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春と夏の間を縫いに(大阪→釜山・慶州・大邱の旅)

 ゴールデンウィークに大阪港から国際フェリーに19時間乗り、釜山から高速バスで慶州・大邱を回って飛行機で帰ってくる旅をしました。穀雨と立夏の間、季節の移り変わり真っ只中。旅中、春の終末のベルと厳しい夏の銅鑼が同時に鳴り響くといった面持ちで、旅路での海・風・人・街・食・山・陽、様々な表情と出会えました。そんな渡韓五回目のレポです。


旅程

1日目
大阪港17時発パンスタードリーム号17時発
船中泊(スタンダードB室)

2日目
釜山港12時着
海雲台泊

3日目
海雲台市外バスターミナル12:20発
慶州市外バスターミナル13:30頃着
慶州市外バスターミナル17:20発
東大邱バスターミナル18:00頃着
大邱・半月堂駅近く泊

4日目
大邱・半月堂駅から路線バス
大邱国際空港 T-way航空で関西国際空港に帰国

旅の装備(4月下旬)

行きのフェリーでは持ち物の重量制限はほぼなかったが、帰りの便はLCCで10キロ制限、預け荷物無しだったのでリュックサック+ショルダーバッグ旅。  

服装:
長カーゴパンツ、トレーナー、スニーカー

持ち物:
リュックサック、ショルダーバッグ、パスポート、wowpass(前回の旅の残りが60000w分ぐらい入ってた)、日本円、地球の歩き方、ボールペン、A4ノート、スマホ、モバイルバッテリー、充電器、エコバッグ大・小、折りたたみ傘、折りたたみウインドブレーカー、メガネ、
圧縮袋1(タオル長と小、タオルハンカチ、寝巻用長ズボン、半袖T、下着類1セット)、
圧縮袋2(長袖シャツ、ウエストゴムフレアスカート、下着類2セット)、
透明ジップロック1(クレンジング、オールインワンクリーム、ヘアオイル、日焼け止め兼化粧下地、ファンデーション、パフ、UVプレストパウダー、アイブロウパウダー、コンシーラー、アイシャドウ)、
巾着1(目薬、リップ、保湿クリーム、歯ブラシ、軟膏、1dayコンタクト✖️3、絆創膏)、
巾着2(酔い止め、痛み止め、鼻炎薬、デオドラント)、
ポーチ(生理用品、汗拭きシート)、
透明ジップロック2(不安な気持ちに陥った時に守るべき存在として自分を奮いたてるためのぬいぐるみ←)
これで総量大体7kgぐらい

韓国旅無敵スマホ内装備:
eSIM(3days)、papago(翻訳アプリ)、NAVER(地図アプリ)、Googleマップ、wowpassアプリ、モバイルバッテリー

旅の動機

昨年、博多港から釜山港を繋ぐ約4時間の航路を国際高速線ビートルで楽しんだ。その際、船で国境を越える旅にも関わらず非常にシームレスかつ船の中の自由な雰囲気に魅了された。携帯の電波も入るし、歩き回れるし、テレビも付いてるし、みんなめっちゃ喋って賑やかだし、食べ物も持ち込めるし、美味しいものも売ってるのだ。めっちゃ船が揺れて酔う時間もあったけれど、飛行機とは異なった国間の移動はとても有意義だった。

そして、所要時間19時間で大阪港発で瀬戸内海から対馬海峡を北上し釜山港を繋ぐ長距離航路を有するパンスタードリーム号に興味を持った。

2020年あたりの感染病流行と同時に韓国ドラマブームにどっぷりと浸かり、ここ4年で渡韓5回目…!ソウル・釜山のような大都会しか行ったことがなかったけど、都会以外の景色も見てみたい。船の中でローカルな会話を聞いてみたい。釜山を旅の起点に、地方都市に訪れてみたい。ちょうど大邱からの帰りの便が爆裂に安かったので、慶尚南道→慶尚北道に移動しながら、帰国するルートを考えたのでした。

旅の記録

1日目 船で大阪港〜釜山港に出発


前日は荷造りして早めに就寝する。船は17時発。大阪港でのチェックインは出航90分前の15時30分までに済ませば良い。逆算すると正午過ぎに家を出れば十分に間に合う。のだけれど、気が急いて早めに大阪に。早いけど、酔い止め薬を飲む。旅そのものよりも、まずフェリーに乗ること自体に興奮する。これから、瀬戸内海をクルーズして、国境を越えるのだ。鼻血の一つや二つぐらい出そうなテンションになる。

旅系YouTuberの皆さんの動画で予備知識は蓄えてある。結構揺れるらしいというのと、船内に一歩入るとすでに韓国っぽいこと、乗客は日本人の方が少ないこと、船内にはコンビニとカフェがあること、夜には乗客によるのど自慢大会が開催されること。楽しみすぎる。

大阪駅で、夫と手分けして船の中で食べる夕食と朝食を調達する。船内では夕食・朝食は韓国料理を中心としたバイキングがあるらしかったけれど、特に予約せずにいた。韓国に着いたら韓国料理を食べることになるから、何が起こるかわからない船内ではせめて、食べ慣れた日本のものを食べようと思ったのだ。
夫は朝食用にミニョンのクロワッサンを買ってきてくれた。私はルクアの地下でキンパを買った。2行前の文章と矛盾を感じるかもしれないが、食べ慣れた日本のもので作られた『韓国料理』を食べて、旅の気分を高めたかった。あと、これまた何が起こるかわからないので、レモンスカッシュとお茶とヤクルト1000と乾燥に備えて2リットルの水も買った。

