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初夏の札幌でしたいことをする旅

 福井県は敦賀港から約21時間かけて苫小牧東港に旅立ち、シャトルバスにて南千歳駅に到着した私は、予約した札幌のホテルに向かいました。

↑船旅記はこちら。

南千歳駅から札幌駅までは、JRで移動。区間快速の方が早く着きそうだったが、あえて普通電車に。JR北海道のロングシート席で、帰宅中のサラリーマンや若いカップルとともにゆらゆらと揺られながら、街を目指す。ドアが開くたびにぴゅーっと冷たい風が吹き込む。急行電車の通過待ちの度に、若い女性が席を立ち、扉の横にある開閉ボタンを使ってドアを閉めに来る。ありがとう。足元冷えるよね。つくづく思うが、旅における「移動」の時間が好きだなあ。

札幌駅からは地下通路を歩き、狸小路を目指す。一度だけ、冬の雪の季節に札幌に行ったことがあるのだけれど、雪道を歩くのが心底苦手(小学生の頃に転んで肘の骨を粉砕したことがある)なので、この地下通路には救われたなあ。雨の時期も暑い時期も便利よなあ。

ホテルまでの道のセイコーマートで、ノンカフェインの黒豆茶とキューピーコーワヒーリングの2粒入りのパウチを買う。船の中でカフェインを摂取しすぎたのか、のんびり過ごしすぎたのか、目がギンギンだったけど体は確実に疲れていた。

今回泊まったのは、LAMP LIGHT BOOKS HOTELさん。24時間開いている本屋さん&カフェが一階にあるホテル。
以前から、ブックホテルなるものに興味があったのと、船に乗るまでの移動時間に優香さんの札幌旅note読んでいて、気になっていたのです。週末の札幌のホテルの中では、奇跡的にお値打ちだったのでこちらに二連泊しました。

↑優香さんのnoteはこちら!好きな本に浸る時間をたっぷり持つ旅、家族とまったり旅、食いだおれ旅、最高だなあ…。

選書が「旅」と「ミステリー」をテーマとされてるみたいだけど、「暮らし」の本も多かったなー。
部屋に置いてあった2冊。人はなぜ移動するのか、は、フェリー旅後の自分に問いかけられてるように感じたよ。。。

ホテルの室内は、こぢんまりしているながらも落ち着いて本を読める、木と白を基調としたおもむき。ホテルを出るとすぐに狸小路のわちゃわちゃとした賑やかな雰囲気なのだけど、ホテルに入るとすごく静かでシックな雰囲気で、良かったなあ。
どうでもいいことだけど、今回、ツインの部屋に一人で泊まったのだが、こういう時、使わない方のベッドを少しでもキレイに?保ったままチェックアウトしたほうがいいのか、どうせなら両方派手に使ったほうがいいのか、迷う。まじでどうでもいいな。(そして前者のように帰りました。)

ホテルの一階部はカフェになっていて、本がたくさん置いてある。席でゆっくり読むこともできるし、宿泊客は2冊まで部屋に持ち込みも可能。
明日何をするかも決めてなかったので、札幌の地図本と、かねてより読んでみたかった台湾のアニメーション監督の宋 欣穎さんの「いつもひとりだった、京都での日々」を借りることにした。来日し、京都大学の留学生として過ごした日々を綴ったエッセイ。不思議な本だった。読んで良かった。Googleのストリートビューでも見てるんか?というぐらい現実味があるのに、どこかおとぎ話みたいに別世界の話で。人のエッセイ、人の日記が好きなのには、そういう理由がある。特に、私は筆者と同じく京都に住んでいるからか、淡々と書かれた京都で過ごした日々と出会った人のことをある程度鮮やかに想像ができるからかもしれない。「あーいるよね、そう謎の人」「この季節のこの街はそういう空気だよね」と、思いつつも、やっぱり筆者自体は全く知らない人で、「ほー、そう思うのか」「へー、そうなってたのか」と、謎の納得(?)を繰り返しながら、寝落ちした。

