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敦賀→苫小牧東港 船旅記

 今年のやることリストのうちに「舞鶴〜小樽港のフェリー旅をする」という項目をいれていた。

 ゴールデンウィークに大阪港〜釜山港までの19時間のフェリー旅をしてきたばかりなのだけど、旅中は終始海の様子が穏やかで、船内がもうすでに「ザ・韓国!」で楽しくて、とてもいい刺激になる最高の船旅だったのです。(まあ、本音を言うと、船酔いするぐらいに海に揉まれる時間があってもよかった)

↑船旅の魅力を語った過去note

 ↑GWに行なった船旅と韓国三都市回ったnote(2万字近くある)

 北海道への航路も、今年中にやりたいなと画策してた。……のだけど、「今年中って、もういつ行っても一緒やろ」、「やりたいと思ったタイミングが行きどきやろ」といきり立ち、仕事も比較的落ち着いてるタイミングなので、一日だけ休みを取って行くことにしました。

【役立つ!特に持って行ったほうがいいもの】
現金(100円玉と売店やレストラン代)、風呂用の薄手のタオル、スキンケア、暇つぶしの本・動画・音楽再生機器など、イヤホンや耳栓、羽織もの(冷房効いててさむい)

 やってみたかった“舞鶴港から小樽港への航路”は、現在は毎日運行ではなく、予定が合わず。今回は福井・敦賀港から苫小牧東港への航路をチョイスしました。新日本海フェリー。乗船当日の仕事の昼休みに、ネットでぽちっと予約。部屋は女性専用のツーリストA。カプセルホテルのようなカーテンで区切られた寝床で寝るやつ。

 京都駅から敦賀港までは在来線を乗り継ぎ約2時間。その間に、この曲を聴いてあまりのかっこよさに衝撃を受ける。

初KO勝ち/椎名林檎とのっち

 一瞬でこの旅のテーマ曲になった。最高すぎ。いやー、ほんまさ、日常においてこの歌の歌詞における「省エネ名人」と化してる、ほんと私。こうやって遠距離船旅!イェー!とか、ちょっとしたチャレンジを自ら設けては、その中で何かを見つけよう?見出そう?とか、noteやらなんやらを書いて、もがいているだけ。もがける体力と場所と欲望があるだけありがたしけれども、それ以外は毎日仕事場と家の往復で、その暮らしの中で摩耗して、体力を温存することに必死になっているというか……。

 社会に生きる生物として体力を温存することは間違ってはない、むしろ必要なことだし、摩耗してるってことはそれなりにエネルギーを使って戦ってるんだけど、「この人生のエネルギー、この使い方で合ってるか?」と虚しさを急に感じる場面も多々ある。
 社会の仕組みの一部に成れている証拠でもあるのだけど、この歌を聴いて、私の、私のための、次の戦い方について考えて行く旅になりそうだなと予感した。ジャブジャブジャブストレート!

 そんなこと考えてたら、敦賀駅に着いた。福井県。新幹線駅になってから初めて来た。綺麗な駅だ。だが、ゆっくり見てる間もなくシャトルバスに乗り、フェリーターミナルへと向かう。320円、現金払い。バスの中には他に8人のお客さんがいた。今宵、どうぞよろしく。北海道に帰る人なのかな?それとも行く人なのか。

船体が画角におさまらん
模型ありがたい

 私が乗ったのは「すずらん」。20時間超かけて、苫小牧東港を目指します。うっかり晩御飯を食べる時間も何か買う時間も設けられなかったので、乗り場の売店でチップスターうすしおを買い、パリパリと食べる。久しぶりに食べたけど、おいしいよな。成型ポテトチップスって、昔スイミングスクールで昇級したときにねだった覚えがある。古のご褒美感ある。

 待合室には40人ぐらいの人がいた。シャトルバスには人が少なかったから、車で渡航する人が多いのかな。待合室に置かれていたテレビではNHKの大泉洋司会のSONGSがかかっており、今日のゲストは新しい学校のリーダーズだった。テレビの真ん前に座っていた年配のご夫婦が、「オトナブルー」を会話もせずにじーっと眺めてたけど、どんな気持ちだったんだろう。

 ちなみに、完全に偶然だけど、ここから船を降りるまでずっと大泉洋ばかり目にすることになる。

 23:15、順に乗船。

小さい頃、すずらんの花にめっちゃ憧れて、家庭用洗濯洗剤をすずらんの香りを謳う「ニュービーズ」にしてもらったことを思い出した
船〜
寝床はこんな感じ。マットレスと掛け布団があって、自分でシーツを装着します。蛍光灯とコンセントもあり◎

