を考えると、オレゴンもスチールもハスクバーナも「コピー」している部分があります。ここでは小難しく考えず、今日現在多くのチェンソーメーカーに純正部品として採用されている部品を「純正」とします。
 しかし、チェンソーメーカーもチェンソーがブランドの顔になっているメーカーから、チェンソーはパワーツールラインナップの1つぐらいの位置づけで製造しているメーカーと様々です。ここでも小難しく考えることはやめて、国内のプロ用山林モデルでシェアの高い、スチール、ハスクバーナ(含むゼノア)、やまびこ(シンダイワ、共立)に話を絞ります。
 この3社に採用されているソーチェーンはスチール、ハスクバーナ、オレゴンです(A4S?)。はい、この記事ではこの3社のソーチェーンを「純正」とします。この3社はソーチェーンとチェンソー(!?)のシェアを掛けて握手しながら殴り合っています(!?)。
 そういうわけで(どういうわけで!?)、各社共ソーチェーンの研究開発費には他社との差別化、切れ味、安全、使いやすさの面で力を入れています。パッと見は一緒(フルチゼルやセミチゼル、バンパーの有無のレベル)に見えるようでも、その差や原理については過去回で紹介したとおりです。
 国内でのリリースが遅れるのとは別で、1つの新製品の開発から発売までは数年単位を掛けてます。ソーチェーンは工業製品としてはかなり煮詰まった技術分野なので、「1つの新しいこと」でも相当苦労しています。その点、1/4LPや325LPはソーチェーン開発当初のピッチ&ゲージの増加期から減少時期を経て、再度増加期に入った分岐点でした。言い換えると、本体の進化に対してピッチを変える以外に取れる選択肢が無かったということです。

それ以外

 純正品に対してそれ以外のものを社外品、サードパーティー、互換、同等、負のバイアスが掛かると模倣、模造、コピー(キャット)、ノックオフと言います。知らない人から見ると純正品と同じように見えるものが、見る人が見れば思うことがあるということです。ソーチェーンに関して、これらのものが「切れが悪い」、「刃の持ちが悪い」、「伸びが早い」、「ボトムの減りが早い」といったことはあるかもしれないにしろ、「切れない」ことはありません(逆にあの形で個体差や不良品ではなくまったく切れないのであれば別の興味が湧きます)。90年代はカッターにメッキを掛けていないものや「ORECON」など、行儀の悪いコピー品もありましたが、現在はしっかり自社ブランドを打ち出すメーカーがほとんどです。

見える部分の違い

 使わずとも見る人が見れば「これは今はもう使われていない昔の古いデザインだな」や「このパーツは〇〇のコピーだな」というのがすぐ分かります。しかし、カッターの微妙な研磨角度の違いや(±5度であれば「む?」と思いますがボンヤリしてるとわかりません)、過去回でも解説している「実物同士を並べて、意識して比較しないと分からない」違いは、単体で見ただけでは正直わかるものではありません。実際に使った切れ味や刃の持ちはどうかというのも使うまでは分かりません。が、大方予想が付くものです。それ以外のメーカー側としても、純正を上回る部分があれば客観的なデータと共に打ち出したいところですが、「互換」や「同等」、「安い」というのはあっても「〇〇より××だから◇◇が良い」とも打ち出せないわけです。

「それ以外」の整形精度が低いカッターエンド(純正品でも個体差有り)


 また、実物を見れば分かっても、カタログやオンラインでは分かり辛い差として、「リベットのかしめ」というものがあります。見た目でパッと分かるほど浮いているものから、同じピッチ&ゲージ&コマ数で持って比べると確かに…でも重量かしら?というものもあります。Xcutもパッと見はリベットの頭が厚いというか潰し切れていない印象を受けます。ひねると確かに他メーカーと比べてねじれが大きいです。オイル周りを優先させたか、緩さ由来のパーツ間の摩擦抵抗を減らしている絶妙な具合なのか、はたまたSSJの勘繰り過ぎなのかは分かりません。リベットのかしめはソーチェーンの破断にダイレクトに影響するだけでなく、横ブレが出るのでエネルギーロスに繋がります。