多分、夢中で読んでいたから、丑三つ時を過ぎていたと思う。身体の中で、「俺を飲んだのなら、さっさと寝ろよ」と、キューピーコーワヒーリングが泣いていたと思う。

いい時間だったな、夜読書。

☀️

朝、7時ごろ起床。二度寝を繰り返し、シャワーを浴び、小さなポシェットを持って8時半ぐらいにホテルの外に出る。いつも出勤する時間と同じぐらいだな。北の街らしい爽やかな空気だが、なにやら不穏なほどに陽射しと風が強い。日傘をさして歩いていると、うっすら汗ばんできた。

朝ごはんを食べに、「アトリエモリヒコ」に。一度森彦のコーヒーを朝に飲んでみたかったんだよ。白を基調とした店内で、お上品にコーヒークリームが挟まったフルーツサンドを食べる。他席のマダムたちの上品な話し声と、穏やかなカップルの微笑みあいを感じながらいただく。うーん、Soプレシャス!(表現がダサいな)コーヒー味のクリームが少し苦くて甘すぎず、フルーツの味を引き立てていた。いい仕事してますねェ。

テーブルには絵が飾られていた。今朝書いた絵なのかな。素敵。
そして、絵と同じものが運ばれてくる。素敵。

「アトリエモリヒコ」を後にし、昨日の船旅で体がナマナマとしているので、歩いて円山公園を目指す。徒歩30分ぐらいかな。なかなかに暑く、お昼が近づき日が高くなってくると、頭皮がジリジリとした。日傘をさして歩く。帽子を持って来れば良かった。でも、六月なのに、関西よりは風が冷たくて、空気も爽やかに感じた。
住むものにしかその土地の一年の空気や陽射しはわからないが、旅するものにしか住んでいるところとの空気や日差しの短辺的な比較はできない。旅の面白みの一つに、「身を置いているところとの、肌感の比較」がある。

円山公園内の動物園に行こうかなーと、なんとなく前日から考えていた。先日から、なぜか動物園に行きたくてたまらなかったのだ。暑い暑いと思いながら街を抜け、広くて植物が青々とした公園の中を歩いていると、着いた。市営の動物園で、シロクマやアザラシ、ユキヒョウ、北海道らしくエゾタヌキやエゾシカがいるのが特色みたい。

家族連れやカップルが多い。外国人の観光客もまあまあ多い。子どもが多い。どれも人間であり、その人間たちが見ているのは、ニンゲンではない動物たち。
動物は、気ままだ。トラはガラス一枚隔てたニンゲンのすぐそばでグースカ寝てるし、シマウマは信号待ちのオフィス街のOLみたいに、細い日陰の中で陽を避けていたし、シロクマはずっと陰に隠れていたかと思うと急に出てきて、きまぐれにボールを蹴って客を沸かせたかと思うと、すぐにまた引っ込んで客たちをガッカリさせていた。出来たばかりらしいオランウータンの檻の入り口には「おしっこ注意」と書かれていて、「どう注意したらいいんだよ…」と途方に暮れたし、トルネードスピンをしながら泳ぎ回るアザラシたちは、可愛いが速すぎてカメラに収まりやしない。「おぅ!おぅ!」と鳴くサル科の生き物たちは、ニンゲンそっくりな声だ。ひょいひょいと柵から柵へと移動する。人気のユキヒョウは、檻の最奥で眠っていて、片手しか見えなかった。その片手がめちゃ可愛かった。

動物たちの気ままな姿を見ていると、ニンゲンとのことで悩んだり考えたりすることが、尊くも、バカらしくも思えてきた。他人のことを考える時間、気を配る時間は大切だし大事だけど、気を病んだり寝付けないほど考えたり、自分を抑えて我慢するほど気を遣う必要は、全く無いんよなあ。具体的な対人悩み事象があるわけではないけれど、なんか動物たちを見ていると元気をもらえた。
でもさ、そこって難しくない?人との関係の上で、どこをどこまで踏み込んで、それを持続させる?持続し続けられるのか?って、相手がいるからこそ、慎重になっちゃうんよな。相手にも私にも、限りがあるもん。人それぞれだもん。正解はないし、絶対はないもん。人と関わることでしか、学べないんだろうな。