地下鉄を乗り継ぎ、コスモスクエア駅で下車。駅直結のバス乗り場から、フェリー乗り場までのシャトルバスに乗車し、フェリーターミナルまで運んでもらった。バスの中には韓国語で電話をするおっちゃんが、野太い声で喋り続けていて、おお、もうここから韓国みたいだな!とワクワクした。(韓国ではよく電車やバスで通話している人がいて、それが普通という感じ)

10分ほどバスにのると、フェリーターミナルに着いた。建物の入口にはトラックや小型のバンが何台か停まっており、ハングルが書いてある野菜の段ボール箱がどんどんと積み込まれていた。韓国から来た野菜たちは、日本に出荷されてゆくのだろうか。おじさま、おばさまたちがキビキビと作業をされていて、まるで市場の一角のようだった。

自動チェックインの機械でパスポートをスキャンし、待合室に待機する。警棒を持った警察官がたくさんおり、なかなかにものものしい雰囲気だった。そうだよな、国を跨ぐ時に悪事を働く人もいるもんな。空港のボーディング待ちの開放的な空気とは異なり、幾分とこぢんまりとしていて、もっとローカルな空気だった。日本人、韓国人のほかに、欧米人グループも多かったな。アジア旅の行程のうちの一つなのかな。中年〜高齢の人が多かった。この人たちと、これから19時間同じ船に乗るのか。
 出国時間になると特に合図もなくゲートがぬるっと開いて、するりと出国。待合室のものものしさとは相反して手荷物検査なども無く、出国審査も飛行機に乗る時よりも早く終わった。

船でかすぎて全然映らん
大阪湾の眺め。天保山と海遊館が見えた。もうちょっと行くと万博の会場も見えた。撮ってない。
船内で声を荒げている人は一切見なかった

地上から入船し、長いエスカレーターを登ってロビーに。チェックインの際に出てきたチケットをカウンターで見せて、部屋の鍵をもらう。私たちが泊まったのは、スタンダードBという部屋。二人部屋で、ベッド2台とちいさなテレビがあるだけの必要最低限の部屋で、トイレやお風呂は共用部を使うものだったが、十分快適に過ごすことができた。
他にも、定員6人〜8人の相部屋になるカプセルホテルタイプの部屋や、床に薄いマットレスを敷いて雑魚寝するタイプの部屋や、しっかりとしたベットと個室のトイレとバスルームがついているクルーズタイプの部屋がある。
 
当初、この旅には一人で赴くつもりだったので、6人の相部屋に泊まろうと画策していた。しかし、それらの相部屋の前を通ると韓国のおばちゃんたちが扉を開放しながらおかずか何かを食べながらお喋りに花を咲かせていたり、若い男の子たちがひしめき合いながらNintendo Switchで賑やかに遊んでいたりとなかなかにローカルな雰囲気だったので、初戦では面食らっていたかもしれない。次回以降の楽しみに取っておいて正解だった。

旅系YouTuberの方の動画で、出航時間よりも早く出航することがあると聞いていたので、船内の散策もそぞろにデッキに出てみる。クチコミどおり、やはり出航時間よりも30分以上早く船が動き出した。大阪港を背にゆったりと進み始めた船のデッキには、旅立ちを待ってました!と言わんばかりに乗客たちが集まり、各々が思い思いのままに海に、船に、自らたちにと、忙しなくスマホのカメラを向けていたのが印象的だ。

でかいファンネル
cafe 夢。中では軽食や飲料が販売されており、すでに韓国のおっちゃん5人グループがTERRAビールでべろんべろんになっていた。まだ船も出てないのに。
出航してしばらくすると、明石海峡大橋が見えてきた

船が海を切って進む中、さっそくクルーズ旅っぽいことがしたくなり、cafe 夢で生ビールを注文する。レシートにWi-Fiのパスワードが載っていた。ちゃっかりWi-Fiに繋ぐ。しかしながら、クーーーッ。うまい。カフェ内の、やたらと沈み込むソファに身を委ね、アルコールで脳をぽわーっとさせながら、とりあえず出国し、無事船の旅を開始できたことに安堵する。まあまだ、船の位置としては関西なのだけど。

明石海峡大橋を通過し、日が暮れてきて肌寒くなったので船内に戻る。船内のコンビニにはお菓子、飲料、お酒、カップ麺などがあり、突然の空腹には困らなさそう。特に欲しいものはなかったのだけれど、ハイチュウっぽいパッケージの飴のブドウ味を購入した。買ってから部屋に戻ってパッケージのハングルをよく読むと「マイチュー」と書いてあった。味も、私が子どもの頃からよく知ってるあの味がした。

マイチュー
のちの夕食会場。海外っぽい雰囲気。
船内のくつろぎスペースに、ザ・外国って色とデザインと規格の洗剤がめっちゃ普通に雑に置かれているところにぐっときた

室内は窓が無く、外が見えない。し、なんかすごく蒸し暑い。他の相部屋の方がドアを開けながら過ごしているのも、理由がわかる。換気のためだろう。電波もない。テレビもほとんど映らない。ほのかに揺れる。ここまでの道のりの疲労と先ほど摂取したアルコールも相まって、眠気が襲ってくる。夫は大浴場に出かけた。私は諸事情でお風呂に入れなかったので、部屋でボディペーパーで身体をくまなく拭きまくった。お風呂に入りたかったが、フェリー内のトイレや洗面所がまあまあ綺麗なのが救いだった。
大浴場は極めて普通の大浴場って感じだったらしいけど、サウナがまだ未灯火だったらしく、がっかりして帰ってきた。