 荷物を寝床に置いて、貴重品だけ持って船内を探検。夫のアドバイスで履いてきたスニーカーとは別に着脱がサッとできるサンダルを持ってきたのでそれに履きかえる。足が自由だ〜。船旅とホステルに泊まるときは、絶対いるな、サンダル。

 23:55の出航後、1時に売店や大浴場が一旦閉まり、消灯してしまう。乗船してすぐに大浴場に行かないと大変混むと聞いていたので、出航前にサッと浴びに行く。ドライヤーの台数が3台と少なかったので、髪の毛は明日洗うことにした。大浴場には洗い場が6か7ぐらいあり、シャンプー、リンス、ボディソープが備え付けてあるだけにとどまらず、内湯、露天風呂にサウナまである。サッと化粧を落とし、身体を洗い、湯に浸かる。いい塩梅。まだ港に停泊している船の露天風呂まで燃料の香りが届いてきて、いよいよ旅立つのだな!とワクワクした。
 それに、「これが翌日の夕方まで入り放題なんて…!」と、お風呂大好き人間としては喜びが巨大すぎた。木曜日だったからか、終始空いてたな。週末は混むのかも。

 出航してしばらく、風呂上がりのホカホカの身体で、くつろぎスペースで波が揺れるのを見ながらスマホをいじっていた。もうじき電波が入らなくなると思うと、次の旅程を考えとかなきゃなあとか、そういえば職場に「明日は私のスマホは繋がらんぜよ」と言っとくべきだったかとか、もし船で旅でてる間にどっかで災害とか起こったら怖いなとか、色々今さらどうにもならんことが気になって焦る。もうさっさと寝ちゃおう。
 夜のカップヌードル自販機は妖艶。誘惑と戦ってはみたが、これを我慢して過ごした思い出よりも、これを摂取して後悔する思い出の方がうんと笑えるから、もりもりと食べて寝た。オーソドックスなカップヌードルも久しぶりだな。うまい。

☀️

グッモーニン、日本海
姉妹船とすれ違い

 特に大きな海の荒れを感じることもなく、アナウンスとともに8時に起床。船内快眠ノードリーム7時間。最高だね。食堂で朝食提供開始のお知らせがあったが、昨晩のカップヌードルがまだ胃に居たため、ひとまず入浴。サウナから海が見える。すばらしい。85度ぐらいのドライサウナで、じんわりと玉汗が出た。船の中、結構冷房が効いていて肌寒いから、お風呂で温まれてありがたいな。

 お風呂からあがり、カフェでアイスコーヒーとデニッシュをいただくきながら、Netflixでダウンロードをしていた「水曜どうでしょう」を見る。紋別沖、釣りバカのやつ。97年の大泉洋は、若いな。水どうはニヤニヤしちゃう。

クリームデニッシュとアイスコーヒー。デニッシュは船内で焼いてるらしい。
ルームランナーやエアロバイクがありました。暇だったので、昼食までの間、30分間、100kcal分漕ぎました。きつかった。
船内はこんな感じで明るくてキレイ。

 平日だからか、中年から年配ぐらいの小規模なグループ旅行・夫婦旅、または男性の一人客が多かった。一人客はもしかしたらトラックとかのドライバーさんなのかな。何人か私と同じような年代(30代)の一人客もいました。

 エアロバイクを漕いでほどよく汗をかき、昼食までの時間、やることなく寝る。カプセルの中に入ると、暗くて揺れていて心地よく、秒で眠れてしまう。
 昼食は食堂でいか丼を食べた。いかそうめんととろろがご飯の上にのっていて、わさび醤油をかけるシンプルメニュー。おいしかったけど、まあ想像通りの味って感じ。食べ終えて水曜どうでしょうの続きを見る。
 13時から映画が放映されるというので、その時間までぼーっと過ごす。

今回の上映は、2022年上映の「月の満ち欠け」
本当の映画館みたい↑

 「月の満ち欠け」はこれまた大泉洋主演。高校生の娘と愛する妻を不慮の事故で亡くしてしまう。でも、ある日、「あの日、娘さんは僕に会いにくる途中でした」と告げに来る見知らぬ青年があらわれて…!?という、悲しい話・不思議な話の主人公だった。
 さっきまで、水曜どうでしょうで紋別沖でゲロゲロ吐いてる大泉洋を見てたからギャップがすごい。演技が上手だよなあ。