また動物園に行こう。フェリーも乗る。生きてる動物の、生きてる人間の、生きてる姿を見るのが好きだ。

日陰のOLシマウマ
凛としたプレーリードッグ。ファンサありがとうございます〜
傘でもさせばいいのか?
ガラスのすぐそばで寝るトラ。もふもふでかわいいが、怖いね。
動物園の中には、わかりやすい絵での解説が多くて面白かった。ハダカデバネズミと言えば、「私ってサバサバしてるから」の網浜さんを思い出す。
ユキヒョウの手!いや、前足と言うのが相応しいか?かわいい!もふもふ!でも、これにジャッ!とやられたら死ぬんやろなー
シロクマが気まぐれにボールを蹴った。観客は沸いた。誰もがプールにドボンする瞬間を期待しただろう。しかし、すぐに奥に引っ込んじゃった。

動物園を去り、公園の近くにあるスープカレー屋さんに行くことにした。一昨日に旅に出てから、野菜をほとんど食べてない。いか丼に乗ってた大葉と、ザンギ定食についてた千切りキャベツしか食べられてない。スープカレーで野菜を摂取したい。「円山ピカンティ」で遅めのお昼をいただくことにした。
一人用のカウンター席があり、タッチパネルで注文出来て、気楽で良かった。組み合わせ自由な具材やスープ、辛さなどがメニュー表いっぱいに広がっていて、選ぶのが楽しい。ビタミンDを摂るべく、「プレミア舞茸」を選んだ。野菜はジューシー、スープは辛め、ご飯が進み、パワーが蘇ってきた。

選ぶのがめっちゃ楽しかった。
かぼちゃがほくほく、ごぼうが香ばしく、舞茸はシャキシャキで美味しかった。汗が噴き出た。

歩き疲れたので地下鉄に乗り、大通駅まで戻る。「丸井今井」のべんべやさんで自宅用のお土産焼き菓子の配送を手配し、北海道の物産を集めたお店で沼田町のトマトジュース(前に飲んでめちゃ美味かった)を買い、ホテルに戻ることにする。途中、HTBのショップで夫に頼まれた「水曜どうでしょう」の地球の歩き方と、雑貨屋さんでキャップも買った。キャップは、これから先の季節の相棒になると思う。

汗をよくかいたので、ホテルでシャワーを浴びて汗を流し、エアコンを効かせて身体の熱を逃す。ホテル1階のブックカフェで、ことりっぷの「台南」と「安曇野・松本・上高地」を借り、トマトジュースを飲みながら眺める。どちらもこの夏中に行く予定の地なのだが、まだ「本当に行く」という現実味がわかず、どこか夢物語みたいにふわふわとした気持ちで文字と写真が滑ってゆく。

さて、まだ夕方。札幌の日没は関西より早いが、まだまだ夜は長い。今晩はどこで何を食べよう。おしゃれなお店もいっぱいある。寿司?ワインバー?人気のラーメン屋?細いグラスに入ったおしゃれなパフェ?背伸びして、なんかおいしいビストロ?いろんな選択肢が頭を駆け巡る。駆け巡った。それらを通り越して、歩いて15分。向かったところはサンドイッチ屋さん。前にNHKの「72hours」で放送されていた、24時間オープンしている「サンドリア」さんのサンドイッチが食べたかったのだ。