軽く居眠っていたら、室内に船内アナウンスが韓国語→日本語→英語の順で流れた。夕食の時間のようだ。もう19時か。私たちは予約をしていないので食べられないが、様子を見に行く。韓国料理のビュッフェスタイルのよう。キムチとお肉の焼けた匂いが漂っていて、ガヤガヤと賑やかだった。部屋に戻って、先ほど調達したキンパを食べたあとに、もう一度眠った。

次に目覚めると、20時30分をとうにまわっていた。やばい、さっきの夕食会場でのど自慢大会が始まっちゃう。船内の予定表には確か、20時に開始だと記載があった。出場する気はさらさらないが、船上の一大面白イベントをみすみす見逃すわけにはいかない。急いで部屋を出て夕食会場であるステージに向かったが誰もおらず、何かが催されそうな兆しもない。おじさんたちが数人、ビールの缶を傾けながらしっぽりやっている様子だった。
なんだ、今日は何にもないのかぁ…。内心では一番楽しみにしていたので、気を落としながらデッキに上がり、Googleマップで現在地を確かめると、ちょうど直島あたりを通っていたみたいで、小さいけれども夜景が見えたので気を取り直した。

(多分)直島の夜景
ワンナイトクルーズ プサンオオサカクルーズ

長い船旅、長い夜。船で食べようと思って持ち込んだお菓子も、見ようと思ってダウンロードしていた映画も、読もうと思って持ってきていた本もあったのだけれど、歯磨きをしてベットに横たわり、船のゴウンゴウンとした音を聞いているとどうでもよくなってしまい、さっさと眠りにつくことにした。電気を落とすと、すでに夢の中にいた夫のいびきが始まり、家の寝室と何ら変わりのない光景と化した。

2日目 釜山港入港〜釜山・海雲台で一泊

早朝、夫の声で目覚めた。昨日の夕方にはまだ着いていなかった大浴場のサウナに火が入っていて、まあまあよかったらしい。良かった良かった。
二度寝、三度寝を繰り返してやっと目覚め、デッキに外の景色を見に行った。

めっちゃ晴れていて気持ちよかった。位置は、関門海峡を少し北に行ったあたりだった。

船内のスタッフの方は、韓国人で日本人でもなく、アジア系の外国人の方が多いようだった。cafe 夢でコーヒーでも飲もうと思ったのだけど、昨日の夕方とは違い、海上で電波が全くないためクレカが使えず、韓国ウォンの現金もなかったため購入できなかった。とほほ。部屋に戻り、メイクとか荷造りとかをして、正午の下船を待つ。部屋に戻ると酸素が薄いせいなのか、眠気が襲ってきてまた眠ってしまった。2時間ほど眠り、再びデッキに上がる。多分、19時間の船旅のうち、14時間ぐらいは寝ていたと思う。私に本当に必要だったのは、読書でも映画鑑賞の時間でも旅に酔いしれる時間でもなく、睡眠時間だったのだろうり
関門海峡から対馬沖のあたりが一番揺れて船酔いの恐れがあると聞いていたけれど、幸運なことに全く揺れず、気持ち悪くなるようなこともなかった。ラッキー!

デッキに駆け上がると、もう釜山の街が目前まで来ていた。
釜山のランドマーク的橋。近くで見ると、大きさの割に厚みが薄く思えた。

部屋で待機し、鍵を係の方に返却し、順を待って下船。いよいよ韓国に入国だ。わくわく!

ありがとう船。
釜山港フェリーターミナル。関釜フェリーやビートルもここに停泊する。
さっき下を潜った橋が遠くに見える

難なく入国審査と手荷物検査を終え、無事韓国に。久しぶり、韓国。eSIMの電波もバッチリ入り、スマホも快適に使える。さっそくフェリーターミナルから繋がっているペデストリアンデッキを15分ほど歩いて渡り、釜山駅に。メトロに乗って西面駅に向かう。

西面駅は、釜山の繁華街。前回に訪れたときは釜山駅から見て西側のチャガルチ市場や南浦、釜山のマチュピチュと呼ばれる甘川文化村を見て回ったので、今回は東側の西面や海雲台を中心に回ることに決めていた。西面は、大阪で言うと心斎橋的な感じで、若者に人気のおしゃれなカフェや雑貨屋があるエリアや、大型ショッピングモールなどがある街だ。

まずは西面駅近くの日系ホテルで両替やwowpassへのチャージなどを済ませ、調べていたナッコプセのお店で昼食を取ることにする。ケミチプという名のお店で、24時間営業。ナッコプセとはタコ(韓国語名ナクチ)とホルモン(コプチャン)とエビ(セウ)の頭文字をとった名前で、それらを甘辛く炒めた釜山の名物料理である。入るや否や流暢な日本語で接客をしてくださり、私たちのような観光のお客さんがよく来るのだろうなと安心した。隣のテーブルの家族連れも、後から来た女子3人グループも日本人だったが、韓国のお客さんもそれなりに多そうだった。

ケミチプというお店。釜山に何店舗かあるみたい。
ぐつぐつ!辛そうに見えるけどめっちゃ辛いというほどでもない。オプションで春雨を足した。
出来上がったものをご飯と海苔とおかずを混ぜ混ぜして食べる。ご飯がすぐに足らなくなる。


