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小匙の書室259 ─三体Ⅲ 死神永生 上─

 ベストセラー三部作、ついに完結。
 三体世界に対抗するため、敵艦隊にスパイを送る『階梯計画』。その実現を導いた程心、そして計画の鍵を握る雲天明。
 二人の運命は宇宙を巻き込んで動いていく──。


 〜はじまりに〜

 劉慈欣 著
 三体Ⅲ 死神永生

 「SFってこんなに面白かったんだ!」という発見と喜びを与えてくれた前作『三体Ⅱ 黒暗森林』。
 それから私は本作が文庫化されるのをずっと心待ちにしていました。
 ──そして発売週には書店へ足を運び、一気に作品の世界観へ入り込むため三連休になるのを虎視眈々と狙い、今回こうして読み始めることになりました。
 物語としては前巻で一旦落ち着いた様子を見せており、「ここから何を展開させるのだろうか」と疑問と期待がわいています。

 また、あらすじを読むと『面壁計画』に次ぐ新たな作戦──『階梯計画』が書かれていて、しかもついに敵艦隊に乗り込むということもあり、尚のこと内容を知るのが楽しみ。

 果たして程心と雲天明の二人が物語をどんな風に終結へ導くのか。

 三部作最終巻。
 終わってしまう名残惜しさを感じつつ、ページを捲っていきました。


 〜感想のまとめ〜

 ◯コンスタンティヌスか謁見する、スフランツェス彼女は密室の中から聖杯を取り出すといった、魔法のような力を持っていた
 これが物語の開幕に置かれたのにはどういう意味があるのだろう。私は彼女の最期を見届けながら、これからはじまる運命に身を委ねた

 ◯自らの命の終結を眼前に見据え、最期にある一つの決断を下す雲天明。彼が振り返る過去には、彼の傷を唯一理解してくれる女性・程心の姿があった。
 この二人がキーパーソンなのである。
 天明の性格には共鳴する部分があり、とある制度執行の際には複雑な念を抱いたが、そこで物語がグンと動き出し、私はそのまま『三体Ⅲ』の世界へのめり込むこととなった。
 階梯計画が実行されるまでの過程で生まれる双方のドラマは読み応えがあり、第一部完結には以降の展開に大いなる期待を寄せた。
 それにしても、到底不可能と思われるような作戦にも現実的な解決策を打ち出す思考に、圧倒されるばかり。

 ◯拮抗する三体艦隊と人類。危うくも平穏な日々の中で変化していく程心の心と、虎視眈々とその機会を狙い続ける三体艦隊。
 何もかも油断のならないことばかりで、危機的状況に陥った際の智子の存在に、私は畏怖を覚えるしかなかった。
 果たして人類の平穏は護られるのか。
 驚天動地の事態を挽回することはできるのか。
 智子の降臨により発生する文明変遷と、課せられた試練の混沌に、シリーズは大きなうねりを見せる

 ◯宇宙のスペクタクルは前巻よりもスケールアップし、(私はうまく情報や理論を呑み込めないながらも)綴られるSFの要素に耽溺していた。
 未知なる物体は未知ゆえに怖さがあるけれど、また同時に抑えきれぬ好奇心も自覚せねばならない。
 各部ごとに目玉となる太い軸が存在し、一冊で(上巻は三部あるので)三冊分味わうような気分になる。
 そして、人類というのは時と場合に応じて容易く手のひらを返しうる脆弱さを備えているのだと、身をつまされる思いになった。

 ◯終盤にかけ、明るい展望への期待とその先にあるかもしれない一抹の闇の狭間で揺蕩う人類の未来に、じっとり手汗をかいた
 ゼロから始まり、紆余曲折を経てその地に辿り着いた程心。彼女は、再び地球に平穏をもたらすことができるのか──。


 〜おわりに〜

 集中して読んでいたせいか、あっという間に時間が過ぎてしまった。やはり三連休を用いて読み始めたのは正解だった。

 さあ、いよいよ下巻へ移ります。
 天明と程心の運命はどうなるのか!!

 ここまでお読みくださりありがとうございました📚

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