お店に到着すると、四組ぐらい並んでいた。その間に、ショーケースに並べられているサンドイッチに端から端まで目を通して、今夜(そして翌朝)の口福のいざない人を探す。ダブルたまごとメンチカツとカスタードをチョイス。ルンルンでホテルに戻る途中、セイコーマートに寄って、ワインの小瓶と缶のサングリア、ホットスナックのフライドチキン(めちゃうまい)も買う。今夜はごちそうだぜ。日が暮れた札幌の六月の夜は半袖Tシャツ&サンダルではめちゃ寒く、小走りで帰る。油断してたぜぇ。

狸小路商店街は、今日も賑やかだった。観光客か地元客かもはやわからないしどちらでもよいが、お酒を飲んで、なんかうまそうなものを食べて、大きな声で楽しそうに話している。笑い合っている。街の喧騒を横目にホテルの部屋へと急ぎ、ゆっくりと2時間ぐらいかけてサンドイッチたちを食べた。スマホでXを眺めながら、たまに本を読み、明日の帰りの飛行機までの時間をどうしようかなーと漠然と考えた。とっても幸せな時間だった。私の一人旅に必要なのは、間違いなくこういう時間だ。人の気配がする空気の中で、自分の世界に浸りながら、自分の輪郭を取り戻すような時間。

たまごサンドは次の日の朝ごはんにしました。北のサングリアサワーは、たまに関西のスーパーでも見かける。美味い。

歯磨きをし、気になる本を再び階下のブックカフェで借りてきて、気が済んだところで眠る。好みの未知の本を読みながら眠るなんて幸せの極みだなあ。

韓国の晋州に行きたくなった。あと、ニュージーランドでミートパイ食べたい(←本とは全く関係のないただの願望)

☔️

翌朝は、曇り空。今にも降りそう。いよいよ帰る日。帰りはLCCで受託預荷物なしのプランなので、荷物を二つまで且つ7kg以内におさめなければいけないので、お土産はほぼ断念。チョコがけのサブレと、チーズ羊羹なるものと、セイコーマートでパンを買う。北の国のパンは、大阪弁で「明日のパン」だ。この日まで、街の中心地でよさこいが開かれていたみたいで、会場のほど近くにあったセイコーマートの店員のおばあちゃんが、私をよさこいの観客だと思ったのか、「最終日に雨が降りそうで、残念ねぇ」と話しかけてくれた。この旅の期間に、綺麗にお化粧をした踊り手の人たちを幾度となく見かけたけども、地域に根ざしたイベントなんだなあと実感した。京都でもよさこいのイベントがたまにあるのだけど、ちゃんと見たことなかった。見に行ってみようかな。

ゆっくりと札幌駅まで歩き、のたりのたりと新千歳空港に向かい、搭乗を待つ目論見だった。しかし、新千歳空港に着くと「北海道にいるうちに、北海道を摂取しなきゃ!!」と欲目が出て、お土産屋を歩き回り、疲れた。アスパラを大量に買っている人がいた。北海道のアスパラはおいしいんだろうな。

ステラプレーイス。でかい。曇ってる。

飛行機に乗り、びゅーんと2時間弱で関西国際空港に到着。関西は雨が降っていて、札幌とは打って変わって、蒸しっとしていて、早くもげんなりした。ただいま関西。ただいま、住む街。ただいま、明日仕事かあ。うんざりだぜ。

だけど、JR駅の改札で、改札機への切符の通し方が分からない外国人観光客に「Through !And,pick it !」と、簡単すぎる英語でお助けに入るなどし、一気に爽やかな気持ちになった。声をかけるのは勇気がいる。英語も咄嗟に出てこない。おせっかいかもしれない。だけど、人の役に立てると嬉しい。私の仕事はそういう仕事だ。誰かの悩みを解決するために、誰かに与えられるべき道に繋げるために、爽やかに、明日からも頑張ろう。そう思えた。

これから旅行く人が、素敵な瞬間にたくさん出会えたらいいなと心から思いながら、雨降しきる関西を北上し、カビが生えそうなくらい蒸し暑い自宅に戻り、荷解きをした。自分がしたいことだけをしたいだけして、最高の時間でした。

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