真っ赤なお鍋が運ばれてきて、店員のおにいさんが火をつけて調理してくれる。ぐつぐつと煮えてくる鍋は、すでに旨辛そうな匂いを運んできて、お腹が鳴る。「OK(食べて大丈夫よ)」の合図があり、ご飯にそれらを掬って取り、フーフーして食べる。うっ…うまい!!!この日はとても暑かったので、店に着いてからそれまで、ソーダを頼んで夫と分けて飲んでいたのだが、夫が再び店員さんを呼び、瓶ビールを頼んでいた。そうだよ夫、それでいいよ。この味はビールよ、ビールだよ。辛くないと言っても、韓国料理なのでそれなりの辛さはある。ハヒハヒと言いながら薄めのさっぱりしたビールで胃に流し込む。うまい。うまい。これだよこれっ。これが食べたかったんだよ、これ!
入国して僅か1時間ほどで、理想的な韓国ご飯にありつくことができて、嬉しさいっぱい、幸せまんぱい、最高の気分だった。夫にいたっては、海外で今までで食べたご飯で一番美味しいと何度も何度も言っていた。

お店を出て、重いリュックサックを駅に直結しているロッテ百貨店のクロークサービス(なんと無料!太っ腹すぎる)に預けて、街歩きをする。大阪でいうと、アメ村や堀江みたいな感じかな、雑貨屋さんやカフェが並んでいるところを散策し、目星をつけていたお店を見て回る。
10代、20代のカップルや女子グループたちが雑貨やお菓子を見ながら「きよー!(かわいいー!)」と言っており、ほのぼのとした。土曜日というのもあってか、有名なベーカリー店、スイーツ店は特に多くのお客さんで賑わっており、順番待ちの列がある店もあった。

ちなみにおしゃれな雑貨屋さんやカフェについては、日本にいる間にXで韓国在住の日本の方の発信で調べました。

韓国の地図アプリ NAVER mapを使うと、他の方が作ったお気に入りのお店リストなどを反映することができるので便利だった。Googleマップにも同じ機能があるけど、韓国国内ではGoogleマップがあまり使えないので、旅行に行く際はNAVER mapを使えるようにしておくと便利。LINEのアカウントでログインすると、お気に入りのお店とかが登録できるようになります。

おしゃれ雑貨屋さんいろいろ見た
パイ屋さんに行った
コーンクリームのパイを食べた
めちゃんこかわいいお皿を買うか迷ったけど、旅もまだまだ長いので我慢……

この日の最高気温は28度。よく晴れていて、陽が照りつけていてなかなかに暑い。釜山はなかなかに起伏に富んだ街で、歩いていると汗が滲んでくる。雑貨屋さんを何ヶ所か見た後、いい感じのパイ屋さんを見つけたので入る。これがなかなかの穴場で、めちゃくちゃ人気店と言うわけでもなく落ち着いた雰囲気で、ひんやりとしていて、居心地が良かった。コーンクリームパイをシェアして、おのおの冷たいものを飲んだ。韓国はとうもろこしやトマトをデザートの具材として採用するのをよく見るけど、私はこの食べ方が結構好きだ。甘さ控えめでおいしかった。店内では、女子グループたちがけんけんがくがくの議論をしているようだった。何を話しているかまではわからなかったけれど、身に覚えのあるけんけんがくがくぶりだった。職場の人間関係か…男性関係か……。

西面の街をぐるぐると堪能し、ロッテ百貨店で荷物を回収して再びメトロに。ホテルを予約している、海雲台に。電車の中は若い人でいっぱいだったが、途中駅の広安里駅で沢山降りて行った。海沿いの街で、こちらもおしゃれなカフェが立ち並ぶエリアのよう。ソウルと言い釜山と言い、おしゃれなカフェが立ち並ぶエリアが多いな。

海雲台は、白くてサラサラな砂浜のビーチを有するリゾート観光地。一泊1,000,000wとかの超高級ホテルもある。カジノもある。そんなリゾート地で私たちが泊まったのは、比較的安価なビジネスホテル価格のホテルだけれど、それでも32階建ての13階部分と高層階の部屋で、窓から少しだけ砂浜も見えて、なかなかにいいお部屋だった。
夕暮れの時間が近いので、ドタバタと荷物を置いて、再び外へと飛び出す。

立ち並ぶ高層マンションと高級ホテル、暮れゆく海辺
お釈迦さまの誕生日が近いから、釈迦パーティムード
夜景綺麗。みんな、わけもなく散歩してる感じ

ちょうど西の方の空が茜色になってきた頃で、海に人が集まってきていた。観衆の前で中年というべきか青年というべきかいまいち掴めない男性が、トロット(日本でいう演歌的な)を熱唱していて、それがとても上手くて聞き惚れた。香港のヴィクトリア・ハーバーを訪れたときにも思ったが、どんなに近代的な街並みで、どんなに外国人が多くて、どんなに変わってしまって、視覚的に切り取るとどこにいるかわからないなと感じても、そこにその国、その土地の音や歌や匂いや風があれば、ちゃんとここがどこであると感じられるわ。やはり写真だけではわからない、来てみないとわからないものだなと思う。感慨に耽る、いい夕暮れだった。

海岸沿いを何度も往復して、短い逢魔時を堪能する。私たちのような外国人観光客も多いように感じたが、ワンちゃんをつれて散歩している近所の人も多かった。ていうか、思い返すとワンちゃんめっちゃ多かったな。こんなリゾートに犬とともに住むのは、やっぱり結構セレブとかそういう人なんだろうか。
日中よく歩き、顔の日焼けを感じたので、コスメなどが売っているオリーブヤングで顔用のパックなどを買い、晩御飯を食べるところを探す。お昼に海鮮っぽいものを食べたので、何を食べるべきか迷っていると韓国っぽくて入りやすそうな店を見つけた。それは…

チキーーーン!
海岸が見える屋外席でチキーーーン!!!