 映画自体はまあ、自分ではなかなか選んで見ない、悲しめのラブストーリーをメインにした展開だった。有村架純と目黒蓮が結ばれるシーンで、近くに座っていた杖をついたおじいさんが座り直していた。おじいさんもまた、自分で選んで見なさそうなジャンルよなあ。そののち、おじいさんは結末を待たずしてシアターを出てしまった。
 映画館みたいだけど、映画館ではないので、上映中に「なんでやねんw」「これ、柴咲コウ?」などと仲間内で小声で話すおばちゃんがいたり、缶ビールがカシュ!っと開く音が聞こえてきたりと、自由で面白かった。

 15時に映画が終わると、津軽海峡に差し掛かっており、携帯の電波が入るようになっていた。職場からの連絡は一切入っておらず、安堵した。まあでも、それはそれでちょっと寂しかった。笑
 しばしスマホをいじって過ごす。シアターが寒かったので、3回目のお風呂に入る。苫小牧東港についてからの旅程を一切考えてなかったので、スマホを片手に考える。今日中に旭川にでも移動するか、新千歳空港の温浴施設で一晩過ごすか、とりあえず札幌泊まるか。色々調べていたらめんどくさくなってきたので、札幌のホテルに二連泊することにした。ありったけの楽天ポイントをはたいた。津軽海峡は、意外と電波が入るのだよ。電波が入るとスマホをいじってしまうが、フェリーに乗ったら電波が入らない不便さを楽しみたい。ホテルの予約をとった後は、あえて機内モードにした。

日が暮れてきた。20:30の下船まであと3時間。

 女性専用のツーリストA室には、どうやら6人のお客さんがいたよう。各カプセルの入り口に皆お風呂で使った思い思いのタオルが掛けられていて知った。そのうちの3人はグループ旅行だったみたい。滞在中はとても静かで、シンとしていて良かった。異性との相部屋よりも、やはり女性専用のほうが気がうんと楽だな。

 船内での最後の食事ということで、食堂でザンギ定食を食べる。ザンギと唐揚げの違いをよく分かっていない。夕焼けに抱かれた海を進みながら食べるご飯は、なんだかすごく特別で、だけど下船の時間が刻一刻と迫っていて寂しかった。まだ乗ってたい。

食堂とは別室に、クルーズ用のちょっとお高めのレストランもある。また乗船する機会があればぜひこっちも食べてみたい。
ぴかっと光る夕陽

 夕暮れのデッキに出ると、寒かった。ウインドブレーカーを持ってきてよかったが、すぐに船内に引っ込む。さすが北の海。外も寒いが、船内も冷房が効いていて寒い。部屋に戻り、荷物を整え、下船の時間まで布団の中で過ごす。横になると眠気が襲ってきた。下船後にも旅は続く。しばし、眠って力を溜めようぞ。

 下船の時間が近づき、一人、また一人と同室の人が部屋を後にする音が聞こえてきた。「忘れ物ない?」「うん、大丈夫。」そんな会話につられて、私も忘れ物が無いかキョロキョロと確かめる。あっ。危ない。カプセルの入り口に干してたタオルを忘れて帰るところだった。

 下船し、余韻にひたる暇もなく、フェリーターミナルをあとにする。予約していたJR南千歳駅行きのバスが、もう外に停まってる。早く乗らなきゃ。

ありがとう、、、
フェリーでかー。ピカピカしてて綺麗。
バスは1320円、現金前払い。普通のバス。行きのバスよりも人が少なかった。

 JR南千歳駅まで、おおよそ40分。バスは真っ暗な道をひた走る。街灯もなく、ただただ真っ暗。船、楽しかったな。暇な時間はずっと何らかの思索に耽るつもりで船に乗ったけど、船内での時間を振り返ると、おおよそずっと「ふね、たのしい!」としか思ってなかった気がする。それでいいのかもしれない。未来に備える時間も大事だけど、今通る位置、今過ごす景色も、いっぱい楽しもう。

 船、すっごく楽しかった。のんびりしながら移動できて、いろんな人が乗っていて、旅の移動手段として大好きだ。今度は名古屋〜仙台〜苫小牧ルートか、または鹿児島〜沖縄ルートを乗ってみたいなあ。大阪〜上海ルートも、いつかはきっと。

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