見えない部分の違い

 専門ではありませんが、金属加工では同じ品質の「鉄」を使っても、合金の割合や製造方法、金型のメンテナンスや更新度合いで製品の出来が変わります。純正メーカーでも歪取りの違いが原因だろうなというカッターの壊れ方の差(折れ曲がるか吹き飛ぶか)があったり、「ハードカッター」の存在や、かしめる時のリベットの差もあるので、見える部分以上に「秘密」が多い分野です。

 また、見えるけど見えない代表の、メッキの厚さは数µmのサイズですから、これも「製造コストを下げる為にちょっと薄く…」なんてされると「純正メーカーに比べてやわらかくて刃の持ちも悪い気がする…でも目立てかも。ヤスリが潰れてきてるのかしら…」と頭を悩ませることになります(純正メーカー同士でも…)。E&Sのプラチナムシリーズは逆に「ダブルクローム(2回か2倍か、元の数値も不明)」とされています。トリプルクロームがこの値段でこうで、ダブルクロームがこの値段なら世界的大ヒット間違いなし太鼓判!…と思いますが、020や030と共に発表されてから1年ぐらい経過しても全くヒットの兆候はありません。いつもブログを更新する時は楽しいのですが、なんだかこの記事書いてて楽しくありません。

更に見えない部分の違い

 たとえば、スチールがオレゴンの80TXLに相当するピッチ&ゲージのものを作れないわけではありません。フルチゼルのバンパーレスでも作れます。作れるけど握手している部分があるから殴り合わないわけです(その点、RS ProやRM Proは握力が尽きたといえます)。
 逆に、オレゴンが63PS、いわゆるピコスーパーに相当するものや、これから出てくる61PSを作れないかというとこれもまた違います。ハスクバーナのスモールグリッドも然りです。お互いメーカーとしてのプライドがあるとも言えます。
 「それ以外」には握手している部分がありません。なので、各メーカーのピッチ&ゲージや古いモデルを「リバースエンジニアリング」したり、各社のソーチェーンの各パーツを混ぜこぜに組み合わせたり、少しだけオイルデザインを変えたりして製造されています。リバースエンジニアリングであれば研究開発費はグッと抑えられるのと、先行者がいる=需要も確保されているわけなので、生産ラインの新設をする為の検討・調査費もまるっと浮くわけです。
 尚、ソーチェーンのカッターは設計上では0.1mm単位だけでなく、少数点1桁まで角度指定されていますし(これぐらいなら大丈夫でしょう)、ドライブリンクもただ穴が開いてるわけではなく、パーツ上の穴の位置やサイズまで検証・計算されています。タイストラップのオイルデザインもリベットの間にただ凹凸があれば良いというわけではありません。たとえば、進行方向を示す矢印や、破断対策の「肉盛り」的なものは別で、リベットに届いてないタイストラップの凹凸はただの飾りでしかありません。
 もう何年前に聞いた話か、当時が何十年前だったのかも思い出せませんが、とある国内チェンソーメーカー社員の方が3人で地方に出張して、出張先のチェンソー屋さんと一緒に、外国メーカーのチェンソーを徹夜で分解して最終的に出した結論が「今は敵わない」だった、というエピソードを思い出しました。リバースエンジニアリングは複合機のコピーと一緒なので、言葉にすると同じコピーにしろこういう追い付き追い越せというような熱いエピソードはありません。

でも安いよ安いよ~

そうなんです。安いんです。コピーされる側の価格がこれ以上下げられないわけではないですが、安さには必ず理由と差があります。その理由と差は具体的には一体何なのか、純正メーカー以外による情報公開の不足や、実物が手元に無いので具体的な情報に欠けた記事でしたが、今回の内容もまたいつか誰かの好奇心や探求心、悩みに対する参考情報として役に立つことを願います。

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