さくっさくの衣に、チーズのパウダーがたっぷりかかったチキン!!bhcという、韓国に何店舗もあるチキンのチェーン店なのだけど、一度行ってみたかったのです。写真では伝わらないかもしれないが、1ピースごとがめちゃ大きくて、一体チキン何羽分あるんだ?というぐらいの高ボリューム。波が聞こえる海辺のテラス席というシチュエーションも相まり、熱々ジューシーで、めちゃんこおいしかった。

部屋に戻り、しばらく休憩しながら、ずっとNetflixで追っていた韓国ドラマ「涙の女王」をリアタイする。最終話から2話目のクライマックス。吹替や字幕はないので、韓国語でなんとなくのニュアンスで理解するしかないのだけど、ちゃっかりと号泣する。
再び外に出て、夜風を浴びながらアイスを食べる。日中はあたたかかったけど、すっかり肌寒くなり、持ってきたウインドブレーカーが役に立つ。食べてばっかりだな。丈夫な胃に功労賞あげたい。

ヒョヌよかったねー
さらにアイスまで食べる。コーン味が日本でも流行るといいな。
ホテルの部屋から見下ろした街

夫はその足でカジノに出かけたけど、私は部屋に戻ってシャワーを浴びて、ベッドに入って明日の旅程の段取りを練った。明日はバスに乗り、行ったことのない都市に行く。緊張するなあ。検索する限り、この海雲台からバスが出てるみたいだけど、それに乗れるのか、そもそも本当にそのバスが存在するのか、行ってみないとわからない。
日を跨いでも海辺の観光地はずっと賑やかで、人がガヤガヤと騒ぐ音が聞こえた。日本だとうるさいなー怖いなー嫌だなーと思っていたかもだけど、不思議とそうも感じず…だけど、住んでいる人にとってはどうなんだろうな。こんなもんかーって感じなのかな。そんなことを考えながら、いつのまにか眠ってしまっていた。夫は、日本円にして300円ほど勝って帰ってきたよう。本人申告なので、真偽の程はわからないが。

3日目 海雲台〜慶州、そして大邱へ

ぐっすり7時間ほど眠り、朝の海岸を小一時間ほど散歩しにいく。昨日、あんなに揚げ物を食べたのにも関わらず、胃もたれもなく、腹ペコなのが末恐ろしいぜマイストマック。

朝はややガスってるものの、穏やかで良い気候
夜は賑やかっだったのに、朝はガランとしている。
サンドアートの城。スターウォーズプロデュースだったみたい。子どもの遊びでは絶対にないクオリティ

海辺には中年〜高齢の方がスポーツをしている姿をよく見かけた。ウォーキング、ジョギング、ボディボード、素潜り、ボッチャ、ビーチバレー的なやつなどなど。私は普段、朝から外を歩くなんてことを稀にしかしない人間なのだが、日本も韓国もほんとにお年寄りが元気だな。私は40代、50代、60代になったときに、こういう外遊びを楽しめるだろうか。楽しみたいけど、本当に楽しみたいなら、今のうちにそういう輪に入っておく経験というか、動き?をするべきなんじゃないだろうか。いや、でも………みたいなこう、なんというか、未来の自分の在り方について考える、なんとも酸っぱい朝散歩になった。

砂浜を歩いていると本格的にお腹が空いてきたので、事前に調べていた店で朝食を取ろうと提案する。釜山名物、カルビクッパのお店だ。豚バラ肉のあっさりとした豚骨塩味スープ定食が定番メニュー。お店は空いてた。タッチパネルで注文できて、言語メニューには日本語もあったので楽ちん。朝からなんちゅう重いものを食べてるんやと思われるかもしれないが、豚バラといってもこってりさは感じない薄い塩味で、テーブルに置いてあるエビのアミで塩味を調整して食べると、腹に沁み渡る味で激うまだった。8時ごろに入店すると、外国人のアルバイトの店員さんばかりでのんびりとした雰囲気だったけれど、9時が近づく頃にベテラン?もはやオーナー?っぽいオモニがやって来るや否や、お客さんがドドドーーーっと来て、私たちが店を出る頃には20組待ちとかになってて驚いた。人気店は、やはり混むんだな。

オボクテジクッパブ。二階建てで24時間営業
白くて優しい豚骨スープ

ホテルをチェックアウトし、海岸とは反対方向に徒歩15分ほどのところにある(っぽい)高速バスターミナルを目指す。先ほどまでいたビーチリゾートっぽい景色とは打って変わって、日本にもよくあるような普通の国道沿いみたいなところをひたすらに行くと、小さなバスターミナルが確かにあった。
小さなプレハブの前には大きなスーツケースを持った観光客がたくさん群がっていた。韓国の人もいるし、さまざまな人種の外国人もいる。観光バスがひっきりなしに出入りしており、日に焼けた整理員のおじさんが「トンテグー」とか「チョンジュー」とか、行き先名を呼んでお客さんを捌いている。プレハブの中の券売機で、慶州行きのバスチケットの購入を試みる。確かに、事前に調べていたとおり、50分に1本の間隔でバスはあるようだ。しかし、直近のバスチケットは、すでに満席で買えなかった。一本後のバスも、空席があと4席ほどしかなく、急いで購入する。
券売機では現金不可だったが、wowpassで難なく購入できた。韓国旅において、wowpassは便利すぎてやばい。

