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2.空白の1か月を過ごした高校生活 Part1

 私は高校を途中で転校した。私の学生生活、人生を振り返る上で最も重要なターニングポイントだ。人生の価値観や人間性が変わった出来事でもある。

突然行けなくなった日

 高校2年の11月はじめ、私は突然高校に行けなくなった。病気をしただとか、特別な理由があるわけではない。朝起きて、準備をして、駅に行き、電車に乗って、学校に行くという行為がひどく恐ろしく感じてしまった。全く行こうと思えないし、その日一日学校で過ごし、乗り切ることが出来ないと思ったのだ。

 私は、都内の某女子校に入学した。中学生の頃に学校見学に行き、知的で礼儀正しく、清楚さを持つその学校に惹かれ、入試を突破し、入学を決めた。
 その高校はいわゆる自称進学校だった。入学後すぐに、これまでとは比べ物にならないくらいの課題(事前学習、事後学習、小テスト対策)があった。基本的に小テストは毎日で、漢字や英単語などがあった。点数は常に先生やクラスメイトに把握され、英単語は○○点以下になると放課後に残り、点数を達成するまで終われないというシステムもあった。そうならないように毎日単語帳を読み、書いて、覚えるようにしていた。

 私はよく頭痛があり「今日は本当に無理だ」と思う日は休んでいた。しかし、何か月かに一回程度である。休むと勉強が追い付かなくなることもあり、なるべく休まずに行っていた。
 しかし、高校2年になるとその頻度は上がった。数か月に一度程度が2か月に一回、月に一回と休みが増えていった。課題と模試対策、定期テスト対策、大学受験を見据え、徐々にストレスに耐え切れなくなっていったのかもしれない。しかし、「行きたくない」と思っても、いざ学校に行ってしまえば案外1日を過ごせてしまうのだ。それで何となく過ごしていた。

 中学は地元の共学に通っていた。男女のグループで毎日話して、下校して、遊んで、という比較的楽しい中学校生活を送っていた。その生活から変わり、「女子校」という存在がそもそもあまり合わなかったのかもしれないと今では思う。男子がいるといないとでは、女子は大きく変わる。その雰囲気があまり得意ではなかったように思う。
 また、私の女子高は中高一貫で、私は高入生だった。1年生の時に高入生だけのクラスであったが、2年になると中入生と高入生が混ざったクラスになった。私は部活も入っていなかったため、うまく中入生の雰囲気についていけなかった気がする。

 それでも何となく毎日を過ごしていた。大学受験の志望校も何となく考えていたし、定期テストもそれなりに頑張っていた。

 しかし、そんな風にずっと努力はできなく、高校2年の11月、学校に行けなくなった。

特別理由があったかと言われたらないし、今でもわからなくなる

 上に書いていたように、学校に行くというのが突然恐ろしく感じ行けなくなった。課題の量や学校、クラスの雰囲気など小さなことが積み重なり行けなくなったのだろう。
 突然行けなくなった日のことは今でも鮮明に覚えている。それは修学旅行の直後だった。修学旅行から帰り、さあこれからまた毎日頑張るぞ、と思った矢先に行けなくなった。日々学校でいじめられてたわけでもないし、修学旅行で嫌なことがあったわけでもない。ただ少し馴染めないなと思った雰囲気の中で3泊4日過ごしたのが気づかぬうちに大きなストレスになっていたのかもしれない。

 毎日学校から帰ると疲労で寝てしまう。そして起きて、夕ご飯を食べて、課題をやる。深夜0時過ぎまで課題をやり、お風呂に入って、1時近くになって寝るなんてこともあった。そして起きて満員電車に揺られる。授業中は眠気と戦っていた。偏頭痛持ちに加え、過敏性腸症候群でもあり、通学時は毎日緊張だった。

 これらの小さな積み重ねが膨らみ、耐え切れなくなってしまった。頭痛や腹痛は置いておいて、同じクラスメイトも睡眠不足であったり、小テスト対策をするなど同じ生活を送っている。それなのに自分はなぜ耐えられないのか、怠けているだけなのではないか、なんでみんなと同じことが出来ないんだ、と思っていた。この生活が卒業まで続き、大学受験を乗り越えるなんて無理なのではないかと思った。辛い思いをしてまで大学生になって、就職して働く意味なんてあるのかさえ考えていた。どこか遠くに逃げたい、消えてしまいたいと本気で思っていた。そして休み始めた。

 小テストの点数や偏差値で周りと比べられる生活が続く中で、自分が普通の生活(その時で言えば、当たり前に学校に行き、課題もやること)をできないことに対する劣等感で、学校の友人には連絡が取れなかった。「どうしたの?」というLINEにも「ちょっと体調崩しちゃって!来週には行けそう!」などと返事をしていた。来週にも行けそうにないのに。

 行けなくなった私に母親は、最初の2日くらいこそ「なんで行かないの」と怒られたが、それで私が家を飛び出し学外の友人に世話になったこともあり、「これはただ事ではない」と悟ったらしい。とりあえず、一回休もうとなった。こうして高校を休むことになり、空白の1か月が始まった。


 高校編は思ったより長くなってしまいそうなので、2つに分けることにする。

つづく。

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