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”あれ”について描かれた、”あれ”を落とした時に聞こえた音

連想ゲームふう作文企画「杣道(そまみち)」。 週替わりのリレー形式で文章を執筆します。前回は蒜山目賀田「鈴木におまかせ(仮)(2)」でした。

「前の走者の文章をインスピレーション源に作文をする」というルールで書いています。

7-04 親指P「”それ”についてのいくつかの断章」
https://note.com/kantkantkant/n/n196251c170f3?magazine_key=me545d5dc684e

7-03 蒜山目賀田「鈴木におまかせ(仮)(2)」https://note.com/megata/n/nad8767e23f9e?nt=magazine_mailer-2021-10-27

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「ねえ”あれ”ってなあに?」
「なんだろうね」
「でも”あれ”がないとどうなの?」
「”あれ”がないと
でももう”あれ”をなくして欲しいの、ねえ早く」
「でも”あれ”がないとあなたはどう生きていくの?」
「”あれ”がない方が楽なの、お願いだから…」
「でもあなたには”あれ”が必要かと…」
「いいからそっと、でも、早く、ほら、早く…」
「じゃあそうするよ、
「私から”あれ”が消えていく」
「溶けて…
「痛い、痛い、痛い…」
「大丈夫、大丈夫…
「ああ、楽になってゆく、楽なのに苦しい、苦しい…
「大丈夫、大丈夫…
「止めて…
「もう手遅れだよ。少しずつ、少しずつだから大丈夫、大丈夫だから
「辛い、辛い”あれ”なのになぜ、消えていくのに、楽じゃないの、苦しいの?
「それはしょうがないよ、さあ、あともう少し、もう少しだから…
「あ、もう、あ…

暗転

「ねえ”あれ”ってどう思う?」
「どうって、どうなんだろう」
「でも”あれ”があればどうなの?」
「”あれ”があれば
でも”あれ”を失う恐怖って私、わからない」
「そうだね…でもこれはしょうがないんだ」
「どうにかならない?」
「どうにもならないんだ
私は何をすればいいの…?”あれ”のために、私は何をすればいいの…?」
「どうにもならないんだ、何もできない、もう手遅れだ」
「手遅れって…手遅れって…どういうことなの?」
「悲しいね、悲しいけどもう手遅れなんだ
「手遅れ…
「そうだ、もう”あれ”は手遅れなんだ

暗転

「すみません、”あれ”はその後どのようになりましたでしょうか?」
「申し訳ございません、私は”あれ”には関わっておりませんので」
「しかし、しかしですよ、”あれ”がもしそのまま続いたらどうなるのです?」
「それはある人には良いですが、ある人には辛いことでしょう…”あれ”は厄介なのです
「そうなのですね、どうすればよろしいのでしょうか。
「もう遅いです、”あれ”はもう無くてはならないものなのです。」
「そうですか、つまり手遅れ…
「はい、その通り…
「では残りを始めましょう、最初は少しずつ、基本ゆっくりとお願いします」
「わかりました。」
「くれぐれも丁寧に、それが”あれ”が望んでいることです。」
「わかりました、それでは気をつけて行います。ところで”あれ”が無くなった後はどうすれば。」
「それは今のところわかりません。」
「なるほど、なるほど…」
「しかしどうにかなるでしょう、そうしないとなりませんから。」
「わかりました、それでは始めます。」
「はい、仕方がないことなのです。では始めましょう。

暗転

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