バスの出発時間まで、バスターミナル付近を散策する。今は地下化されている鉄道の地上廃線跡があったり、ここにもおしゃれカフェ街があったりと、観光地の街の変遷と、変遷跡を集客につなげるための努力みたいなのが垣間見えて、もっと知りたいなと思った。実際にカフェ街の方面には先ほどのビーチリゾートではあまり見かけなかった、韓国の中高生っぽい子たちが多く吸い込まれていった。
これはとりわけ観光地である京都に住んでいる身ゆえ興味があるのかもしれないが、観光地が観光地でありながらも、新しい取り組みをしてその土地に住む人にも受け入れられるあり方がどのようなものなのか、他国や他地域の取り組みを知りたいぜと思っている。私の住む街はオーバーツーリズムで多くの問題を抱えており、報道に取り上げられる機会が多いが、これまでの蓄積した情報と実績があるからこそ、適応する策が存在するはずだと思っている。

などと、ぼんやり思っているうちにあっという間にバスの乗車時間がやってきた。旅中の50分なんて一瞬である。韓国の高速バスは、一列あたり3シート
ふかふかの座席で非常にゆったりとしている。が、これまで仁川空港からソウル市街をつなぐ高速バスにしか乗ったことなかったが、共通して言えるのは、運転がなかなかに荒い。韓国ドラマの中のカーチェイスがフィクションじゃないぐらい荒い。それでも、座席がゆったりとしていて、なんかそのめちゃくちゃなスピードすらも心地よく(?)て、いつのまにか眠っており、気づくと慶州についていた。

慶州は朝鮮半島の南東の先にある釜山から、北に約75キロの内陸の都市。かつて新羅の都があった土地で、町には王族の塚(古墳)が点在している土地です。雰囲気的としては、前情報どおり、奈良の平城京に近いものがありました。バスターミナルのコインロッカーに荷物を預けて、さっそく街歩きスタート。

ヒトツバダゴの木の花は、この時期しか咲かないみたい。綺麗だったー!
こんもりした小山が王族のお墓。昔はこの芝生のエリアに普通に民家があったとかなんとか
ここの寺もお釈迦様の生誕を祝うムード。

高速バスターミナルから観光地のファリンダン通を繋ぐ道は、朝鮮半島などに広く分布するヒトツバダゴの並木道で、ちょうど白い花を満開に咲かせていて綺麗だった。前にこの時期にソウルの弘大に行った際にもこの花が綺麗だなと感じたのだけど、調べてみると日本では絶滅危惧種で、一部の土地にしか分布していない花みたい。日本にもあることはあるのか。
王のお墓はこんもりとした山で、ガイドマップを見ると町の中に何箇所も点在している。パッとみると本当にシンプルな芝生の山で、何も知らないと「ワーッ」と駆け上がってみたくなるかも。実際に私が小学生のとき、近所の公園にこういうちょっとした山があって、登って遊んでたもん。でも、慶州では(もちろん王の墓なので)、登ると30,000,000w(日本円だと300万円強)以下の罰金が課せられるかもしれないので注意じゃぞ。
ちらほらと、桜の木っぽい木もありました。もう咲いてなかったけど。桜の時期に来るとこれまためっちゃいいだろうな。

ファリンダン通という、関西でいうと嵐山のような、伊勢神宮のおかげ横丁のような、関東でいうと鎌倉のような、観光地の食べ歩きゾーンのようなところを歩きます。

行列に釣られて並んだ。イカの揚げた甘辛いやつ。味は…
老若男女で賑わってた
韓屋と呼ばれる古い家が現存していた
塚、塚、塚、塚、塚。春の塚、いいね

「慶州は春」という言葉をどこかで聞いたことがあるのだけど、春に来たからなのか、なにか私の前世かなんかが新羅に縁があるのか知らないが、私はこの旅に来てこの街慶州のことをとても気に入った。今まで韓国に来た旅の中で、慶州が一番好きかも。ほんの数時間しか滞在できなかったけど、肌に合ったというか。絶対また訪れると思う。この日の宿を大邱で取っていたので、この日の夕方にはここを去らないといけなかったのが名残惜しいほどにそう思った。私が散策したエリアはいわゆる観光地であり、隠れたエリアでもなく、実際のところ観光客だらけだったのだけど、ソウルよりも釜山よりも穏やかな空気で、空が広くて空気が美味しくて、一瞬訪れただけでも大好きになった。絶対次は慶州の韓屋に泊まるんだ!!!

街を散策しているうちに夕方になり、そろそろ宿泊する街に移動する時間。高速バスターミナルからさらに高速バスに乗るべくチケットを買い、これまた荒々しい運転で次の街へ。

またね、ヒトツバダゴ
なんか、、、慶州の鐘。
バイバイ慶州の町。また絶対来るからな、慶尚南道。
ちなみに高速バスはこんな感じ。ゆったり。

小一時間ほどで、韓国第三の都市である大邱の東大邱駅に到着。バスの中で熟睡してしまっていたので、寝ぼけながら降りる。高速バスの運転手さんは、どんなに荒々しい運転をする人でも、降りるときに「カムサハムニダーーー」って言うと、何らかの返事を返してくれるところが好き。

東大邱のバスターミナルはデパートや駅と直結しており、おそろしいほどに一つ一つがでかい。こんなにでかい駅と土地、日本では私はまだ見たことがない。かつて新宿に訪れたときに「でけーーー!」って思ったけど、それよりも遥かにでかい。台北駅ぐらいでかい。寝ぼけてたから、ひたすら「でけーーーっ」と言いながら、地下鉄に乗ってホテルの最寄りまで移動する。

(あたかも私は韓国のいろんな土地で鉄道やらバスやらを乗りこなしているように思われるかもしれないが、全ては心配症であるがゆえに地球の歩き方や旅系YouTuberやInstagramなどで事前に慎重に調べた予備知識と、また、公共交通機関が大好きな夫の助言によるものであると書き添えておく。)

