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綺麗なだけじゃない?!学べる!会話が生まれる!レタスが育つ循環型水槽

水棲生物を飼育展示するプロ「サンシャイン水族館」と農業のプロである農家が在籍する「一般社団法人 Iwakura Experience」が協同し、野菜の栽培と魚の飼育を目指す「アクアリウムファーム東京プロジェクト」。2022年から構想をスタートし、実験用水槽などでの試行錯誤を経て、2023年5月下旬から水族館での展示がはじまりました!その様子について、プロジェクトを担当する株式会社サンシャインエンタプライズの山辺さん(事業企画部)にお話しを伺いました。

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ついじっくり観察してしまう、レタスが生えた不思議な水槽が登場。

――今年の5月から水族館でアクアポニックス水槽の展示を開始したと聞きましたが、どのような展示なのでしょうか?

山辺
水族館がアクアポニックスに挑戦する目的のひとつは、このような取り組みが世の中にあるということをより多くの人に知っていただくこと。そのためにも水槽はいちからデザインをして、資源循環の仕組みがパッと見てわかるような作りにこだわりました。魚の排泄物を水中の微生物が分解し、それらを植物が栄養として吸収することで、浄化された水が再び水槽へ戻るという流れ、生命の繋がりを6つの水槽を繋げることで表現しています。

――上部では野菜が育ち、その下には魚が泳ぐ、ぱっと目を引く展示ですね。お客様の反応はいかがですか?

山辺
わたしが想像していた以上に、立ち止まってじっくりと水槽を見ていくお客様が多くてびっくりしています。年齢性別問わず、興味を持っていただけるのはとても嬉しいですね。
この展示にはアクアポニックスの仕組みや将来性などの解説もつけているのですが、それを読んで理解した方が周りの人にも説明してあげて、なるほど!と盛り上がっている場面をよく見かけます。綺麗だねーというだけでなく、展示を通じて学びの体験をしていただけるというのはこの水槽の大きな特徴かもしれません。SDGsやサステナビリティに興味関心のある方が増えているのではないかと思っていましたが、本当にそうなんだなと実感しています。

水族館内で自給自足。みずみずしい野菜をリクガメのエサに。

――最近ではSDGsやサステナビリティは当たり前のことになってきましたね。もう少し、この水槽のサステナブルな部分について教えていただけますか?

山辺
アクアポニックスの「循環型農法」という仕組み自体が水を節約しながら魚と野菜を育てることができるサステナブルなものですが、この水槽で収穫したレタスや小松菜を水族館で飼育しているリクガメのエサの一部にすることで、ちょっとした自給自足も成り立っています。この展示は小さいので野菜を食べる生き物たちのエサをすべて賄うことはむずかしいのですが、水族館内で自給自足の仕組みが作れたとしたらとてもサステナブルだと思います。ちなみに、自分もたまに野菜をつまみ食いしていますが、みずみずしくておいしいですよ!

――水族館にいらっしゃったお客様だけでなく、他にも色々な反響があると伺いましたが、どのような声があったのか教えていただけますか?

山辺
日ごろからSNSなどで情報を発信していますが、それをご覧いただいた学生さんや企業からの見学希望、講演会への出演依頼、そしてテレビや新聞など多くのメディアからの取材依頼など、様々な反響をいただいています。アクアポニックスという取り組みをはじめたことで、新たな切り口でサンシャイン水族館に興味を持っていただけていると感じています。

様々な可能性があるアクアポニックス!これからも挑戦は続いていきます。

――展示がはじまって4か月。何か気づきはありましたか?

山辺
水族館では定期的に各水槽の水質データを取っているのですが、システムのバランスがとれているからか、水槽の水質が良い状態が続いています。水循環で野菜を育てることが水槽の水を替える頻度が少なくすむということに繋がるのであれば、将来的にアクアポニックスを取り入れた水槽を増やすことで水の使用量の削減になるかもしれない、なんてことも考えています。

――水族館を訪れた多くのお客様から興味関心を持っていただいているアクアポニックスの展示ですが、これから先はどのようなことに取り組んでいきたいと思っていますか?

山辺
「資源の利活用」や「食」などのテーマはお客様の興味関心が高いと感じているので、サステナビリティの観点からもっと挑戦していきたいこと、お客様に伝えていきたいことがたくさんあります。今年は9月のSDGs週間に合わせて、海のSDGs課題に目を向けるイベント「サンシャイン水族館SDGsWeeK~生き物のつながり×食~」を開催します。

今、アクアポニックス水槽では、ブロッコリーがすくすくと元気に育ってきました。地域の防災公園イケ・サンパークさんからいただいた、コンポスト堆肥を使って栽培したジニア(百日草)もきれいに花が咲いたので、将来的には野菜だけではなくてエディブルフラワー(食べられる花)も育てられるかもしれないですね。もちろん上手くいかないこともあるので、「アクアリウムファーム東京プロジェクト」を協同しているIwakura Experienceさんにもアドバイスをいただきながら、植物の特徴や屋内環境など試行錯誤してもうしばらくは色々な栽培に取り組んでいきたいと思っています。

Iwakura Experienceさんは、アクアポニックスで育てた野菜の販売を青梅市の道の駅ではじめました。わたしたちも水族館での展示を開始し、多くの方にアクアポニックスを知っていただくことができ、プロジェクト開始当初にお互いが考えていたファーストミッションは見事クリアできました。アクアポニックスは本当に様々な可能性を持っていると感じるので、これからも多くの方々と共創しながら挑戦を続けていきたいと思います!

ブロッコリーの根っこ、しっかり育っています