今回宿泊したのは、大邱の半月堂駅から徒歩ですぐのところにある、東横イン。なんだよ、韓国に来たのに日系ホテルかいな!と自分でも思ったが、安いんだもん。。。
チェックインすると、あまりにも日本の東横インと一緒で笑っちゃった。ユニットバスの規格もおそらく一緒。慣れ親しんでいると言えば慣れ親しんているが、外国で日本のビジホ規格を味わうのは、どこでもドアでも使ったんかって感じだった。

大邱は肌寒かった。盆地で、冬は厳しい寒さ、夏は韓国で一番暑くなる土地らしい。昼ごはんを抜いていたので、大邱で韓国らしく焼肉でも食べよう!と検索し、NAVERでいい感じのところを見つけたので行ってみる。

選んだ焼肉屋、ケテジ。一人17400wで肉食べ放題。高校生か。
なんかおもちゃみたいな街
釜山やソウルでも見かけたが、日本風の居酒屋がかなり浸透しているみたい。ミンミン

訪れた焼肉屋さんは、「ケテジ」というお店。どうやらタッチパネルで注文できるっぽい…という情報をもとに飛び込むと、店内はお客さんも店員さんも若い子だらけ。アニキ!な店員さんが翻訳アプリを使いながら一生懸命説明してくれる。先にお肉が4種類×二人前ずつ運ばれてきて、それらを食べ終わった後に追加で食べたい肉があればタッチパネルで注文する。飲み物とかもタッチパネルで注文する。おかずや肉を巻くための野菜はセルフサービス…って感じらしい。怖い感じではなかったんだけど、思ったより若々しいローカルな雰囲気(イコール観光客向けでは全くない)に圧倒されてしまい、写真を撮り忘れた。そして、まもなくとてつもない量の牛・豚・鶏肉の盛り合わせが席にやってきた。いけるか…?齢、33、旅3日目おつかれミドサー夫婦、いけるか…?

🍖
しかし……うまい。肉のクオリティが、そもそも高い。分厚い肉。でかい肉。しかしながら、油っこくなくて、野菜で巻いて塩や味噌などをチュッとつけると、いくらでも食べられる。この店を選んで正解だ!と、一切れ目の肉を食べた時点でそう思えた。翻訳アプリを駆使してタッチパネルで注文したアップルマンゴー味のソジュ(焼酎)も最高だった。ありがとう、アニキたち。多分めっちゃ年下やけど。

爽快な満腹感とともに店を出て、大邱の街を散歩した。もう21時をまわっており、日曜日の夜だからか、人もまばら。夫が宇多田ヒカルのfirst loveよろしく「明日の〜今頃には〜」と歌い出したので、鋭い声で「やめてやっ」と返した。
大邱は韓国におけるカフェ文化発祥の地らしく、大邱駅の南のエリアには元祖おしゃれカフェが立ち並んでいた。焼肉で胃袋がいっぱいじゃなかったら、どこかに入ってもよかったな。熱心に見ていたNetflixで配信されている「脱出おひとり島」の出演者のジンソクオッパが経営されているお店の前にもドキドキしながら行ってみたが、外から見る限りではいらっしゃらなかった。ソウルにも支店があるらしいから、そっちにいるのかな。いや、もしこのお店にいたとしたらお店に入ってたのかな。

昨日海雲台のホテルで見ていた「涙の女王」が、この夜いよいよ最終回だったのでホテルに戻って見る。見終えた後、日本のビジホと同じ狭いユニットバスで慣れた手つきでシャワーを浴びて、Xでドラマの感想を漁りながら寝落ちした。

4日目 大邱の街歩き〜帰国

ぐっすりと眠る。結構疲れていたのか、二度寝、三度寝を繰り返した。ゆっくりと身支度をする。外は雨が降っていた。フライトはお昼過ぎだったので、チェックアウト後にフロントで荷物を預かってもらい、街歩きをする。

昨日は28度とかだったのに、この日は9度とか。からだおかしなるて〜
抗日の歴史の片鱗を感じると、思わず息を止めてしまう。

大邱は古くから韓方薬の市場として栄えていたところで、今でも薬やその原料となるものを売る店が立ち並んでいるところがあり、韓方の滋養のありそうな香りがしていました。雨が降っていて湿気ていたからこそ、通りを歩くと芳しく感じたのかな。だとしたら、それはそれで雨でもラッキーだったかも。

でっかい聖堂があった。

雨の中をてくてくズンズンと歩くと、韓方薬以外にもさまざまな歴史のレリーフを感じた。街のそびえる大きいキリスト教の聖堂の成り立ち、日本統治下から世界大戦後の朝鮮文学者たちを紹介する建物、ずっとずっと昔からある町の台所であるところの市場などなど…。
街自体はコンパクト故に、歩きながら土地のダイジェストを見回れたように思う。足で稼ぐ、と言うのか、歩いて見回るって本当に旅において一番大切だなと再々々♾️実感した。私、無限に歩けるようになりたい。だけど、お昼が近づくにつれ、連日の歩き疲れが足腰膝に如実に来ており、帰るための体力を考えてセーブしてしまった部分もある。満足にこの土地を歩けたとは言い難いので、大邱もまた訪れたいなあ。

最後に、大邱で一番大きい西門市場に寄って、帰路に着くことにしました。

ないものはない、と言われているほどでかい市場。
優しそうな看板おじさんに誘われて、カルグクス屋さんに
念願のコングクス
この雰囲気で食べる麺、格別だったー!

 ソウルの南大門市場、釜山の国際市場など、韓国の市場のみならず、香港、台湾、タイなど、アジアの旅において、好んで市場に行きたがる私ではあるのだが、アジアの市場に行く都度思うことがある。「こんなに服を売って、全部誰かに着られる未来はあるのか」である。西門市場も例外ではなく、夥しい量の衣類が売られていて、圧倒された。圧倒されると同時に、アジアの市場の活気が羨ましいなとも思う。日本にこういうところある?行ったことないだけなのかな。屋台があって、衣類があって、乾物が山ほど売っててさ……ってところ。
そういうことをぶつくさと話していたら、「地球の歩き方」で見たカルグクス(麺)屋さんの屋台が立ち並ぶ通りに辿り着いた。同じ規格の屋台に、メニューが掲げてあって、店員さんがこちらにどうぞと招いてくれる。大体どこのお店の店員さんも、ちょっと強そうな細身のおばさまなのだけど、1店舗だけ違った。にっこにこのおじさん。ジャムおじさんとチーズを足したような、にっこにこのおじさん店員さんが、こちらに手招きしていた。やや尻込みする夫を感じつつも、「ここにしようよ!」と席に座る。

写真付き・日本語ありのメニュー表で料理を注文すると、目の前に銀のお皿に入った青い唐辛子?と、大根のキムチを置いてくれた。青い唐辛子は、さっき他の屋台の前を通った時にも、机に山盛り置いてあるのを見た。うどんと一緒にかじりながら食べるのが一般的なのだろうか。麺はおばさんが作ってくれている。おじさんが「no spicy(*^ω^*)」と声をかけてくれたけど、絶対辛いやろ、そんなわけないやろ、と思った。おじさんは再び往来する人に声をかけ始めた。優しそうなおじさんが呼び込み、おばさんが料理を作る。見渡すと、大体のお店はおばさん一人で捌いているように見えるが、この二人は夫婦なのだろうか。それとも、ただのビジネスパートナーなのだろうか。二人は談笑する様子すらない。おじさんは淡々と注文を通したのち、往来する客に笑顔を向け続けている。妄想は膨らむ。
麺が来るまで、大根のキムチをつまむと、びっくりするぐらいおいしくて箸が止まらなくなった。(余談だが、ほどなく地獄のような屁が出たのち、大邱の空港で置き土産をして帰ることとなる。発酵食品はすごいや)

注文していた麺がきた。夫は温かいカルグクス。にゅうめんのきしめんのちょっと細いバージョンみたいな麺料理。刻み海苔と秘伝のタレみたいな色のネギ味噌だれをかけて食べる。
私は、かねてより食べてみたかったコングクスという麺料理を注文した。冷たい豆乳にそうめんが入ったかけ麺だ。ごまときゅうり、優しい塩味、優しい豆乳味で、思ったよりクセがなくてとても美味しかった。そうめんで豆乳なんて、ツルツルツーのちょちょいのちょいでしょ!なんて思ってたけど、豆乳が濃厚だからか意外とボリュームがあり、完食するまで結構時間がかかった。
一食あたり6000w(日本円で650円ぐらい)と、ボリュームにしてはコスパが良くて、市場ご飯っていいなあと思った。また行きたい。

ホテルに荷物を取りに行き、路線バスに乗って大邱国際空港へと向かった。

ところで、ペクジョンウン先生のプロデュースしている店は一体何種類あるんでしょうか。熊本におけるくまもんぐらい見つけたよ、ペク先生

大邱国際空港は、非常にこじんまりとした空港だった。国内線はほぼチェジュ島行きのみ。国際線も日本と台湾…ぐらいなのかな?そんなに多くなさそうだった。早く着いたので、空港の中のドーナツ屋さんでドーナツをつまみながら、旅の振り返りなどをする。この旅ではお土産も全く買わなかったし、行きよりも荷物が減った状態で帰ることができた。

ドーナツ屋さんの窓の外からは、ここにもお気に入りの木のヒトツバダゴが咲いていて、雨に揺れて「またねー」と手を振ってくれているように見えた。
この旅は、夏のように暑いと感じるときもあれば、3月か?もはや2月か?と思うほど肌寒い瞬間もあった。その季節は穀雨。まさに、春と夏の中継点。この旅のうちにすれ違った人たち、撮った写真の中に見切れて写っている人たち一人一人の心の中にもこの国やこの街に対する思いや感慨があって、この季節のこの土地や、私がヒトツバダゴを気に入ったみたいに、それぞれの人にも心に残る事柄があって、二度と会うことがないかもしれないし、またどこかで会うかもしれないけれど、また会ったとしても前に会ったことがあるなんて一生答え合わせができないまま、出会いと別れを消費してゆくんだろうと思う。そのことは別に寂しくなんかないが、せっかく経験したこの旅を、どうにか記憶の鮮度がフレッシュなうちに書き残しておきたいと思う理由の一つには、誰かと共感したい、誰かの有益な情報の一端になりたい、誰かとの未来に繋がりたいみたいな気持ちはあるかもしれない。

関空に着陸したあとの記憶はほとんどない。行きより軽いはずなのにうんと重く感じるリュックを背負い、さあまた明日から頑張ろうず!と、急いで眠りについたこと以外は。

最後に

一生のうちで、対話できるひとの母数は、有意思、無意識に関わらず、ほんのわずかな数に限られていると思う。そんな中で、この季節にこの土地に訪れられたこと、誰かと一緒に奇跡的に行けたこと、こうしてこの思いを書き残す時間と言葉があること、そしてそしてそして、このなっがい長いこのレポを最後まで読んでくださる人がいることに感謝を申し上げ、この旅が本当に最高ーーーっ!だったことを申し添えて、旅のレポを終えます。韓国は、地方旅も最高だ!

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